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「孤独のグルメ」を観る男の魂 ~Season1 第5話 杉並区 永福の親子丼と焼うどん~

 こんにちは、伊波です。何となく深そうで実はそんなに深くもない感じのこと、サラッと言えるようになりたい。
 このシリーズもあっという間に5回目。もう一息で半分というところです。ちなみにトップで使っているイラストは私が描いていますが、実を言うとノートPCのタッチパッドで描いているため、線がめちゃくちゃ不安定。いずれこの辺もどうにか解消したいなぁ。


あらすじ:何をしてもうまくいかない時は

 この頃、井之頭五郎(松重豊)は何をしても上手くいかないと落ち込み気味だった。突然のキャンセルが続いたり、商品到着の遅延が発生したり、仕事の態度に難癖をつけられたり……。私用の約束すらドタキャンされた五郎は気分転換にと、釣り堀に入る。そこでもさっぱりだった五郎に、怪しい釣り師(螢雪次朗)が声をかけてきた。

五郎さんと永福

 「静かで落ち着く街だ…意外に飯屋もある」と街並を見て感想を漏らした五郎さん。あまり訪れる場所では無さそうですが、特に悪い印象ではありません。しかし今回の五郎さんはゆっくりと街の風景を楽しみ、良さげな飲食店を探す気分にはなれない様子なのでした。

所感1:貴重?ノーネクタイ五郎さん

 「孤独のグルメ」と言えば仕事の移動中、もしくは仕事終わりでの至福のひと時を描くのが定番。それだけにこの回の私服姿は、それだけでいつもとは違う雰囲気を感じさせます。とはいえ、いつものイメージから大崩れしない、いわゆるカジュアルフォーマルな感じで、さすが五郎さんったらプライベートもスマートだわ~と感じた人は少なくないのではないでしょうか。

 この回の珍しいところはもう一つ、怒っている男(塚田龍二)から受けるクレームの嵐。不手際があったとはいえ、「井之頭さん、仕事舐めてんじゃないの?」とは何とも手厳しい言葉です。しまいには「今回はサービスでしょうよ?」と足元を見られたような物言い。こんな風に怒鳴られ嫌味を言われとやり込められてしまうのは、他の回ではほとんど見たことがありません。

 食事のシーン以外がどれほど注目されているかはアレですが、なかなかにレアな五郎さんが描かれた回ではないかと感じます。

所感2:一つ教えとこうか

 この回のキーパーソンは何と言っても怪しい釣り師(螢雪次朗)。釣り堀でもなかなかツキが来ない五郎さんに「そんなに焦ってちゃあ釣れるモンも釣れねえよ」と声をかけたのにはじまり、食事シーンでも度々「一つ教えとこうか」と割って入り、金言を与えます。また、五郎さんの表情の変化を的確に言い表すセリフもあり、この回の狂言回し的な役割も担っています。
 ときにイケメンのバイト(横井翔二郎)も巻き込んだ話もあったり、主役を食いかねない存在感が見事です。

 さて、今回五郎さんが頼んだメニューは親子丼焼うどん
 まずは焼うどんに手を伸ばした五郎さん。太めの麺、キャベツ、豚肉、カツオ節、そしてアクセントの紅ショウガ。酒の肴にも良さそうな味の濃さがビジュアルだけで伝わってきます。勢いよくすすり、味に頷きながらまた一口と食べる姿がたまらん。腹減るぅ。
 続いては親子丼。ひとくち食べると卵の甘さが口の中に広がります。「親子丼って冬が似合うな」は名言ではないでしょうか。こちらも掻きこむように少し頬張ると、今度は五郎さんお得意の合わせ技タイムへ。そう、焼うどんをおかずに親子丼を掻きこむという破天荒な食べっぷりを見せてしまいます。味がケンカするとか、どちらかの味がもう片方の味を消しちゃうとか、そういうことは無いんだろうか。いや、無いんだろう。胃に入れば同じ、という話でもなく、美味いんだろうな。
 ラスト、胃袋にまだ余地があるのを確かめて、デザートのおしるこへ。釣り師のおじさんが「べらぼうに美味い」と太鼓判を押した味には五郎さんも納得、「身も心もリセットされたぞ」とご満悦の表情です。
 この一連のオーダー、見事に炭水化物3連単なワケですが、へこんだ気持ちをアゲるにはこのくらい思い切った食事がいいのかもしれません。

 帰り際、公園で仲睦まじく遊ぶ父娘を見かけます。よく見ると父親はあの、回想で怒っている男でした。彼の優しい表情を見て、五郎さんは釣り師のおじさんの言葉を噛みしめ、そしてなぜか最後は「親子丼って、あったかい響きだなぁ」と別次元の方向へ思いを馳せ、公園を後にするのでした。

今回のマニアックポイント

>>今回のズームアウト

 釣り堀ではボウズだった五郎さん。残った餌を堀に投げたところで空腹感が増し、「なんだか俺も、急に腹が減ってきた」とズームアウト。前回に続き、座った姿勢でのズームアウトでした。

>>今回の珍客

 釣り堀で五郎さんの様子を見て以来、食堂の中でも何かにつけて「一つ教えとこうか」と声をかけてくる怪しい釣り師。“釣りは引っ掛けるんじゃあない”と格言を話しますが、その前フリに使った「サギやナンパは引っ掛けるって言うだろ」という例え話の方が五郎さんとイケメンのバイトにヒット。「引っ掛けるじゃなかったら何て言うんですか?」というバイトの問いかけに、釣り師のおじさんはどう答えるか……? たぶんこの回のハイライトです(違う)。
 そんなこんなで食事を終えた五郎さんが去り際、釣り師に今日の釣果を尋ねます。すると釣り師は「いや、今日はボウズだった……ハハッ、まあそういう日もあるよネ」とちょっと照れくさそうに答えるのでした。

ふらっとQUSUMI

 久住さんのコーナーは釣り堀の入口からスタート。大きく書かれた“呼鈴”の張り紙、古くなって文字の一部が取れた案内表……たたずまいが何ともノスタルジックで、21世紀の東京だとは思えません。
 食堂では缶ビールと田楽をオーダー。Season1はビールのオーダーに躊躇もゴマカシもないのが良いところ。しっぽり温まったところで、ラーメン、さらにオムライスをオーダー。ラーメンは濃い醤油のスープにもやしがどさっと乗った昔ながらの雰囲気。そしてオムライスは、久住さん曰く「(卵焼きが)まっ黄色じゃない、ムラのあるところが素朴でいいですね~」という、家庭の味を思わせる仕上がりに。素っ気ないラーメンとか、家庭的なオムライス、いいですよねぇ。

出演者について

 謎の釣り師として一方的に名言・珍言を投げかけてきたのは、螢雪次朗さん。二時間ドラマやウルトラマンシリーズ、牙狼、東映不思議コメディーシリーズ……多方面に出演歴がある大ベテランで、顔を見れば「あっ、あの人!」と思う方もきっと多いはず。今年で71歳を迎えるそうですが、今年もドラマに映画にと大活躍していらっしゃいます。

 “怒っている男”という何とも言えないキャスト名で出演されたのは塚田龍二さん。こちらはコワモテ役から時代劇で殺陣もこなす役者さんで、最近だと「シン・ゴジラ」にも出演されていたのだとか。

 やる気があるのかないのか掴みにくい、しかし時には釣り師の話にも興味津々な食堂のイケメンバイトを演じた横井翔二郎さん。アイドルの出身かと思っていたら、青年座の映画放送部所属なのだそう。2.5次元舞台など、舞台での活動も多く、これからTV出演も増えてきそうな役者さんです。

クレジット

脚本:田口 佳宏
監督:宝来 忠昭
音楽:久住 昌之、Pick & Lips、フクムラサトシ、河野 文彦、Shake、栗木 健、戸田高弘
タイトルバック:「JIRO's Title」(作曲:久住 昌之)
松重“五郎”豊のテーマ「STAY ALONE」(作曲:久住昌之、フクムラサトシ)
撮影協力:武蔵野園、杉並大宮八幡宮、都立和田堀公園、カレー&バー specie、東京都杉並区、OFFICE101

【出演】
井之頭五郎:松重 豊
怪しい釣り師:螢 雪次朗
五郎の常連客:境 博
怒っている男:塚田 龍二
釣り堀受付のじいさん:関根 庄次
イケメンのバイト:横井 翔二郎
店のお父さん:森口 一光
店のお母さん:長谷川 久子
女の子:蓬田 裕理
オープニングナレーション:柏木 厚志

今回の名言

「お賽銭、少なかったかなぁ……」
 この日の元々の予定だった常連さんとの待ち合わせもドタキャンを食らってしまった五郎さんのボヤキ。案外、賽銭の額とか気にするのね。
「あぁ……この感じ、忘れていた。いいじゃないか」
 ふと目に留まった釣り堀に立ち寄り、釣りを楽しむ五郎さんのつぶやき。少年時代、祖父と将棋を指す以外には釣りも楽しんでいたのでしょうか。
「センス、無いのかなぁ、釣りの」
 娯楽ではSeason1 第2回の将棋に続き、釣りも盛大に外してしまった五郎さん。何が向いているんだろうか。
「俺の腹は今、いったい何腹だ。落ち着いて、自分の腹の声を聴くんだ……やっぱり無理! 駅までもたない」
 空腹を満たすことになると超人的な能力を発揮する……のではなく、いたって常人的な五郎さんであることに安ど感。
「ここでいい、いや、ここがいい。いいに違いない」
 店を決めるときには、時には強迫観念も必要なんだなと。
「喜びや悲しみは心に染み込むが、怒りってのは心から溢れ出ちまう」
「そこまで怒ってなかったと思うが……」

 食堂にいた怪しい釣り師が最初に発した“一つ教えとこうか”と、それに対する五郎さんのハート内ツッコミ。空腹時でもツッコミの速さは天性のものがある。
「アンタ、釣りは魚を針で引っ掛けるモンだと思ってないかい?サギやナンパは引っ掛けるって言うだろ?あれはな、邪念が透けて見えっから良くねえンだよ。釣りも一緒だ。引っ掛けるじゃあダメなんだよなぁ……」
 半信半疑の五郎さんも、その場に居合わせたバイトのイケメン君も食いつかせた、釣りの極意に迫る釣り師の一言。迫ったまま通り過ぎるとは思いもよらなんだ。
「良い面も悪い面もどっちもあって人間だァ」
 スルメ(あたりめ)を引き合いに、釣り師が説いた3番目くらいの教え。五郎さんは「イカ……人間……一緒……」と初めは合点がいっていなかった様子。空腹だもん、仕方ないね。
「久しぶりの親子だ……!」
 無論、親子丼の話である。
「親子丼って、冬が似合うな」
 はい、冬の季語、親子丼、認定!
「うん、これもアリだ、大アリ、オオアリクイだ!」
 焼うどんをおかずに親子丼を掻きこむ禁忌を思いついた五郎さんが、実践後に漏らしたつぶやき。オオアリクイって写真で見るとちょっと怖いですよね。
「今すごく、いい顔してる」
 親子丼と焼うどんをたいらげた五郎さんの表情を見た釣り師が投げかけた一言。何だかスポーツでもやり通したような言葉だが、単に一食食べ終えただけである。
「いや、今日はボウズだった。ハハッ、まあそういう日もあるよネ」
 自然体で照れ隠しをする釣り師のおじさんがかわいらしい。
「コメ、うどん、もち……とんだ炭水化物祭りを開いてしまった」
 食後、公園をブラつく五郎さんのボヤキ。こういの、だいたい食後に気付きますよね。美味しかったから問題ないですけど。
「親子か……しかし、親子丼って、あったかい響きだなぁ……」
本日のシメ。そこは親子で良くないか。なぁ。

本日の五郎さんのお食事

【つり堀 武蔵野園】
・焼うどん:ソースと絡まった ちょっと太めのうどん そのうえでカツオ節たちが踊っている
・親子丼:器は四角だが 味は甘くて まぁ~るい感じ
・みそ汁&お新香
・おしるこ:ほどよい甘み 小豆控えめ おもちがドーン!!

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