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『戦争と平和』に向き合って、葛藤して

NO YOUTH NO JAPANのInstagramを見ながら、こんな事を考えたことがあります。

私たちは、Instagramで社会や政治について分かりやすく伝えるだけではなく、一人ひとりがスタンスを持って行動に繋げるための情報発信を目指している。では、作っていく側の私たちは発信を通してどんな風に変わっていくのでしょうか。

これまでのInstagramレポートでは、投稿作成の意図や、何を見せたかったのか?をお話してきました。今月のInstagramレポートでは、NYNJの投稿をつくる一人ひとりが、一個人として、制作を通して何を考え、どんな葛藤を持ち、どんな風に変化したのか。前編後編の2回に分けてお届けします。
前編では、投稿制作を通じて8月の「戦争と平和」というテーマについて考えたこと、葛藤したことを聞きました。

インタビュイー:NYNJメンバー
川西めいこ、沖田茜、下條望恵、吉井紗香、藤崎花美

「戦争と平和」を学ぶ、伝える

基地問題や防衛政策、予算問題など、「戦争と平和」に関する問題は年中ニュースに取り上げられるもの。それでも、戦争から75年、戦時当時を知る人々の減少と共に、8月15日が終戦記念日である、という事さえ知らない若者が増えています。戦争の記憶を風化させないことは、戦争を知らない私たちが「平和」を作っていく上で欠かせないはずです。

だからこそ私たちは、「戦争」から目を背けるわけには行きません。戦争はなぜ起こるのか、日本の安全保障戦略はどうなっているのか、憲法9条改正にはどのような考え方があるのか…などなど、知っておかなければならない議論や現状は山ほどあります。

もともとインターナショナルスクールに通っていたので、第二次世界大戦を色々な観点から学んでみるなどといった経験をしていました。その中で、立場によっての歴史認識や「正しいもの」が違うことに行き場の無い怒りを感じたり、その違いやズレが作り出す国家間の問題を知り、解決に結びつけるにはどうしたら良いんだろう、と考えてました。今回制作のために調べてる最中にも、SNS上の論争が紛糾している様子を見つけてしまって、終わりが見えないな…とモヤモヤしてました。(下條さん)
『戦争と平和』はしっかり考えていかないといけないなと思いつつ、理系だったこともあり高校から一回も手を付けていない内容でした。最近、黒人差別問題などの人種差別問題が改めて問題になっていて、戦争と平和と深く関わっているテーマだなと感じていました。なぜ戦争は起きてしまったのか、今どのような体制になっているのか、改めて勉強したいと思っていました。(藤崎さん)

知るということは、否応なしに問題意識を持つことであり、同時に現実とのギャップや、自分の不勉強や、怒りを思い知らされること。その時その時だけを見れば、知らない方が楽かもしれません。それでも、知らないことを知らないままで済ませておく事もまた、誰かにとっての暴力の温床なのだと思います。

制作に携わることで、自分の認識を書き換える、という意味では、こんなエピソードもありました。

私の担当した2枚目(「戦争のタネは日常の中にある」)は、もともとタイトルが「戦争のきっかけは特別なことじゃない」だったんですけど、編集部ファクトチェックの際に「あなたにとっては特別じゃなくても、その人にとっては特別なことだから戦争になるんだ」というコメントされていて、その言葉は他人事のような考え方じゃないかと指摘されてその通りだなと感じました。もともとは戦争を身近に感じて欲しい、という意図を伝えたかったんですけど、当事者目線に立って言葉を選ぶことの難しさを痛感しました。
(川西さん)

誰かにとっての「特別なこと」だからこそ、価値観の違いを認め、妥協点を見出す事は容易ではない。しかしその努力を放棄するのは、最早戦争という手段を選ぶしかないと認めること。だからこそ私たちはそのために何ができるか、探し続けることしかできない。
私たちに今できる限界を知ることは、その上で何ができるかを考えるための出発点なのかもしれません。

改めて8月ポストの問いに向き合う

「戦争を起こすのは誰だろう」「平和を作るのは誰だろう」。そんな切り口から考えを深めてきた8月のポスト。
私たちの投稿の中では、その問いに対する一つの答えとしてこんなメッセージを発しています。

自分も(生きる環境次第で)(戦争を支持する立場・反対する立場の)どっちにもなりえる、と、投稿を振り返って思いました。
私たちは戦争を知らない世代だから、戦争や平和について考える機会が減ってきている。だからこそ、私たちがしっかりと勉強したり、このことを次の世代に伝えていく環境を作っていく責任があるんだと思います。(沖田さん)
私の担当していたポストに書いたことと似てるんですけど、一人一ひとりの言動が重なってできた「民意」のようなものが、結局戦争を起こしたり平和を作ったりするんだと思います。直接戦争を勃発させるのは国のトップだけど、それをスルーするのも止めるのも、私たち一人一ひとりの言動・意見が積み重なってできる民意だからこそ、結局は一人ひとりが考えることからしか始まらないんだと思います。(吉井さん)

戦争を起こすのは、何も特別な権力を持った人に限らない。この事実を前に、ともすれば私たちは無力だと感じることもありました。
少なくとも今の日本では、戦争を起こさないために私たちにできることはある。でも、私たちと変わりない、大多数の特別な権力を持つのでない人々が戦争を支持すれば、最早止めることはできない。実際に世界を見渡せば、民主主義に則って国民が戦争を支持したという歴史もあります。昨今のアゼルバイジャンとアルメニアの争いも、例外とは言えません。

私たちはどんな選択もできる。だからこそ、私たちが実現したい社会を作るために必要なのは、正しい知識を学ぶということ、様々な立場から学ぶということ、それ以外にありません。

でも、正しいとはどういうことなのか、様々な立場にはどんな人がいるのか。その答えは決して安易じゃないし、一つに定まるものでもない。その問いを考え続けることを諦めず、次の世代にその姿勢を伝えていくこと。それが、わたしたちの担う責任や義務なのだと考えています。今回のインタビューという対話は、自分自身、戦争についてどのような『学び』が必要なのか、改めて向き合う機会になりました。

インタビュー後編では、今までいちフォロワーとして投稿を見てくれていた人たちが、投稿の「作り手」になったとき、何を考え・どんなことを感じたのか、心境の変化を伺っていきます。

(文=野口 俊亮)


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