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野やぎのエッセイ

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エッセイ・創作エッセイをまとめました。
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#エッセイ部門

職場で刺し身を食べま初夏。

春うららかな陽気を吹き飛ばし、夏をダイレクトアタックで連れてきた初夏。 なにこれ、暑い。 夏よ、そんなに急いでどこへゆく?ものごとには順序があるんだぞ。動機、息切れ、気つけに求心。陽気、梅雨明け、夏日でルーティーン。はい、復唱して。……はい。わかった?段階で連れてきてよね、夏。これさ、真夏日、猛暑日待ったなしじゃん。突然くるとみんなびっくりしちゃうの。体がついていかないの。毎年言ってる気がするぞ。まじで。わかった? ねー。ほんと、暑いですね……とかなんだかんだと言いつつ

小学生になる息子と電車で12時間、行って帰って見つけた旅の終わり。

「とにかく、とおくにいきたい!」 彼は、元気よく言い放った。 本気か? 本気だった。 + この春、小学生になる長男に「春休みどこいきたい?」と聞いたら、こんな答えが返ってきた。 「電車に乗って、とにかく遠くに行きたい」と。 彼は鉄道大好きキッズ、いわゆる子鉄である。それも、乗り鉄マシマシだ。 以前、実家に帰省するときに羽田空港までのルートを任せてみたら、1時間20分の道のりに4時間30分かかった。なんでだ。わからぬ。だが、そこに理由はない。好きは超特急なのだ。とに

Wow-WowWar-そこに意思はあるんか。

気持ちのいい秋晴れ、平日に休みをとった。 来年から小学生になる長男の就学時検診があり、午後から幼稚園を早退してはじめて小学校にいく。次男もプレスクール。子どものイベントが重なると、どうしてなかなか回らなくなる。フレックスなので在宅でもなんとかなったけれど、思いきって一日有休にした。気持ちが楽である。 朝のバタバタをやり過ごして長男を送り出し、一息つく。次男とパートナーは2階の子ども部屋で遊んでいる。ざっくり片付けを済ませてソファにもたれこんだ。ここのところデスクワーク続き

スーパーのトマトぜんぶ買ってケチャップつくる。

息子、トマトが好きじゃない。 もともと味が濃かったり、刺激が強いもの(炭酸とか)が苦手。トマトもすっぱいのが好きじゃないそうだ。こういう子はけっこういるらしい。あとは、なんとなく。 この、子どもの「なんとなく」って乗り越えるのすごくむずかしくて、大変。 まあ無理に食べなくてもいいよ嫌いになっちゃうし気が向いたらね!の方針なのたけど……。 でもなぁ〜〜〜!トマト、万能バイプレイヤーなんだよなぁ、、、。 ついつい茶色一色、緑とツートンになりがちな食卓にトマトがあるとぱぁっと

やさしい背景でいたい。

レジに並んでいると、泣き声が聞こえてきた。 抱っこひもの中ではすやすや寝息がしている。 あれは、もう少し大きい子かな? 「……んぉおかぁぁぁあさーん……!!」 世の中で何が起きようが、生活は図太く続いていく。毎日は重なっていき、月曜日はジャンプが出るし、お腹は空くし、子どもは元気に泣く。 いろんな事情があるから、子連れで買い物にもくる。うちもそうだ。大変な世の中がある一方、毎日のたくましい生活だってしっかりとある。 順番になり、妻がレジに進むとき、 「地獄の底みたいな

イギリスで幽霊を左折させた話。

霊感がまったくない。 まったくないが、時々「あれはぼくにしか見えてないかも……?」というタイミングに遭遇する。 例えば高校生のとき。下北沢駅西口の踏切で友だちと待ち合わせしていたら、明らかにやばそうなオーラが漂う存在がいて、本能で「あ……。あれは目を合わせちゃいけない奴だ……。」と見ないようにした。私服の友だちだった。 そのくらい霊感がない。 だけど、人生で一度だけ金縛りに遭遇した。 + それは、大学一年の夏。 ぼくはイギリスのブリストルに降り立っていた。 大

初めてLGBTを見たとき、ポケモンのことだと思った。

「女みてぇな声しやがって!!」 誰かのこころが踏みにじられて、止まってしまった瞬間を、その時初めて見た。 耳元で叫ばれた言葉の威力を、ぼくは今もわかっていない。 + というより、たぶん、ぼくは気づいていない。 これは怒られるかもしれないけれど、と書くと語尾語頭ぜんぶに保険掛けたくなるので一度しか書かないけれど、 (これは怒られるかもしれないけれど)初めてLGBTの文字をみたとき、ぼくはポケモンの新作だと思った。 さっとウェブニュースの見出しだけみて、おおー!新作