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「ゆめにっき」キャラクターの夢を自分で紡ぎ他人と共有できるゲーム「レビュー」

 私が学生時代に夢中になったゲームを紹介したい。それは、ききやま氏が制作したフリーゲーム「ゆめにっき」だ。最初のバージョンが公開されたのは2004年6月26日で、あと2年もすれば20周年を迎える。
 ゆめにっきがどのようなゲームか簡潔に言うと、夢の中の世界を歩きまわるゲームである。ゲームジャンルで言えばアドベンチャーゲームである。作者ききやま氏のホームページでは、夢の中を散歩するだけのゲームであり、特にストーリーや目的はないと記載されている。
 ゲームとして投げっぱなしにみえ、他のゲームと比べると粗いように感じてしまうが、学生の頃の私が何故ゆめにっきに惹かれていったのか書いていきたいと思う。

 以前、noteに書いたゆめにっきドリームダイアリーの感想文で少しだけゆめにっきにも触れいているため内容が一部重複する。

 本題に入る前に、もう少し細かくゆめにっきについて説明したい。

プレイヤーが操作するキャラクター名前は窓付き。一説では窓がプリントされている服を着ているから窓付きと呼ばれている。そもそも名前なのかどうかもわからない。
ゆめにっきの流れ。ベッドで寝て夢の中へ。夢から覚める時は頬をつねる。そうすると現実世界のマイルームに戻る。
夢の中。いろんな場所へつながるターミナル的存在のドアの部屋。多くのプレイヤーの思い出の地である。
夢の中で特定のキャラクターやオブジェ調べるとエフェクトをゲットできる。このエフェクトを窓付きの格好を変えたり中には特殊な行動ができるものもある。画像はめだまうで

 窓付きを操作し、夢の中を徘徊してエフェクトを探すというのが、ゆめにっきの全体の流れである。ストーリーや目的が無いように、エフェクトを探すためのヒントも無い。そのため、ゆっくりと時間をかけて夢の中を徘徊して探すことをオススメする。エフェクトを持っているキャラクターやオブジェは少しだけ特徴があるため分かるようにはなっている。気になる物があればどんどん調べてみよう。例えば、上の画像のめだまうでは、近くに腕や目玉がたくさん落ちているのだが、目玉と腕が一緒になっているのは一体だけである。

 さて、本題に入ろう。ゆめにっきの何が私を夢中にさせたのか。ゆめにっきを核となる部分をひとことで表すと、妄想的ナラティブである。
 ナラティブという言葉から説明していこう。デジタル大辞泉によると、ナラティブ【narrative】「物語。朗読による物語文学。叙述すること。話術。語り口。→ナレーター」と一番上に出てくる。物語という意味であるがストーリーとは違って話術や口上といった朗読の意味も内包される。
 ゲームでのナラティブの扱われ方を見てみよう。CEDEC2013での講演「ナラティブ」はここにある! 国産ゲームに見るナラティブとは?で簗瀨洋平氏はこう語った。

 ナラティブは時系列が設定されておらず、自分の経験や出来事を通じて語るものであり、そこには意外性と偶然性がある。

 つまり、ゲームプレイの出来事をプレイヤーが経験することで、プレイヤー自身の物語が構築されていく。
 プレイヤーの体験に見い出される物のため、プレイヤーの生い立ちや文化によっても左右される。もっともナラティブが発動するコツとしては、ちょうどよい情報をプレイヤーに提供することだそうだ。

 ゆめにっきはプロローグとエピローグ以外の物語が明確に示されていない。プロローグとエピローグは以下の通りである。

 部屋に居る窓付きがベッドで寝ることによって夢の世界に行き12枚のドアから様々な世界に旅立ってエフェクトと呼ばれる自分の姿を変えるアイテムを集める。全部集めたらマンションから飛び降りて終わり。

 ゆめにっきにストーリーは無いがナラティブが存在する。エフェクトを集めるという行為そのものがナラティブだということ。エフェクトを集めるために夢の世界を徘徊しそこで見たもの出会うものの断片的な情報をプレイヤーが自分の中で自由な解釈でつなげて物語を作っていく。何も脈絡のない事象でさえ、ゆめにっきの大事な要素だと考えプレイヤー達は夢の世界で見たことを自分の物語に落とし込んでいく、これによりプレイヤーたちのゆめにっきの物語が構築されていった。
 さらに、エフェクト以外のゆめにっきに登場するキャラクター達や背景は奇天烈なものから恐怖や不安を煽るものもある。

意外と人気のある吐血幽霊。
赤い通路の場所。通称地獄。

 ここから得たプレイヤーの体験を俯瞰して見て、夢に出てきたキャラクター達を窓付きとの関係性に結びつける。本来何も語られていない事物をプレイヤーの解釈で繋ぎ理解する。ゆめにっきの考察はある種、陰謀論的と言えるだろう。これこそ妄想的ナラティブだと言うことだ。

 ゆめにっきの楽しみ方はゲームプレイ以外にも存在する。それは実況プレイ動画である。私がゆめにっきの存在を知ったのはニコニコ動画であった。
フリーゲームという事からゲーム画面の録画などが他と比べて敷居が低いため、ゆめにっきの実況プレイは多く存在した。それだけなく、恐怖やハプニング急な場面の展開など、ゲームの謎も相まって実況プレイとの相性が良かった。実況者の反応やコメントで考察なのが流れるため、ゆめにっきを咀嚼した状態でこちらに流れてくる。未プレイで何も知識が無くても、その動画を最後まで見ればある程度知ることが出来たのだ。
 実況プレイの何が良いかと言うと、夢と言うのは本来人に共有することは難しいが、人のゲームプレイを通してみると、その人の考えを共有出来る。ゲーム画面を共有しているため、視聴者が同時にその考えを感じ取ることが出来る。つまり、現実でみる夢、うつつの夢といったところだ。

 ゲームプレイから実況動画または、二次創作や考察と多岐にわたる楽しみ方が存在するゆめにっき。私はゆめにっきの実況動画がゲームプレイと同じぐらい好きだ。これを読んでいる方には、ゲームプレイだけでなく、好きなストリーマーにリクエストをしてはどうだろうか?いろいろな解釈を堪能できると思う。

 今はスマートフォンでプレイできるようになっている。興味を持ったのであれば下記のリンクから確認してほしい。

ゆめにっきandroid版

ゆめにっきios版

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