お月見は突然に。 #こよいお月見
お月見は、突然やってくる。
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振り替え休日。いつもと違う平日のお休み。なんとなく、時間の流れも景色も新鮮に写る。
「パパ、きょうおやすみなの……?」
「うん。でも市役所いったりいろいろ出掛けるなー。」
「そっかぁ……。」
日曜日のようにみんなお休みだと、ついつい幼稚園に行きたくなくなるから、わたしも出掛けるよアピールを忘れない。幼稚園大好きで行き渋りもほとんどないけど、同じくらいおうちも好き。たのしいもんね。
しかし!こういうイレギュラーな平日休みが発生したときは、ちょっとしたサプライズをする。ふだんは、園バスで送り迎えしてもらってるんだけど、事前に連絡しておけばお迎えに変更できるのだ。
(ほんとに市役所だの平日限定の所々諸々をやっつけて)チャリを飛ばしてお迎えにいった。
もう年中かぁ……。来年にはランドセルを考えねばならない。時の速さが信じられなくて、驚いてるうちに子は成長していく。
「今日は一日、暑い中体育の日でした〜!はい、保護者の方はお迎えをお願いいたします〜!」
先生のアナウンスで、園庭に待機していた保護者たちがいそいそ教室に向かう。久しぶりも見たお顔もあって、「どうも〜!」なんて挨拶にいそしむ。
びっくり〜〜!!!サプライズ〜〜〜!!!
と、なるかと思いきや、意外にもおっ!って感じで小さく手を振って近づいてきた。お昼ごはんのときに事前に先生に教えてもらったらしい。だよね。でも、足がずっとバタバタしてる。サプライズは、たぶん成功。こっそり耳打ちして、自転車に乗り込む。
「……(コソコソ)よりみちしていこう!」
「よりみち〜!!」
自然に生まれでたテンションマックスのIKKOさんをチャイルドシートに積んで、線路沿いに電車を見に行く。このあと内緒の(といってもママも承知の助の)マックでアイスを食べにいくのだ。アイスとコーヒーを挟んで、家の外で話す。その時間も新鮮で、ちょっと特別な感じがして好き。ふだんしないような話も、ちょっとだけしたりする。
○系とか、特急とか、○○連結とか、電車大好きの息子くんは、もうすっかりわたしより博士で、話す図鑑みたいだ。息吸うように話している。ふんふんしているうちに、おやつ時も近づいてくる。人もまばらな銀色の特急を観てから、聞いてみる。
「マックでアイス食べてかえろ!」
「!!!!!!」
声にならない声が聞こえたと思ったら、もう自転車に乗り込む博士。特急である。アイス、うまいよね。今日暑いしね。なににするー?なんていいながら、駅前のマックに向かう。自転車に乗っていれば、風が気持ちいいけど、止まると汗が飛び出てくる。トンボが並走していく。秋なのに、まだまだ夏だ。
だが、しかし。
「機材故障により、シェイクとアイスの提供を停止しております。」
な、なんだってー!!!停止しております!!この夏に!!!わたしの顔を察して、息子くんも何かを感じ、ガーン!!と効果音と効果線が引かれたような顔をする。
「アイス、ないの……?」
「うーん、故障でダメみたい。」
「かなしすぎるよ……。」
よな。かなしすぎるよな。
さて、どうしようか。近くにはミスド、コーヒーショップとかアイスあったっけ?チョコドーナツも大好きだけど、今日は完全にアイス腹だもんなぁ。
「……コンビニでアイス買っていこうか?」
「……うん。」
あきらかなテンションダウンだが、手を引いて店内にウィーンする。冷房が心地よい。
アイスのボックスの前に来ると、大量のアイスたちを前にだんだんこころを取り戻していく。さて、どれにしようかな~。
「これ!ふたつのやつ!これ、ママと弟くんにもかってかえろう!」
「……かってかえろうとな?」
うん!と、雪見だいふくを指しながら、満面の笑みが帰ってくる。
オーケーオーケー。残暑、秋晴れ、30度。アイス日和りに雪見の寿命は短い。絶対とろけそうな日。なんでや。でも、もう止まれないプレイボールプレイゲーム。
ファミマのクレカ決済の音楽で謎の踊りを店員さんに披露してから、せーので走り出す。
「いそぐよ!」
「なんで!?」
「とけるから!」
「とけるって!?」
食べて帰る予定だったから、エコバッグとか装備がない。素手。無防備な雪見。
「はしっこ!はしっこもってね!」
「はい!!!!」
安全運転交通法規遵守の最大船速で漕ぎ出す電動チャリ。はじめてマックスの補助使った。
「パパ、はやくはやく!」
「はい!!!」
「はやぶさくらいね!!」
「それは、はやいな!!」
「せんだい、いっちゃうよ!!」
「ね!!!」
と、急にはじまったタイムアタックを乗り切り、流れる汗をふきふき滑り込み家についたら、いい感じにとろけてる雪見だいふくが爆誕した。
「あれ、食べてこなかったの?」
「はぁはぁ……、カクカクシカジカで……。」
「それは……笑」
こうして、家族みんなで食べた雪見だいふく、期間限定でお月見仕様だった。まんまる4つ。満月が並ぶ。ふんわりとろけて「おいしいね〜〜〜!!」だった。
「なんかいたよ!」
「おっ、うさぎ。」
「……うさぎ、激レアらしいよ!すごいじゃん!!」
突然やってきた月見、うさぎも爆走で訪ねてきてくれたみたい。まだまだ暑いけど、こんな日もたのしい。また、よりみちしようね。
おわり。
待てうかつに近づくなエッセイにされるぞ あ、ああ……あー!ありがとうございます!!