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神戸からのデジタルヘルスレポート #45 (メンタルヘルス)

『神戸からのデジタルヘルスレポート』は、神戸拠点のプロジェクト支援企業・Cobe Associeが提供する、海外のデジタルヘルススタートアップを紹介するマガジンシリーズです。

今回は第44回!元気にデジタルヘルススタートアップを紹介していきます:-)==

1. TQIntelligence:子供のメンタル障害を予測する音声バイオマーカー

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企業名:TQIntelligence, Inc
URL:https://tqintelligence.com/
設立年・所在地:2018年・アトランタ
直近ラウンド:Seed(2018年11月)
調達金額:$1.5M(JumpStart Foundry fund)

子供のメンタルヘルス領域において、ACEs(Adverse Childhood Experiences)という言葉があります。「18歳未満に遭遇した心的外傷を引き起こす可能性のある出来事」のことで、これを経験した子供は社会的・情動的・認知的なゆがみから不健康な行動に及び、病気や障害や社会的な問題を抱えてしまうことが報告されています。

TQIntelligenceは、子供が経験したACEsを音声分析やアンケートから独自のアルゴリズムで検出し、メンタルヘルス障害の重症度を予測する技術・ソリューションを開発しています。

音声やアンケートなどのデータ収集は、患者本人のスマートフォンのアプリケーションで行いますが、収集されたデータや治療記録は1つのプラットフォームに集約されます。これにより、医療者や保険機関と密接に連携することができるため、治療の効率化・治療コストの削減など多方面からのケアを実施することができます。

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また、医師やセラピストの診察記録や処方データとの連携もできるため、治療や薬の処方による状態の変化を経過的に追うことができます。

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このサービスの対象者としてまず企図されているのは、低所得世帯の子供です。なぜなら、子供の精神疾患の背景には、世帯所得や家族状況といった社会的背景が大きく関与するから。実際に低所得層に限定すると、精神疾患を抱える子供の割合は大幅に増加します。低所得層の方に、いかに正確な状況把握と質の高いケアを提供するか、その解決方法がTQIntelligenceだったと創業者のYared Alemuは述べています。

まさに、ミッションドリブンなスタートアップ。かっこいい。

2. Deliberate AI:AIを用いたメンタルヘルス評価

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企業名:Deliberate Solutions Inc.
URL:https://www.deliberate.ai/
設立年・所在地:2020年・ニューヨーク
直近ラウンド:N/A
調達金額:N/A

Deliberate AIは、オンライン上での会話を音声やビデオで記録し、AIを用いてメンタルヘルスに関わる症状を検知し客観的な診断を行うサービス。音声だけでなく動画も対象技術に含んでおり、表情の変化や目線の動きもトラックできるため、より精度高く分析ができそう。

その他にも、臨床医の時間を節約しケアの質を向上させるために自動文字起こしツールやオンライン上での同意管理ツールなども提供しています。

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同社は、2020年2月にMount Sinai Innovation Showcaseで「記録と分析による心理療法のケアの質の向上」についてプレゼンを行い、見事1位を獲得。これからアルファユーザーとプロダクトを磨きながらビジネスモデルも固めていき、合わせて論文かも進めていくと。

メンタルヘルス領域では、正確かつ手軽な評価・測定をどのように続けていくかが重要な論点。Deliberateのように、動画/音声を活用してインプット負担少なく解析できるソリューションに対するニーズは高いはず。

2020年創業で企業や製品に関する情報はまだ少ないですが、これからの成長が楽しみな企業。

3. HippoScreen:脳波を用いた客観的メンタルヘルス状態の測定機器

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企業名:HippoScreen Neurotech Corp.
URL:https://www.hipposcreen-nc.com/
設立年・所在地:2019年・台北
直近ラウンド:Angel Round(2019年4月)
調達金額:$1.4M(Compal Electronics.)

先程のDeliberateは動画と音声をアセスメントに使いますが、台湾のスタートアップ・HippoScreenは、脳波に着目しています。同社が開発したストレス脳波評価(SEA)システムは脳波を測定するヘッドギアを用いて、うつ病診断支援などに活用されています。

少し長いですが、製品の紹介動画がこちら!

なるほど、いくつかの指令に対する脳波を測定しその結果から分析するという感じですね。うつ状態のアセスメントは主観的な要素も多いので、こういった客観的な測定は治療に大いに役立ちそう。

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このプロダクトの良いところは、測定時間が2分と短いことや測定精度が高いこと。一方で、電極設置のために使うジェルが皮膚や髪の毛にくっついてしまうのが負担になりそう。。髪の毛に付着しないジェルの開発が待たれる...!!

4. Monsley:人間関係に特化したオンライン支援プログラム

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企業名:Monsle B.V
URL:https://www.monsley.com/
設立年・所在地:2019年・オランダ/アムステルダム
直近ラウンド:Pre-Seed(2019年7月)
調達金額:€200k(Rik Heijmen)

オランダのスタートアップ・Monsleyは、愛する人との関係・つながりを改善するためのオンラインプログラムを提供しています。プログラムは12週間・毎週ビデオと実践的な課題を受け取り、定められた7つのステップをクリアしていきます。

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最初の6週間で関係性の現状や自分のニーズや気持ちを理解し整理。次の6週間でよりよいコミュニケーションの仕方を学び、新たな関係性のための基盤を築いていきます。カップル・夫婦両方が参加することが理想ですが、1人で実施しても改善の効果があるようなプログラムが組まれているそうです。また、各ステップを進めていくうえで、疑問点や心配なことがあれば担当セラピストとチャットでコミュニケーションをとることができます。

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このプログラムに強制力はなく、動画を見るタイミングや課題を行うのは自由だそうです。関係性を変えるのは、結局は自分次第。それを支援するのがMonsleyということですね。

MonsleyのWebサイトには、下のような言葉が引用されています。

"When life gives you lemons, make lemonade"

パートナーであっても他人は他人、嫌なことや辛いことは起きるもの。レモンのように酸っぱいものが与えられたとしても、それをもとに、あなた自身がおいしいレモネードを作りましょう、と。励みになる言葉ですよね、素敵。

5. Stigma Podcast:メンタルヘルスポッドキャスト

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名称:Stigma
URL:https://stigmapodcast.com/
開始年・所在地:2019年・テキサス

最後は、スタートアップではなく、メンタルヘルスに関するポッドキャスト。

このポッドキャストは、依存症などの精神疾患に苦しんでいる人の経験・強さ・希望の物語を配信することで同様の人々を救うことを目的としています。執筆時点で40話くらいまで配信中。

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このポッドキャストの名前の由来となっているスティグマ(stigma)。意味としては、特定の属性を持っている人に対してネガティブなレッテルを貼り付けること。これが、精神疾患に苦しんでいる人々が助けを得られない最大の理由の一つとされています。では、この現状から抜け出すために最適な方法とは。それは「経験を共有する」こと。共有することで自分が励まされ、最終的に助けを求めることが良いことだと認識できるようになります。

最近のトピックでは、COVID-19関連による大学生の孤独感や社会的な孤立について配信しています。世間の状況を敏感に察知し、それに関わるメンタルヘルスの解決策を提示してくれます。よいPodcastですね。

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こんな感じで、メンタルヘルスをテーマにした第45回でした。
過去分もたっぷり厚くなってきました。マガジンのほうもぜひ見てみてください:-)

応援ありがとうございます!