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地獄でなぜ悪い

祖父が死んだ。92歳だった。

祖父は岐阜に住んでいて、僕が祖父の家に着いた頃には死化粧をして白い棺桶に入っていた。
その顔は酷く痩せこけていた。その棺桶の中の老人が、僕の記憶にある元気な祖父を同一人物だと認識出来なかった。
僕はcsvファイルを連想した。
何度もアップロードしてもエラーを返してくるcsvファイルだ。正しいはずなのに僕のcpuはその処理を受け付けてくれなかった。


葬式では老婆僧侶の奇妙なリズムの経を唱えていた。僕はそれをBGMに元気な頃の祖父の写真を眺めていた。(その写真は一度のアップロードですんなりと受け入れられた。)
その間延びした悲しい時間で、漫然と僕が感じたのは「死への憧れ」であった。
僕の祖父はこれから先、この世のあらゆる苦しみを感じなくて良いのだなと思った。
彼は新自由主義のことで深く悩んだり、嫌いな奴に頭を下げないで済むのだ。

好きな映画のセリフに
「クロエが死んだの。死ぬなんて彼女は利口だわ」
(ファイトクラブ 1999年 より)というセリフがある。
僕のオンボロcpuは不気味な経の様に、そのセリフをリフレインし続けていた。
その最中、僕らは地獄にいるのかもしれないな。と感じた。

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