耳毛。

耳毛が生えていた。びっくりした。

日記です。

耳毛が生えていた。10センチくらい。耳の入口付近から伸びて、髪の毛に擬態していたようだ。毎日ワイヤレスイヤホンをしたり、眼鏡をかけたり、髪を耳にかけたりしてたのに気が付かなかった。完璧な擬態である。毛を隠すなら毛の中。おそろしい。
プチン、と抜いた幸薄そうな10センチを眺める。まじまじ。なぜだか、感慨深い。毛はいろんなことを教えてくれる。上も下も鼻の中も、白い毛がまじったりグラデーションが強まったり、ああそれは老いのサイン。たかが毛。されど、一本一本がぼく。あと、ほくろから謎毛が爆伸してきたり、あれなんなの?

耳毛よ。なんできみは生えてきたのか。耳毛。だって耳に毛である。多忙節約を言い訳に、なるべく美容室に行きたくなくて、髪が伸び放題である。ふだん髪が耳にかかっていて、閉じられた世界でふさふさ豊かになった耳毛。旅立ちの日は今日よ。

その昔、中学生のころだろうか。ダウンタウンのまっちゃんが「浜田の耳毛が〜」と歌っていた。どこで?ダウンタウンのガキの使いのトークコーナーだ。オープニングで流れる曲をつくろうとハマちゃんと話してて、ハマちゃんが「パンパラパンパンパンパラパラパラ」とリズムを歌う、それに合わせてまっちゃんが「浜田の耳毛がよ〜、風になびくのよ〜」と歌う。トークの中身は覚えてないが、メロディと耳毛というワードだけが20数年、記憶に居座り続けていた。耳毛。大人は耳毛が生えるのか。なんでや。耳に毛って。意味がわからぬ。しかし、意味がわからないまま、毛は生えてきた。大人になったのか。なれたのか。わからんが生えてきたら、抜くのだ。プチン。

ガキの使いやヘイヘイヘイ、スマスマ。うたばん。クラスの話題のために観ていた番組たち。もちろんたのしいのもあったけれど、好きより義務感が勝つ青春タイムの小さい世界がなつかしい。もうほとんど覚えてないが、浜田の耳毛だけが残ったのか。時の洗礼を経て、最後にはなにが残るかわからないのだ。

風になびく前に、ちゃんと鏡を見なくては。疲れた男が笑う。えへへ。ふっと掌から吹き飛ばそうとして思い直し、10センチを燃えるゴミに捨てた。まだまだですな、人生。これからこれから。


おわり。


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待てうかつに近づくなエッセイにされるぞ あ、ああ……あー!ありがとうございます!!