宇宙戦争
大方の人々には信じられない事だろう。この世界は人間よりも知性に優り、しかも人間よりもはるかに小さな身体と、揮発性の悪臭を放つ分泌腺を持つ存在につぶさに観察されていたということを。
コロナだのSDなんとかだのにかかずらっている間にも、人間たちは悪臭を放つ分泌腺を持つ彼らによって、つぶさに、周到に、詳細に、観察、研究されていたのだ。彼等は我々のすぐそばに潜んでいた。
おそらくそれは、人間が、試験管や檻の中の実験対象動物を観察するのによく似ていたことだろう。完全に油断していた人間は地球上をあちらへこちらへと動き回っては、殺戮や飽食、環境破壊にかまけ、自身を虎視眈々と狙う、悪臭を放つ分泌腺を持つ存在を思いもしないで呑気にに過ごしていた。
試験管のムシケラ達と同じく。
人類に危機を及ぼす存在について考える人間は少ない。いたとしても自分の人生には関わりのないものと、楽観的に思考の端に退けるだけだ。
例えばその昔、地球に住む多くの人々は火星に生物が住んでいて、それはおそらく私たちより都合良く劣っていて、都合よく良い香りがし、都合よく私たちが訪れるのを待ち望んでいるだろうと考えていた。
しかしながら現実は、実験動物に対して私たちがそうであるのと同じく、私たちに対して無感動で、知性で大きく先んじ、悪臭を放つ分泌腺を持つ、冷酷で共感の心を持たない者たちがこの地球を悪意、殺意の目で見つめていた事に我々は全く気付いていなかった。
そして奴等は、ゆっくりと、しかし着実に私たちに対する計画を進めていて、そして今、我々におおいなる危機が到来したのだ。
カメムシが最悪だ。
戦後最大の爆発的繁殖数やないんですか?もうね、あまりの数に収拾がつきまへんわ。窓際に一面のカメムシでっせ?悪夢ですわ。
どこから入って来んねん?塞いでも塞いでもキリなく入ってきて、知恵くらべは当方の完全敗北やわ。
カメムシとなると犬も猫も役に立たない。
無理もない。あんな悪臭を放つ生き物、二度と触りたくないだろう。チビ太もチコも、一度噛んでしまって以来、近寄ろうともしない。
口の中に一発かまされて、チビ太なんざ床の上を転げ回ってたからな。
で、話は変わるが、家にはメスしかいない。
人から犬、猫、メダカに至るまで全てがメスで、唯一のオスである自分に一同結託して圧力をかけてくる。
「ホラホラ、カメムシですよ?捕獲はあなたの仕事じゃないんですか?」
と。
俺の仕事じゃねぇよ。
ただ、猫まで悲鳴をあげるテイタラクで誰も役に立たないから仕方なくやってるだけだ。ふざけやがって。
あぁ、もういっそ家はカメに空け渡して車中泊生活しようかな。
そして全国を旅して回り、カメのいない王国を探すのさ。
追伸:HOYAの製造ラインが復活したそうです。
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