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流れて溶けて

世界はずっとまえから

変わらずに美しいんだな、と

ベランダでつめたいお茶をのみながら

夕焼けの空を眺めて思った

色と空気が深くなる


ひとつの雲が、ゆっくり

空に溶けてなくなるのをみた

でもあの雲を形作っていたものは

明日も明後日も

あの空にあるのだろうな

雲に昨日も今日、も、明日もない

今しかない

昨日の自分は今の自分じゃない

あたりまえのこと

今の自分だけが、紛れもなく自分で

呼吸するたび新しい

それって本当に素晴らしいことで、嬉しいことだなあ、と

夕方の風をベランダであびながら

しみじみ思った


風が吹いて、鳥が飛んで、木の葉が揺れる

空の色がゆっくりと変わり

また地球が1回転する

あまりに緻密につくられた宇宙のなかの

とても小さな一点で

瞬間、呼吸して、宇宙をみあげた


いつか地球を去るのだなあと思って

こんなに美しいのになあ、と一瞬、寂しくなって

あぁ今、目の前にある景色以上に美しいものはないな、と気づいた

今この瞬間に感じることがすべてで
それだけで、もう何も説明はいらない


不要なものが多すぎた

洗い流して、きれいになろう

いつかこの星に身体は溶ける

それまで楽しんで、たくさん感動して、
新しい旅にいつでも出られるように
身軽な自分でいよう


・・・

何でもない日の
夕方から夜にかけて

いつものベランダから
ちょっと旅をした時間