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002 ケツを大切に

繰り返します。
なかなか伝わりませんが、
「シャッターを切る前にタイトルを決めなさい」
とずっと言い続けています。

さらに
「タイトルが決まらないならシャッターを切るな」
と言って、思いっきり「引かれ」続けています。

写真の世界では「トリミング」という言葉を耳にします。
もちろん、トリミング前提で構図を作ることもあります。

南アルプス              トリミング前提

中央アルプス千畳敷から南アルプスを望む写真です。

左は
「夕暮れの駒ケ根の街の後ろにそびえる白峰(しらね)三山と右奥に富士山遠望」
というタイトルとして完結するもの。

右は
山名の文字入れのために、レンズ性能の良い中央で撮った
「南アルプスの山名表示する資料の文字入れ用」
というタイトル。
前回の浜離宮の上下2分割とは全く意味が違います(為念)。
写真の中央部分をトリミングして山名を入れます。
なのでこれが完成形。

中央をトリミングして山名キャプションを入れる

念押ししちゃいます。
「トリミングする」=「タイトルが変わる」です。

北岳(3193m)は日本で第二の高峰。
なので、この写真には日本一と2番目の山が見えています。
さらに仙丈ヶ岳から塩見岳までの6座は全て3000m越えです。
そういう情報を知って撮るのと「山がキレイだね~」と撮るのとは意味合いが全く違うことも「構図」のうちかな(笑)

文字は入る?サイズは?どこに使う?アスペクト比は?色合い?明るさ等々、
最終的にどのような形になるかが想定できなければ構図もへったくれもないのだ!

最終形が見えなければシャッターは切れない

例えば、今の季節「イチゴ」でしょう!
というポスターに使う写真。

全体的に赤いイメージで作るのか?
真っ白の中に真っ赤なイチゴを目立たせるのか?
イチゴミルク色が基調なのか?
たくさんのイチゴなのか?
ドカンとでっかいイチゴ?・・・

それ以前に、ポスターをどこに貼るのか?サイズは?・・・
そんなことさえわからずに、クライアントから
「いい感じでイチゴの写真を」
って言われたら、それほど苦しい撮影はないでしょう。

私は
「写真に失敗は無い!」
と豪語(と言われています)しています。

1.明るさ・・・段階露光するからミスは無い
2.色温度・・・RAWで撮ればミスは無い
3.構 図・・・私が撮ればミスは無い

実は、豪語でも何でもなく、当然当たり前です。
「失敗する可能性」があるとすれば、36枚撮りのポジで5カットしか撮れない頃に比べて「シャッターを切るのに金がかからない」こと。
ぬるま湯に浸かり、真剣さが薄らいだ、甘~い考えが唯一失敗の要因かもしれません。

1と2は理論上、誰が撮ってもミスはありません。

では3は?

実は、ここで「ケツ」が見えてることが最重要ポイントになります。
最終形の媒体の大きさ(大きさで撮り方が変わります。次回予定)、どういう部分(形、色、明るさ、雰囲気…)に使うか、どこに文字が入るか・・・
細かい部分まで含めた最終形(ケツ)が見えていれば、まさしく

「構図のミスは無い!」(断言!)

さて、前回の話には「どのようなアスペクト比でも」というキーワードが隠れています。

四角形であれば「構図は縦横比に左右されない」。
すなわち、富士山を撮るのに正方形か4:3か16:9かシネスコなのかは関係なく正しい構図が作れます。

ある意味、テレビは16:9と決まっているので構図を決めやすい。
最終形の縦横比に合わせて、
「完璧な構図を作れる」
はずです。

テレビの場合

藤堂高虎が築城を始めた今治城(吹揚城=ふきあげじょう)

「今週末は愛媛でロケ!」と頼まれ、否もなくひとっ走りしてきました。
ちょっと遠いので、観光気分で訪れたのが今治城。

ツアー気分でも、悩むのは高虎像と天守の高さ関係と二者の間隔。
本気で撮るなら、イントレ(俯瞰のための足場)組むかどうするか?
今は猫も杓子もドローンだからイントレは死語か・・・
などと様々なことが一瞬のうちに頭の中をブン回ります。

ところが!

テレビという媒体

今治城と高虎にlogo
天守には時刻と天気予報が乗っちゃって、高虎の顔にはロゴがかぶさって…
訳わかんない巨大テロップ(字幕スーパー)で高虎像の看板が読めない…

もはや「構図」なんて死語?
今時のテレビにはそぐわないのか?

もひとつ、レターボックス型黒帯の話です。
最近のコマーシャルなどでも良く見ます。

みなとみらい夜景動画から抜き出し、黒帯を入れたもの

16:9で撮ってきたものを、何の因果か、シネスコ風にトリミング?
画面上下の黒帯は何の意味?

「なんとなくぅ、映画風?にぃ、してみましたぁ~」
 
少しディレクター的な話になります。
「構図的に最終形(ケツ)が想定されているか」
という以前の問題で、

16:9画面に、黒い帯を入れる理由を説明できない

「映画っぽくカッコ良く」と思ってるのかもしれません。
しかし、使える面積を効率的最大限活用するのが宣伝の原点。
黒い帯からは何も伝わりません。
クライアントに申し開きの余地もありません。

テレビなら16:9で最高の映像を見せるのが最低限の義務。
伝える媒体である画面に黒いシャッターを下ろす意味がわかりません。

※シネスコ映画を16:9テレビで放映するとき、元々のアスペクト比に合わせるため上下に黒帯を入れるのとは意味合いが違うことは、もう分かりますね。

「映像におけるケツ」のさわり

映像は台本だけでなく、
BGM、ナレーション、テロップ(字幕スーパー)・・・
さまざまなものが決まっていないと撮れません。

それでもスケジュール的に撮らざるを得ないこともあるでしょう。
その場合は、常識的な場所にテロップが入る構図、入らない構図と2つのカットを撮って対処したり大変な思いをします。

新米ディレクターが
「右と左と両方パン、ズームもインとアウト両方撮ってください」
などと寝言をおっしゃった場合は
「殴ったろか!」
と言わず、にこやかに両方撮って差し上げます。
もちろん、カメラワークも速度を変えたり・・・いろいろ丁寧に。
もはや、テープ代が不要な時代なんだから、山のようにたくさんのカットを撮ってあげましょう。
膨大なカットに閉口し次回から「ちゃんとホン書いてから撮ろう」と思ってくれるかもしれません。

次回は「画面の大きさと構図」について考えます。
最後までお読みくださりありがとうございます。

用語注釈)

※ケツ:業界用語で終わりや最後の意味。撮影の終了時間だったり、ノンリニア編集で「クリップのケツ」は終了点で、先頭は「あたま」です。
ここでは最終的に視聴者に見ていただく形をケツとしています。

※写真に関して追記

テレビと違って写真はアスペクトも何も決まりが無い、
「最終形が見えないから、とりあえず撮ってきたもので考える。」
初心者のうちは、それも一つの方法でしょう。
しかし、映像を志すなら「タイトルを決めて撮る」訓練をしてください。
それでも、最終的にはデザイナーがトリミングするのだから、ルーズに撮っておけばイイというカメラマンが増えるのも「時代だから」と片付けるのが今風!ということでいいんですよね?


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