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3分研究ピッチで大切にした7つのこと【GENSEKIで30万円を手に入れるまで】

研究ピッチコンテストGENSEKIが今年も開催されます。
GENSEKIは研究内容/業績を評価するのではなく、学生達の夢・熱意をもとに評価するという特徴があります。制限時間は3分なので、短い時間のなかで研究と熱意の双方を伝えるという難しさがあります。

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私は昨年度の「GENSEKI 2022 THE FINAL」に参加し、賞金30万円を獲得しました。
今年度は登壇者のスライドチェックに携わるということもあり、昨年の発表にあたって意識したことを7つの視点から言語化してみました。

今年のGENSEKIはレギュレーションが異なると聞いたので参考までによろしくお願いします。


1.伝えるメッセージと相手を絞る

まず一番大切なこととして、3分ですべてを伝えようとしないこと、伝えるべき相手とメッセージを絞ることが挙げられます。

本大会では優勝できた私ですが、予選会は2位でした。
予選会では、先行研究・自身の研究・学問領域への貢献・研究への熱意・将来への展望等、全てを話しました。その結果、1つ1つ話題が薄まってしまい魅力的なピッチになりませんでした。

本大会では思い切って『子供が見て楽しいと思える、子供が親や友達に話したくなる』プレゼンに注力し、先行研究の難しい部分は思い切ってカットしました。
というのも、昨年の大会は日本科学未来館で開催されており、多くの子供が見に来ることが予想されたからです。また、GENSEKIとともに多くの子供向けイベントが開催され、主役は子供だと感じたからです。
今振り返ってみると、この方向転換が功を奏したを考えています。

今年は「会いに行ける科学者フェス」内で大会が開催されますが、大会のコンセプトや自身の特徴を勘案の上、メッセージや相手を絞った方が魅力的なピッチになるのではないでしょうか。
(絞ってもよい理由は、3.審査員を信じるの部分で後述します)

当日使った目次に該当するスライド。研究者としては学問的な魅力に注力したくなるが、あくまで将来性やメッセージ性と並列において、学問について話しすぎないように努力した。

2.冒頭30秒に盛り上がりを作る

GENSEKIでは3分ピッチが複数回続きます。昨年では登壇者は10人、つまり観客は3分*10のプレゼンをノンストップで聞きます。当然疲れます。
なので、最後まで聞いてもらうためには、冒頭で引き込む工夫が必要でしょう。特に私は子供向けを意識していたので、冒頭で飽きられたらそこで終わりと考えていました。

私は実験室実験を行うタイプの研究を行っているので、お客さん相手に実験をするという入り方にしました。こうすることで実験結果や今後の展望が具体的に伝わると考えたからです。

私の場合は実験をきっかけに盛り上がりを作りましたが、研究の成果や将来の展望をはじめにもってきて盛り上がりを作るのも面白いと思います。

実験参加者になって実験刺激を評定するという入り方でした

3.審査員を信じる

子供を対象としてピッチをするうえで、審査員を全面的に信頼することも不可欠でした。

子供向けにするために先行研究の紹介や学問的な価値の部分をカットしましたが、これをカットしたために減点をされる可能性について、正直怯えてはいました。
ただ、審査員もサイエンス・サイエンスコミュニケーションのプロですから、カットせざるを得ない部分があること、研究の深いところをカットしてでも伝えたいメッセージがあることは理解してくれると信じることを貫きました。
審査員の信頼を得るためには、まず私から信頼する必要がありますしね。

実際の本大会では、質疑応答で先行研究や学問的な価値について質問をされました。質疑応答で答える時間をもらえたので、ピッチで紹介するよりも自身の研究について深く話すことができました。

研究発表でも質疑応答に話したいことを残しておくというテクニックがありますが、それに近いものと言えます。
もちろん、審査員の経歴や特徴を分析し、審査員向けのプレゼンをすることも大切だと思います。ただ、まずは審査員を全面的に信頼して、自身の一番力強いメッセージをぶつけるのがいいと思っています。


4.お客さんと一緒にピッチを作り上げる

ピッチは私が一方的に話す3分間となりますが、それでも可能な限りお客さんとインタラクティブな時間にしたいと心がけていいました。

具体的には、冒頭の実験刺激を見せる時はお客さんの反応をしっかり見る、ピッチの途中も適宜観客席を見ながらゆっくり/はやく話すということを心がけていました。
特にメインターゲットである子供に対しては、会場のすべての子供と一度は目を合わせるように努力しました。

その成果もあってか、質疑応答の時間には子供が乱入して質問をしてくれるといううれしいハプニングもありました。会場も子供の登場を温かい目で見守る素敵な時間となりました。
ピッチはインタラクティブであるべきという信念を貫いていてよかった瞬間でした。

5.自身の内なる声に耳を傾ける

続いてはテイクホームメッセージで考えたことです。
GENSEKIは研究の内容だけでなく、発表者の夢や熱意も問われる場になっているので、自身の人生を通したモチベーションと研究の内容を結びつける必要があります。

最後のスライドについては発表前日の最後まで悩んでいました。
キャッチー、かつ自分のモチベーションにあう言葉が見つからなかったからです。

スライドに採用した【”×”から始まる科学 "×"から生まれる彩り】という言葉が、自分が大好きな曲を参考にしています。
自分の好きなものは、自分の人生のモチベーションと関わりがあることが多いと思っているので、テイクホームメッセージにメッセージに迷った時は自分の好きなものを頼りにするのもいいかもしれません。

最終的なテイクホームメッセージのスライド

6.原稿を作りすぎない

当日の原稿については非常にざっくり作っていました。
・導入(実験刺激紹介):1分
・仮説紹介:0.5分
・研究の魅力(学問・応用・メッセージ性):それぞれ0.5分
といった感じの時間配分だけ決めて、何を話すかは比較的曖昧な状況で望みました。

4.で紹介した通り、ピッチはお客さんと作るものだと捉えていたので、何を話すかはある程度柔軟であるべきと考えていました。
家で練習やイメトレをする際も、様々なパターン(冒頭の実験刺激に興味を持ってもらえなかったパターン、学問の面白さが求められるパターン等)を考え、この場合はこう、この場合はこう、という感じに取り組みました。
また、本番の最中も、他の発表と会場の反応を見ながら、応用やメッセージ性の部分がウケるかなと想定しながら自分の番を迎えました。

手の込んだ手抜きという言葉もありますが、しっかり準備をすることで柔軟な原稿で本番にのぞめるのが理想的ではないでしょうか。

7.賞金の使い道を考える

最後は余談です。
GENSEKIは賞金が30万円で、私の年は優勝者が総取りというシステムでした。なので、30万円を手に入れたらどう使おうかをよく妄想していました。

研究ピッチで得た賞金なので、自身の研究を加速させるために使おうと決めしていました。もう半分壊れている椅子やプリンターを買い替えたり、手を出せなかったサブスクサービスと契約しよう、お世話になった主催の方々にご飯を奢ろう(これは賄賂ではない)など検討していました。

審査員・主催・観客から期待をかけられていただく賞金ですので、それに応えられる使い道を考えておくことは大切だと思います。


最後に

以上、昨年のGENSEKIを対象に、3分間の研究ピッチで考えたことを言語化してみました。駄文長文を偉そうに失礼しました。
また、GENSEKIの運営のみなさん、スライドチェックに協力してくれた研究室の後輩たち、審査員・観客のみなさまにお礼を言わせてください。

私は別枠で会いに行ける科学者フェスに参加するので、GENSEKIの本大会も参加する予定です。
今年も楽しい発表を聞けることを楽しみにしています。

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