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「孤独のグルメ」を観る男の魂 ~Season1 第9話 世田谷区下北沢の広島風お好み焼き~

 こんにちは、伊波です。

 前回からかなり空いてしまいました。すみません、絵のスランプが原因です←

 今回は第4話「千葉県浦安市の静岡おでん」に続く、“異郷の地でご当地グルメを味わう”シリーズ。地域特有のグルメを現地で食べるのはもちろん美味しいですが、全く違うエリアで食べるご当地グルメも好きです。地方の方が異郷の地に移り住み、自身の郷土料理の店を出す。何だかそれだけでドラマがありますよね。


あらすじ:ちょっとだけ小劇場っぽい

 先輩の吉原が主宰する演劇を観に来ていた井之頭。いつの間にか寝ていたらしく、不思議な夢を見る。吉原に起こされた井之頭は、主役を務めた女優の篠宮がいなくなったという話を聞く。何となく心配になりつつ下北沢の街を歩いていたところに、篠宮の姿を見つけた井之頭。道中、食べ物の誘惑に負けながら彼女の後を追うのであった。

五郎さんと下北沢

 五郎さん曰く「相変わらずごちゃごちゃした街だ、そこがいいんだけど」という下北沢。続けて「駅からしてややこしい構造だ」とも呟いており、いつもに比べるとやや淡泊な感想です。
 劇中は小劇場からスタートし、たこ焼き屋や肉巻きおにぎりといった軽食のお店、そしてこじゃれた喫茶店と、私みたいなミーハーが想像できる“THE下北沢”が描かれています。これだけ分かりやすいとありがてえ。

所感1:何かがおかしい

 真っ暗な空間の中、ピンスポット下に置かれた一組のテーブルと、席に着く五郎さん。そして突然目の前に現れるたこ焼き、そして肉巻きおにぎり(ニックンロール)をご機嫌な様子で頬張ります。しかしなぜか、全然腹に溜まりません。首を傾げつつ、続いて現れたクレープに舌鼓。
 すると、両脇から「五郎……五郎……」と呼び掛ける男性の声が。向かって右側は中年(松本格子戸)、左側は青年(印南翔太)のようですが、果たして誰なのか。「やっぱり何かがおかしい……」そう呟きつつ、五郎さんはクレープを一かじりするのでした……。
 腹には溜まらないけど味はしてるのかな。やけに幸せそうな五郎さんに注目。

 ふと気づくと、そこは小劇場の観客席。そしてずっと五郎さんを呼び掛けていたのは劇団の主宰者・吉原(佐藤正宏)でした。先ほどの暗い空間は五郎さんの夢の中っだったわけです。ひょっとすると、寝落ちするまで観ていた劇の内容が混ざっていたのかもしれません。これは想像ですけど。

 「そんなにつまんなかったか」と呆れる吉原に対し、慌てて主役の女優の笑顔を褒める五郎さん。その言葉を聞くとまんざらでもない笑みを浮かべ「五郎らしい感想だな」と漏らします。
 そこへ劇団員の一人が「篠宮がいません!」と飛び込んできます。どうやら、吉原が期待を込めてかけた叱咤が主役女優・篠宮(朝倉あき)の自信を損なわせてしまった様子。吉原は五郎に礼を告げるなり、慌てて劇場を飛び出していきます。

 劇場を後にした五郎さん。いつもの調子で「さあ何を食おうか」と思案しますが、そこで偶然、一人とぼとぼと歩く篠宮の姿を見つけます。珍しく「主役の子じゃないか……大丈夫かな……」と心配そうな面持ちで後を付けてみることに。すると彼女は、たこ焼き屋、そしてニックンロールのお店の前で立ち止まります。見ると買わずにはいられない五郎さん、たこ焼きを頬張り、ニックンロールを頬張りつつ、「美味い、彼女、なかなかやるな」と感心しつつ見逃さないよう後を追います。でも、食べる行為と他のことを両立できないので、五郎さんは篠宮の姿を見失ってしまいます。ま、そうですよね。

 さて打つ手なしかと思っていたところへ、当の篠宮が声をかけてきます。後をつけられていたのに気付いていたようです(そりゃそうっすよね)。五郎さんが素性を明かし、「劇団の皆さん、心配してますよ」と告げると、篠宮は泣き崩れてしまいました。
 そうして喫茶店に入った二人。コーヒーを飲み、ようやく落ち着いてきた様子の篠宮。

篠宮「何も聞かないんですね……」
五郎さん「……何を聞けばいいんですかね」
篠宮「……普通はそういうことは聞かないと思うんですけど」

 どうもプライベートで込み入った話になると口不精の話下手になる五郎さん。しかしそれが人を引き付けるものとなっているのかもしれません。
 そして篠宮は、自分への評価に対する不安、演技に対する自信がないことからくる恐怖などを告白します。
 色々と言葉を探した五郎さん、先ほど吉原に話した笑顔の良さを伝え、たこ焼きとニックンロール(食べかけ)を渡して店を後にするのでした。

所感2:鉄板はステージだ!

 「次は店探しだ」と自分の救済へ向かった五郎さん。“広島のお好み焼・鉄板焼 HIROKI”の看板を見つけ、いいじゃないかと入店します。
 「やっぱり、広島のお好み焼きと言えば、麺が入るよなぁ。色々選べるんだなぁ。まさに、“お好み”の“焼き”」と妙な言い回しで感心しながらメニュー選び。他の客の注文に聞き耳を立てて人気メニュー情報を知ると、所謂全部乗せ的なお好み焼きのHIROKIスペシャル(そば)鉄板焼きのタコ(広島ネギ&ゆずポン酢)ホタテ(ガーリック焼)カキ(香草バター焼)をオーダーします。海の看板役者クラス3つを頼んだことに「お好みの物を、お好みに食べてこそ、お好みの、焼き」と不敵な笑みを見せます。ちょっとくどい。

 空腹を満たせる環境が整ったことで再び篠宮の胸中を案じた五郎さん。そして場面は喫茶店に残った篠宮へ移ります。
 しばらく思い詰めた表情の篠宮でしたが、五郎さんが置いていった食べかけセットがすべて自分が足を留めた店のものだと気付いたのか、表情が綻びます。無言でたこ焼きや肉巻きおにぎりを頬張る篠宮の表情は、次第に柔らかくなっていくのでした。よしよし。

 それから場面は再度お好み焼き屋へ。すっげー棒読みな店員さんの声(失礼極まりなし)と共に、鉄板焼き3種が揃って登場します。三種三様の味付けにご満悦の表情を浮かべた五郎さんのもとへ、続けてメインのHIROKIスペシャルがお出まし。山盛りにトッピングされたシーフードに「すごい」と驚嘆しつつ、ほふほふと一口。「ネギだけじゃない、キャベツも甘い」とニンマリします。このシーン、切り分けたお好み焼きを皿に乗せ、箸で一口大に切り、口にするという一連の行為がちょっとブツ切りになってるのが今のスタイルと違う雰囲気。尺的な問題かな?
 二切れ目はマヨネーズをたっぷりかけて味変。「お好み焼きはこうでなくちゃ」と納得の表情でもりもり食を進めていきます。うん、わんぱく。
 「鉄板焼きって、何ていうか、ライブ感あるんだよなぁ。一人なのに頭の中、いちいち大歓声というか。鉄板は、ステージだ。舞台だ」と名言も飛び出します。

 大歓声のステージを終え、店を後にした五郎さん。通りかかった小劇場の入口に、笑顔で観客を見送る篠宮の姿を見つけ「最高の笑顔だ」と満足げに帰路へ着くのでした。

今回のマニアックポイント

>>今回のズームアウト

 精一杯の言葉で篠宮を励まし、喫茶店を出た五郎さん。ふと「あっ!」と声を上げ、「そうだった、俺は、腹が減っていたんだ」と忘れかけていた本能を呼び起こしたところでズームアウト。左手にコートとカバンを持ち、ザ・スタンダードスタイルなズームアウトでした。

>>今回の珍客

 今回訪れたお好み焼き屋の先客たちは出番が控えめで、“メニューに添えられた番号でオーダーする”という情報を五郎さんに分からせるという役割のみ。ということで、今回は個人的に物凄く気になった“声”にクローズアップします。
 その、気になった声とは喫茶店でのワンシーン。五郎さんの食べかけセットを篠宮に渡したときの「冷めると美味しくないかもしれないんで、あったかいうちに…といってもここじゃムリか…」というセリフへの、ちょっと遠いボリュームで「いいよ」という返事です。まあ、五郎さんも店員さんがいると思しき方向に視線を配っているので自然なやり取りと言えば自然なんですが、何かすっごいセットプレー感あるな、と(笑)。何を気にしてるんだといえば、それまでですけど。ええ。

ふらっとQUSUMI

 「作るのを見ながら飲むってのは最高ですね!」と鉄板焼きの醍醐味を満喫する久住さん。最初に頼んだのはカキの広島ネギとゆずポン酢で、どっさり乗った広島ネギと新鮮なカキの組み合わせにご満悦の様子です。
 続くお好み焼きの調理中は、3枚同時に焼き進める様子をビール片手に実況。調理の様子って見てるだけで楽しいんですよね、なぜだか。
 そんなこんなで出来上がったお好み焼きは、細く刻んだレタスがどっかり乗った一品。レモンが効いたお好み焼き、どんなものなんだろう。

出演者について

 今回のキーとなる若手舞台女優・篠宮を演じた朝倉あきさん。2006年に受けた第6回東宝シンデレラオーディションを機に女優のキャリアをスタート。その後2010年にはNHK『とめはねっ!鈴里高校書道部』で主演を務めました。さらに同年、NHK・朝の連続テレビ小説『てっぱん』に出演、ヒロイン・村上あかりの親友である篠宮加奈を演じました。おそらく今回の役名は、この篠宮加奈から来ているものと思われます。だって、舞台は広島お好み焼きのお店ですし。

 本編の冒頭、暗闇から「五郎……五郎……」と呼び掛ける謎の男。二人いるうちの向かって右側、先に呼び掛けてくる方の男を演じたのが松本格子戸さん。この方、役者としても活躍しているコメディアンとのことですが、主戦場はストリップ劇場。劇場での司会業などを務めているそうです。

 そして篠宮が所属する劇団の主宰者で、五郎さんとは旧知の間柄である(と思われる)吉原を演じたのは佐藤正宏さん。WAHAHA本舗の元座長で、80年代半ば~90年代にかけては東映不思議コメディーシリーズやスーパー戦隊シリーズにゲスト出演していました。現在も俳優としてテレビドラマなどで活躍中です。

クレジット

脚本:田口 佳宏
監督:溝口 憲司
音楽:久住 昌之、Pick & Lips、フクムラサトシ、河野 文彦、Shake、栗木 健、戸田高弘
タイトルバック:「JIRO's Title」(作曲:久住 昌之)
松重“五郎”豊のテーマ「STAY ALONE」(作曲:久住昌之、フクムラサトシ)
撮影協力:HIROKI、株式会社あらや 湘南はまだこ、ニックンロール、マルシェ下北沢商店会、聖葡瑠、オレンジ、OFFICE101

【出演】
井之頭五郎:松重 豊
篠宮:朝倉 あき
五郎と呼ぶ男1:松本 格子戸
五郎と呼ぶ男2:印南 翔太
喫茶店マスター:坂本 敏夫
女将さん:佐藤 貞子
息子店員:八木 善孝
カウンター客1:山形 治輝
カウンター客2:納本 歩
カウンター客3:藤澤 雅章
カップル・男:内田 いさお
カップル・女:鹿瀬 美香
客を見送る劇団員:島田 篤志
劇団主宰者・吉原:佐藤 正宏
オープニングナレーション:柏木 厚志

今回の名言

「やっぱり何かがおかしい」
 物語冒頭、五郎さんを取り巻く不可思議な状況に首をかしげて呟いた一言。頭の中はクエスチョンマークだらけのはずなのにちゃんとクレープを頬張るのは忘れない点に注目。
「ラストの主役の子の笑顔、とっても素敵でした」
 演劇の上演中、ずっと寝ていたんじゃないかと怪しむ吉原に対して五郎さんが述べた感想。これに対する吉原の「うんうん、それなんだよな」という表情とセットで良し!です。
「相変わらずごちゃごちゃした街だ、そこがいいんだけど」
 下北沢を評した五郎さんの一言。何というか、人の息遣いが見える街が好きなんだろうなぁ。
「これも美味い。彼女、なかなかやるな」
 
肉巻きおにぎりを一口頬張った五郎さんの一言。いかんせん、篠宮を尾行している最中なのでちょっち情けない。これが五郎さんの魅力なんだけど(精一杯のフォロー)。
「…何も聞かないんですね」
「何を聞けばいいんですかね」
「…普通は、そういうことは聞かないと思うんですけど」

 喫茶店での篠宮と五郎さんのやり取りから。ちょっととんちんかんというか、五郎さん、そういうとこあるよねぇ。
「これ…食べかけなんですけど、よかったらどうぞ。美味しいですよ」
 自分で食べて美味しいと思った物を人に薦めるのが五郎's スタイル。たとえそれが食べかけであったとしても(固い信念)。
「いろいろ選べるんだなあ…まさにお好みの、焼き」
 食の求道者だからこそ成しえる、お好み焼きの解体と再構築。これによってお好み焼き道を追求するのだ。知らんけど。
「お好みの物をお好みに食べてこそ、お好みの、焼き」
 食の求道者だからこそ成しえる、お好み焼きの解体と再構築。これによって真のお好み焼き道を究めるのだ。知らんけど。
「このタコ、ぷりぷり。プリダコだ。美味い、プリダコ、美味い」
 何だか今回はセリフのリピートが多い気がする。これって、小劇場的なこと?(偏見)
「思った通りだ、海のミルクとバターが合わないワケがない」
 カキの香草バター焼を食べた五郎さんの感想。「バターと合うカキ→海のミルク」説、爆誕。
「あれ、絶対オレのだよなぁ……ほら、来た!アタリだ!」
 食い気MAXな五郎さんの目は確かに野獣の目をしていた。
「ほふほふ」
 熱いものを頬張る時は心の中で唱えよう!
「ネギだけじゃない、キャベツも甘い」
 イカだエビだとシーフードがどっさりのお好み焼きで、敢えて脇を締めるネギやキャベツの甘みに思いを馳せるのが五郎's スタイル。これぞまさに食の求道者だ。
「鉄板焼きって、何ていうか、ライブ感あるんだよなぁ。一人なのに頭の中、いちいち大歓声というか。鉄板は、ステージだ。舞台だ」
 今回を象徴する一言。鉄板の熱いステージに、我々はスタンディングオベーションだ。
「お好み焼き。良い名前つけたもんだ。お好みを、お好みに」
 店を後にした五郎さんの感想戦的な一言。お好み焼きの解体と再構築によって真のお好み焼き道を(略)

本日の五郎さんのお食事

【湘南はまだこ】/【ニックンロール】
・たこやき・ニックンロール:ちょっと冷めてもおいしさ変わらぬ優れもの

【HIROKI】
・タコの広島ネギとゆずポン酢:目にも鮮やかな山盛りネギのその下で ぷりぷりタコがかくれんぼ
・ホタテのガーリック焼:ガーリックがどすん!ガーリックがジュワーッ! ホタテのうまみを引き立てる
・カキの香草バター焼:香草バターが食欲をそそる カキはもちろん広島産
・HIROKIスペシャル:大ぶりの具材がてんこ盛り! 見た目も味もまさにスペシャル

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