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『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』を読んだらもっと家族について知りたくなった。

私は家族を知らない。

そして、この本を読んだら、
もっと知りたくなったことを書きます。

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった

ひとつのことを何倍もの愛でマシマシにして綴る岸田奈美さんの初の著作「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」を読んだ。

noteで公開されてるものや、キナリ☆マガジンで読めるものも収録されてるので、ぶっちゃけ買う前は記念に買う的な感覚だったのだけど、

結論として、買ってよかった。
ページを繰るたびに優勝した。

表紙も裏表紙もページ番号も、不意に挟まれる栞も、最高に泣けた。

読みながらこころが全力赤べこになって、「わかる!!!!!」ってなったのは言うまでもない。


言いたかったこと。
言えなかったこと。
選ばれなかった、たまたま別だっただけの、自分の人生の可能性のひとつ。

なんでこんなにも、自分のことを書いてくれたって気持ちになるんだろう。

生い立ちも、家族構成も、体験も全く違うのに。もしかしたら私もこうだった/こうなるかもって思ってしまうし、ハッピーエンドを願ってしまう。

自伝エッセイなのに、登場人物(って言うのかわからないけれど)のしあわせを願ってしまう。


むちゃくちゃ好きになる。


そう、家族構成すらわからないのに桜木花道のことをめちゃくちゃ知ってる気がするように、読み終えたあと良太くんやひろ実さんやお父さんや奈美さんのことが好きになった。見たことないのにリビングのふんいきが想像できる気がするまでには、身近に感じる。


好きになってしまったのだ。


そのくらい、文章のひとつひとつで登場人物がぬりぬり動くし、笑うし、泣くし、愛が詰まってる。


最高だ。


家族のこと、知ってる?

私の父と母は赴任先で結婚し、離島にそのまま住み着いた。だから、どちらの親戚関係は本土にいてめったに会わない。

たぶん、身近な大人から聞く両親のことをほとんど覚えていない。

面と向かって、「父母はどんなひとなの?」と聞く機会もなくて、今日に至る。


どの家族でも、親戚関係はなんかいろいろある。

しかも、家族で一番末っ子、親戚のなかでも幼いだった私は、そのいろいろの外にいた。

大人になるにつれて、後々になって「そういうことだったのか」と欠けたピースがつながることが多い。


小さい頃は、夏休みや年末年始に母方の祖父母の家に遊びに行くのが一年で最高の楽しみだった。

飛行機ででかけていき、日にちを合わせて近くのいとこたちも車で遊びに来てくれる。

そのままレジャー施設やテーマパークにいくことも楽しみだったけど、いとこたちと集まってただただ遊ぶだけでテンションが上がった。

一番の記憶は、家から少し歩いたところにある本屋さんだ。

姉が親戚のなかで一番大きかったので、子どもを引き連れて本屋さんへ出掛ける。
本屋さんにはセブンティーンアイスの自販機があって、ひとり一枚ずつ100円を渡してもらい、思い思いのアイスを買って食べた。
兄貴は大人ぶってチョコミントを食べてた。私はグレープ味。今でも駅で自販機を見かけるたびに、うだるような暑いなか歩道を並んで歩きながらアイスをかじったのを思い出す。めちゃくちゃ溶けるのがはやかった。

余談だけど、本屋さんが好きだった私は、少し大きくなったら自転車でその本屋さんに行くようになった。
地元の離島にはない、大きな本屋さん。
開店と当時にいそいそチャリを走らせ、片っぱしから気になる本を立ち読みし続けてたら、気がつくと親戚一同に大捜索されていたことがある。発見されたのは15時過ぎだった。


母にむちゃくちゃ怒られた。でもちょっと笑ってた。


思い出すと、楽しかった記憶しかないのだけど、十数年経って母方の親戚関係は壊れてしまった。


高校、大学と成長するに連れて、だいたいのひとがそうであるように私も親戚の家を訪ねることがなくなった。そのうちに、なんかいろいろあって、親戚関係は壊れてしまったらしい。

記憶をたどると、最後に訪ねたのは祖母のお葬式のとき。もう5年以上前だ。

もともと蚊帳の外だったけど私は、その「のんかいろいろ」を今も知らない。もしかしたらもともと壊れていたものを、がんばって繋いでいただけかもしれない。ないものをさもあるように見せかけていただけかもしれない。

ときどき寂しそうにしている母を見ると、胸が痛くなる。

「どこで、なにかまちがえたのかな」
そんな顔をしているように、見える。

それでも。

それでも、私の記憶には楽しい思い出がいっぱいだ。

だから、その「なんかいろいろ」がもう修復できないものだとしても、この先誰かのお葬式でしか顔を合わせないだけだとしても、私にとっては大成功だったと伝えたい。


なんか後ろ向きなことばかり書いてしまったけれど、家族のことが好きだ。
思い出のなかの親戚のおじさんもおばさんも、じいちゃんもばあちゃんも、笑ってる。

だから、大成功だよ。


家族のことを知ってるつもりだったけれど、家族たから聞きにくいこともある。
そして、「なんかいろいろ」のままにしていることがたくさんある。

岸田さんの本を読んで、自分の家族のことをもっと知りたくなった。
各予定はないけれど、将来自伝を書くときがきたら「なんかいろいろ」をちゃんと受け止めて、誰かががんばって作った優勝のページばかりたくさん書いて、楽しいで埋め尽くせるようになりたいと思う。

読んだらきっと、自分の一部に響く本。

今期優勝の一冊で、オススメです!!!!

追記:

テンションで聞いたら先走った!ゆっくり聞いていきたいと思う。

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待てうかつに近づくなエッセイにされるぞ あ、ああ……あー!ありがとうございます!!