私の成長のきっかけは、おばあちゃん100人へのナンパでした。

仕事の転機はいつだったか

最近コンサルティング業界志望の学生さんと話す機会があって、その時に「自分が社会人として成長した瞬間ってどこだったのかな?」ということを考えていました。

・出すたび真っ赤に修正される議事録やインタビューメモを諦めずに書き続けたとき
・深夜3時のオフィスで先輩にしごかれながらExcelのモデルを組んでたとき
・同じく深夜、赤ペンを入れられすぎて原型をとどめていない議事録5本を書き直していたとき
・クリエイティブの人と一緒に新しい浴衣のコンセプト作りをして、糸問屋さんと交渉して、最後店頭に並ぶまで面倒を見きったとき(そのPJTのために自宅で蚕を飼ってみて周囲に引かれたとき)
・スーツの股がフル破けた状態でクライアントプレゼンをやりきったとき(2時間)

まぁいろいろ浮かんできたんですが、結局マインドセットを含めて一番変わった・成長したのは、

上野公園でおばあちゃん100人にナンパをしたとき

だな、と思うに至りました。

このままでもいいけどね(いやよくないよ)

当時の私は外資系コンサルティングファームの新卒1年生で、とある会社のマーケティング戦略の立案に関わっていました。テーマはシニア。

お客さんがこれまで実施しているアンケートのデータだったり、顧客セグメント別の売上分析だったり、数字のファクトはけっこういろいろありました。下っ端のお作法として、それらのデータをこねくり回したり、きれいなスライドにしたりして、ボスであるマネージャーに出すわけですよ。すると、

ボス「う~ん、まぁわかるんだけど、もっと手触り感がほしいよね...なんとかならんかな~。このままでもいいんだけど。もう少し考えてみて」

手触り感?これ数字のデータっすよ?手触り感...うん...うん...どうしようかな...
私がいたファームではよく「モーイーハン」という言葉が使われていました。麻雀用語らしいんですが、「これで十分なアウトプットだな」と感じたところから、もう一歩粘る。もう一歩考えてみる。上司から何度も「モーイーハン、粘ろう」と言われ続けると、だんだんにこの習慣が内部化されていきます。
まさに私はその時、モーイーハンにトライしてようとしていたときでした。

チャンスは街の中にある、身の回りにある

クライアント訪問後の帰り日、うーんと悩みながら街を歩いていて、ふと気づいたんですよ。街中にたくさんシニアいるやないか、と。

私「これはもう、直接聞いてまおうか」

と思ってですね、仕事の合間をみつけて上野公園に出かけることにしました。美術館だったり散歩目的で講演を訪れたおばあちゃんに「ちょっとお話できます?」とお誘い(=ナンパ)して、マーケティング課題の背景にあるファクトについて話を聞く。まだ見ぬ手触り感を求めて...

生感、手触り感を求めて

小さいときからおばあちゃん+PTA世代受けだけは抜群だった私。結構な確率でおばあちゃんたちは立ち止まって、ときには1時間くらいお話を聞かせてくれました。(その節は本当にありがとうございました...)

面白い話が出てくる、出てくる。どんどん出てくる。

結局2週間くらいかけて、100名くらいのおばあちゃんの話が聞けました。
(どんなお話だったかはプロジェクトの内容だからひっそり秘密)
(朝~お昼を公園で、夕方~夜~深夜をオフィスで過ごした日々)

・1日終わったら、その場で聞いた速記メモをチームみんなに展開するインタビューメモに書き直す。
・一定程度たまったらあとは、小さなポストイットに書き出してみる
・ポストイットの内容を構造化してみる
・↑のプロセスを何度も何度も繰り返す

ここでできてきたものを、もともとあった数値データと組み合わせて資料をつくっていくと、ただのみるみる手触り感が...!!
「●●%で~のような示唆」みたいな渇いたスライドが、もっとこう、
深みのある、おっ読みたいな、おっなるほどな、という資料になっていく。
幸いなことにこの資料はお客さんにぐさーっと刺さって、結構なアクションにつながりました。よかったよかった。

このプロセスで自分が成長できたのは、上をやることでコンサルタントとして必要な基礎力、
・調査設計
・対面インタビュー
・メモライティング
・構造化
・新規情報に基づく磨き込み
あたりをぜーんぶ経験できたことはもちろん、生の情報を自分で引き出しにいくことの大事さが体に染み込ませることができたからだろうと思います。

東日本大震災のときに養老孟司先生が、

答えは全て目の前にある。わたしたちが知らないのは「問い」のほうだ

ということをおっしゃったという文章を読んだことがあります。文脈は違いますが、同じことがビジネスの世界にも言える。

街に出よう、人を知ろう

改めて思うのは、仕事は紙の上でなされるんじゃなくて、私達が生きているこの世界で起きているということ。

そして、良い仕事をするためには、
・世界と向き合い、
・起きていることを素直に受け止め、
・受け止めた世界を表現するためのカード(三浦しをん作『舟を編む』でいうところの船)を豊かにすること
が必要なんだなと。

新卒で入った会社をやめたあと、新規事業のプロフェッショナル会社にいったりスタートアップで執行役員をしたりしましたが、このとき感じた原則がいつもプロジェクトやプロダクトをより良いものにしてくれました。

答えではなく、問を持つ。問を持って世界と向き合う。
良い問いかけをするための船を豊かに持つ。
勇気を持って世界に問いかける、働きかける。

素人が出した予見を既にありあわせの知識で応えるような仕事ではなく、多様で素敵な人達を新しいフロンティアを探求していけるように、まだまだ自分自身を磨いていかなきゃいけないなと。

最初に書き出したときに提示した問いと最後の着地点がぜんぜん違うところに来てしまった気がしますが、自分自身と素直に向き合ったらこんな流れになりました。突然思い立ったので、気の向くままに書いてみました。

Life is for Sharing. それではまた.

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