神戸からのデジタルヘルスレポート #86 (院内連携・院内管理)
『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。
今回は、病院内やクリニック内部でのチーム連携サービスを提供している企業をご紹介いたします。
1. Vocera Communications:病院・医療システム向けコミュニケーションツール
Vocera Communicationsは、院内のスタッフ間のコミュニケーションを迅速に適格に行うためのプラットフォームとデバイスを開発・提供しています。今日では、院内・医療従事者内に留まらず、患者家族に患者さんの様子を届けたり、直接的なコミュニケーションを取るツールとしても活用されています。米国病院協会の推奨ツールとなっており、世界中の800を超える病院と医療施設に設置されています。
コミュニケーションツールをWeb上で展開しているだけの企業であれば腐るほどたくさんありますが、Voceraがすごいのは、ハードウェアまで作っているところ。現場のためにここまでするの、すごい執念です。
ボイスリマインダー機能を持つVocera Vinaや、マインドフルネスプログラムのためのVoceraSmartbadge等、医療コミュニケーションツールとしてだけでなく、病状管理の役割等、提供ソリューションは多岐にわたっています。患者向けのソリューション、Ease Applicationも同時に提供。これぞ連携だ、とうなる気持ちです。
同社は既にIPO済み。IRページも親切・フレンドリーでした。
2. Ludi:医療機関の財務・コンプライアンス支援
Ludiは、医療機関向けの財務管理及びコンプライアンスシステムを提供している企業。機能としては、医師の勤務時間管理と給与支払いアプリを開発しています。CEOが主力製品であるDocTimeLogについて紹介している動画があります、2分足らずの短い動画なのでお気軽にどうぞ。
Ludiの主力製品であり、数々受賞歴のあるDocTimeLogは、従来は面倒な紙ベースのプロセスであった医師への支払管理を、Web上でシンプルに管理できるように設計されています。日本文脈で言えば、今はやりのDXですね。医師が雇用されているか独立しているかに関係なく、オンコールや特別なボーナス等、複雑な医師への支払を簡素化・スムーズにできます。
<<DocTimeLogの主なサービス内容>>
・シフトベースに合わせたタイムトラッキング:救急のオンコール、通常診療、集中治療室勤務、教育等、業務内容のシフトに応じた勤務時間と報酬管理
・ボーナス・インセンティブの自動計算:医師の雇用契約に応じたボーナス・インセンティブに係る診療行為の集計
・医師雇用契約の管理:更新や契約満了、新規締結など、個別契約内容の管理
3. Locum's Nest:医療機関向け労務管理+欠員補充支援
Locum's Nestは、医療機関向けのHRサービスを開発・提供している英国のスタートアップ。医療スタッフのシフト一括管理や給与計算、欠員の補充調整などを自動で行うことができます。医師、看護師、薬剤師等の様々な職種が集う医療機関では、それぞれの給与やシフト計算・管理を行うのも一苦労です。これをシステムでシンプルに効率的に行えるように設計されています。このあたりの問題意識は、Ludiとも共通していますね。
こちらも短い紹介動画をどうぞ。
スタッフ側も、スマホ・Webアプリからいつでもどこでもシフトや給与の管理ができます。現場のペインを明確に捉えた、医療フォーカスのHRテックですね。
Financial Timesが21年3月に発表した「ヨーロッパで最も成長している企業ランキング」で、堂々46位に選定されています。19位に選ばれている
Happybrushや、226位のExscientiaも面白そうだなと思って見ていました。ちなみに1位はエネルギーテックのBulb。
4. Care Thread:入院~退院支援のコラボソリューション
Care Threadは、安全なモバイルメッセージング技術を活用した、患者中心のコラボレーションツールを提供しています。より効率的・効果的な患者ケアを追求しつつも安全性を損なわず、退院までの期間を短縮することを目的としています。
同社によると、医療過誤の80%は、医療スタッフ間の患者についての引き継ぎが不十分な場合、つまりコミュニケーション不足によって引き起こされていることが研究によって明らかとなっています。Care Threadがスタッフ間の情報共有とコミュニケーションに焦点をあてている背景は、こういった医療現場の課題にあります。
医療現場のスタッフ間の課題を解決するため、提供しているサービス内容は以下。
・Care Team Mapping:メンバーをマッピングし、患者のケアにあたらせるメンバーアサイン等を行うことができる
・Secure Mobile Messaging:医療ケアチーム同士が、セキュアに患者情報をコミュニケーションできる。(HIPAAおよびHITECHに準拠した安全なセキュリティ水準を遵守)
・Real-Time Clinical Information:同じ臨床情報が一貫して配信され、ケアチームの各メンバー間で共有できる
日本だと院内コミュニケーションにLine works等使っているところも一定あるようですが、つい先日もサーバーの設置場所や情報流出などで色々問題が指摘されていましたね。
効率とセキュリティのトレードオフが解消される世界がやってくるといいのですが。
5. Airis Health:医療従事者間メッセージングSaaS
Airis Healthも、上記のCare Thread同様、医療従事者間でのメッセージングや、看護師の割り当てなど、人工知能を活用してた医療ケアチーム間の連携SaaSを提供しています。とにかくシンプルに!それが同社の信条。XLerateHealth Acceleratorに参加したスタートアップの一つです。
オンコールスケジュールやセキュリティシステムも開発途中の模様。ルイスビル大学病院での実証を実施中のようで。今後の進展も楽しみ。
6. Phreesia:患者体験最適化支援ソリューション
Phreesiaは、患者個々人の健康その他データを統合し医療機関でのニーズ・行動を事前予測することにより、病院側に最適な人員/リソース配置を促すソリューションを提供しています。既にIPO済みで、スティッカーシンボルはPHR。なんとヘルスケアな。
患者さんに対しては、そのエンゲージメントを最適化するよう、適切なタイミングで的を絞ったメッセージを自動送信します。メッセージ内に含まれるりんくからそのまま各種ワクチン接種や検査、診療予約などを実施可能
各患者の保険の契約状況、自己負担額等も通知、設定できる機能も搭載しており、患者の健康管理から支払いまで、ペイシェントジャーニーをよりスムーズにする機能を一括で備えたソリューションです。ユーザーの声を見ても、使いやすいソリューションであることが見て取れます。
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