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囀る鳥は羽ばたかない 57話 矢代の状況

性被害関連の内容が苦手な方はご遠慮ください。
軽口叩き気味の感想は「57話感想」 にあります。


57話 矢代の状況

私は見ない振りして触れないつもりでした。
感想と言うよりも、私なりの状況確認です。

性欲の中の好意を拒否し、性別に葛藤する矢代

8話で矢代は救急車内で回想しますよね。義父からの初めの被害を。
"可愛いなぁ"、”本当は女の子なんだ”、”坊主が女だから"という言葉とともに、幼い矢代がねじ曲げられた出来事を。

まずここで”自分は男である”を”?”とされて、女扱いをされました。
そして”可愛い奴だ”と好意を向けられながら、矢代は犯されました。

これがすべてですよね。ここが始まりです。もう少し見ていきます。

三角への「アンタら基本男を好きになるとかないでしょ(10話)」は、蔑まれる=好意を持たれないから安心していた。でも、兄キが矢代に好意を向けたことで「女にするみたいに扱われ 女にするみたいに… 向けられる性欲の中の好意に 吐き気がした(10話)」と。

矢代側は兄キに好意も無いのでただただ苦痛です。「痛いと吐き気が治まるな(29話)」痛みにより、好意を打ち消しているのでしょう。

そして、好意を向けて丁寧に抱く百目鬼。ただ、矢代側にも好意があります。とは言え、そう簡単に受け入れられないだろうと。
57話ラストの"矛盾"を自覚している場面ですね。


次に、百目鬼とのやり取りを見ていきます。

百目鬼を好みど真ん中と言い「男が好きなわけじゃねーとか言いながらやっぱあんだよなそういうの ガッカリだわ(3話)」と。惚れる人間(影山)や好みの人(百目鬼)は男だと。

そして、「女じゃねぇんだから丁寧にやるな…っ(21話)」です。これ、矢代がよく陥る状況で、百目鬼がしつこいって言われる時ですね。大事に丁寧に扱う事は女に、女だけにする事だ、と矢代は思っていますよね、度々。

百目鬼の「脚の綺麗な人が好きです(5話)」では矢代の切ない表情が物語っていますね。女のタイプやっぱあるんだな、自分は百目鬼が好みのように、と。

百目鬼のタイプに自分は当てはまらない。いや、矢代も足は綺麗なんだけども。映画館で巨乳は嫌いじゃないと聞いた際も、矢代は心の中でモヤっとしたのではないでしょうか。

そして今、百目鬼には女がいる(と思っている)。

高校時代の矢代は、好きになった人間は”男”だという絶望を知りました。
好きになるのは男、セックスしたいのは男。でも、自分は男。
そして、自分が女扱い(丁寧に)されるのも違う。

そこも葛藤し続けているのではないでしょうか。


14話で竜崎との会話でも、"女になりたいわけではない"と矢代は言います。この回想場面ね、本当に素敵ですよね。好きです。
この頃の竜崎さんスピンオフを読みたくなります。


性欲自体の否定

「お前は綺麗だからインポんなったんだ…」、「…なのに俺が(24話)」とこの後は”汚した”と繋がると勝手に思っています。
綺麗だった百目鬼を、自分が性欲を持たせて汚したかのように。

矢代は性欲を汚いものだと捉えていますよね。
矢代にしたらフニャチンの絶大なる安心感
57話ラストではからだが感じてしまうことに抵抗もある。根が深い。

なお、こちらのメキさんはどうでしょうかね。

「守りたい 大事にしたい 傷つけたくない」「なのに 汚したい」と4年前の百目鬼。16話のあのすごくて素晴らしいやつの後ですね。ふたりともさ、性欲を汚いものと思ってる節があったかなと。
百目鬼は乗り越えていそうですかね。

「57話感想」

レイプの認識

矢代は百目鬼の昔の話を聞き、”女に犯された”と認識しています。矢代自身のことも葵に”犯された”と伝えますが、自分のことに関してはすこぶる軽いんですよね。

「女は大変だな 男ならケツがちょっと切れるだけで済むのに(28話)」と矢代は軽やかに影山に言う。ここでも”自分の傷は大したことがない、男だから”とも思っていますよね。影山がすかさず否定したの良き。

矢代はさ、47話で義父と井波からの自分への行為がレイプだったと認識していますよね。今までも理解はしていましたけど。自分に対しての行為の捉え方に変化がありましたね。

義父も、百目鬼の父も、保健医も。犯罪者。
ろくな大人がいねぇなぁ!(神谷口調)


希望はどこに

矢代は強い人だ。自己防衛をしてきた弊害で幼いところもあるが、決して弱い人ではない。
笑えないし、滑稽でもないし、因果応報でもない。
成長しないなんて、家畜だなんて言わないでほしい。

7話で影山の話を聞き、心の中で"昔の俺より自分てもんを分かっている"と。今はより自分を見ようとしており、どうにかならないのかと内面ではもがいている。"俺を可哀想だと思ったままなんだな"とも。

この辺りは「57話感想」の"だから私は悲しまない"に書きました。矢代の根深い闇の中でも希望を持てたらと思い書きました。あわせて読んでいただけたら嬉しいです。


今回は「矢代の状況」の確認作業です。私は願ったり待ったりして、矢代の歩みを受け入れるだけです。
47話を読んだ時に、ご飯食べられなくなって、やたらと涙出てくるようになった私はもういない。はず。


あとさ、いつも思ってて…私が軽率に矢代さんを乙女扱いするのと、メキしつこい扱いするの。背景無視して私は軽口叩くのよね。今回重めだけど、背景に触れることができてよかったです。

んー、"軽"って字を多用しても、テーマが重いのは変わらないからな、私。


57話どめき関連(なにそれ)の感想は、次回記事にします。
こちら「57話どめき感想」にしました。今日はここまで。

(引用元:ヨネダコウ,『囀る鳥は羽ばたかない』,大洋図書)

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