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働き始めると、社会から遠ざかる? 新社会人メンバーの変化を聞いてみた

「新社会人」が働きはじめて数ヶ月。

以前ほど政治や社会のことに関心が持てなかったり、答えのないテーマについて議論する時間も気力もなんだか沸いてこない。「社会人」になったのに、むしろ社会そのものからは遠ざかっている。そんなふうに感じている方もいるのではないでしょうか。
NO YOUTH NO JAPAN(以下、NYNJ)でもこの春から働き出したメンバーたちが、それぞれの仕事とNYNJでの活動を両立しようと試行錯誤しています。今回は、2人の新社会人メンバーに、実際に働いてみて感じることや、NYNJとの関係性の変化について詳しく聞いてみました。


ーまずは二人のお仕事と働いてみての感想を教えてください。

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中島千晴(以下、ちはる)
大学生のときにイギリス留学、NYNJではインスタグラムの編集部を担当。お休みにする好きなことはお家の近くでお散歩。

私はこの春からアパレルの営業職として働いています。衣類の販売や管理業務がメインの仕事です。今のところイメージしていたより残業も少なく、健康的に働けています。あと、毎日シフト制で出勤時間が日によってちがうので、社会人になってからも朝ゆっくり起きられる日があるのはうれしいところです。
仕事の面でも「これができるようになりたい」「これがまだまだなので頑張りたい」と常に目標が見つかる環境なので、毎日忙しいけど充実も感じています。

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魯 良希(以下、りょうき)
大学では法律学・政治学を専攻、NYNJではVote for Chibaなどを担当。
お休みにする好きなことはハラールショップ等で購入したスパイスでお料理をすること。

私はコンサルティングのお仕事をしています。具体的には、会社が守るべき法律をどうやったらその会社組織の規範に落とし込めるかを考えるサポートをしています。まだまだ新人なので、直接クライアント(お客さま)とコミュニケーションすることはないですが、上司のやりとりを横で見聞きして毎日刺激をうけています。

ー学生時代から様々な社会のテーマに向き合ってきた二人ですが、働きはじめてから社会の見え方に変化はありましたか。

【社会は思った以上に変化していた】

働きはじめて感じたのは、自分が思っていた以上に社会が変わりつつあるということです。
私の就職した会社は、いま日本で課題とされているジェンダー平等や環境問題、LGBTQ+や人権のようなテーマに真剣に向き合っていて、たとえば、職場の男女平等を考えていたり、育休は多くの人がとっていたり、環境に配慮した商品があったりします。あと、社会に対して思うことがあれば、モヤモヤした感情も含め上司がちゃんと聞いてくれます。

学生のときは「社会の理想と会社の現実の間にはギャップがあるのだろう。そして会社の現実を変えるのは難しいのだろう」と思っていました。でも案外、会社は今の社会に合うように変わろうとしている。自分が先入観でもっていた取り組みの遅れた会社像は、その会社に属している「個人の無関心」の積み重ねによる部分も大きくて、一人ひとりの意識を変えていくことの大切さを改めて感じるようになりました。(ちはる)


【知らなかった世界が見えてくる楽しさ】

私は学生のときから法律や政治を学んでいたのですが、自分の法改正や政治の動きを見るスタンスにおもしろい変化があったと感じます。学生のときの私は、「消費者や接客業のアルバイトの目線」でものごとを考えていました。だから、法改正や政治の動きでも「消費者としての暮らしが改善する可能性のあるものは大歓迎!」というスタンスでいたんです。

たとえば最近、労働法で「過労死防止」のための月毎の残業時間制限が設けられました。以前の私は「これでどんな企業に入っても、法律で決められた時間以上は働くことはない」と喜んでいました。
ところが、いざ仕事をしてみると「残業時間に制限がついても業務量は減らないし、働く人も増えない」ため、企業で働く人が労働法の新たな規制をあまり歓迎していないように見えたんです。いままで私が歓迎していた法改正は、実は企業人や経営者の頭を悩ませていたんだなとびっくりしましたね。こんなふうに、少しずつ「自分の知らなかった世界」が見えてくるのが楽しいです。(りょうき)


ー社会の見え方が変わる中で、自分自身の考え方にも変化はあったのでしょうか。

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【都市部と地方の社会問題に対する温度差】

私は東京生まれ、東京育ちで地方で暮らしたことがなかったので、気づかないうちに「都市っぽい考え方」をしてきたと思います。それが地方勤務になってから「都市部」と「地方」で、社会問題に対する温度差があることを知りました。たとえば「男性が育休とってどうするんだろうね」という会話がスタッフたちの間で繰り広げられていたり、「サステナブルってつまりは何のこと?」という認識だったり。こうした価値観の変化が、まだ波及しきっていない印象をうけました。だからこそ、東京や大阪などの「都市部以外の人」にも NYNJを届けたいと思うようになりました。(ちはる)


【“私が生きたい社会”から“私も生きたい社会”へ】

お仕事をするなかで、クライアントの組織がもっと働きやすい場所になるように、上司たちがあれこれ一生懸命アイディアを出しますが、クライアントからいただくフィードバックがいつも良いわけではない、という場面を目にしてきました。
そんな中で「私がもつスタンスは、実は私の考えたなかでの最適解であって、いつの時代の・誰にとっても最適解であるとは限らないらしい」と思うようになりました。だからこそ、自分の持つスタンスをいつでもアップデートする必要性があるんだなと。
学生時代は、「私が生きたいと思える社会を作りたい!」と思っていました。でも今は私だけが生きたい社会ではなくて、私を含めた周りの人が生きたいと思える社会を作っていきたいと考えるようになりました。(りょうき)

ー社会人になったからこその気づきや新たなテーマを得た二人ですが、一方のNYNJでの活動のしやすさはどう変化したのでしょうか。

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【社会への疑問や怒りを保つ難しさ】

NYNJはものすごくアクティブで、スピード感のある団体です。だから、仕事でたくさんの情報をインプットしているなか、それと並行してNYNJの「今」を追い続けるのは難しい。また、どうしても仕事の後は息抜きとして娯楽を求めてしまう気持ちがあり、「社会への疑問や怒り」といったパワーが必要とされる NYNJ の活動に向き合う気持ちをプライベートで持つことが難しいと感じるときはもちろんあります。(ちはる)


【仕事とNYNJを両立するのは、正直大変】

学生の時のような活動を続けるのは大変です。 私は正直、自身の労働時間が長めだと感じています。勤務日はほとんどNYNJの作業はできないし、休日はプライベートの時間も取りたいと思うので、わずかなプライベートの時間のなかで作業を進めるのが難しいときもあります。(りょうき)

ーそれでも二人がNYNJで活動を続けているのはどうしてなのでしょうか。

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【社会の当たり前に飲み込まれそうな時、立ち帰れる場所】

NYNJの情報共有の場である「Slack」を見ていると、ものすごいスピードで最先端のニュースが目に入ってきたりするんです。さらにそのニュースに対する他のメンバーの意見が聞けることで、自分自身も考えるきっかけになる。社会人になって、社会問題に対する意識がバラバラな中で仕事をしていて、今の社会の「あたりまえ」に飲み込まれそうな時も、NYNJの活動やメンバーのモヤモヤを見ると、立ち帰れる感覚があります。(ちはる)

【社会を良くするためのパワーが溢れている場所】

NYNJのSlackを開くと、そこには社会をちょっとでも良くしたいっていうパワーが溢れてるんです。忙しい日々の中でちょっと忘れそうになってしまうそのパワーをいつもチャージできる。今社会でどんなことが起きているのか掴める点もいいなと思っています。(りょうき)


ー最後に、社会人になった二人がNYNJで取り組んでいきたいことについて教えてください。

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【不満や否定だけではない、社会が変化していることも発信する】

NYNJはある程度社会問題に興味がある人には認知され始めているのかなと感じる一方、そうじゃない人にも興味を持ってもらうためには、「社会問題を考えることってかっこいい」「なんだかワクワクする」「おしゃれ」といったようなムーブメントを作ることが必要だと考えています。だからこそ、現状への不満や否定だけじゃなく、明るく政治の可能性や社会問題を考えられるようなコンテンツ作りに携わりたいです。(ちはる)


【様々なスタンスを意識した、“私も生きたい社会”を作る】

私はインスタグラムのポスト制作を担当しているので、いろいろなスタンスを取り込んだポストを作りたいなと思うようになりました。「ひとつのスタンスだけが最適解というわけではない」ということを感じた経験を生かして、「私が生きたい社会」ではなくて「私も生きたい社会」を作っていけたら嬉しいです。(りょうき)


ー最後に

仕事もプライベートも充実させたい。目まぐるしい毎日の中でNYNJの活動時間やモチベーションをなかなかキープできない。社会人ならではのジレンマもある一方、社会人になったからこそ見えてきた「意外と変化している社会」があり、「様々なスタンスを大事にしたいと思う自分」がいる。
そんな声をもったメンバーがいることで、「わたしたち」に含まれる視点やスタンスにも多様性が生まれ、日々のコンテンツ作りにも生かしていくことができます。メンバーの生き方の変化とともに「わたしたちの生きたい社会」の風景も変化していく。こんなところもNYNJらしさ、なのかもしれません。

(文:佐藤萌音)

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