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「孤独のグルメ」を観る男の魂 ~Season1 第1話 江東区 門前仲町のやきとりと焼きめし~

 あっ、もしかして2022年初投稿!こんにちは、伊波です。

 実は、と言うほどでもありませんが、「孤独のグルメ」が好きです。漫画は未所有なので、今はもっぱらドラマの方。昨年放映していたSeason9も、TVerでしっかり観ました。……が、よくよく思い出してみたら、そもそも最初のシーズンをちゃんと観ていないな、他にも観ていない回がたくさんあるなといったことに気付いてしまいました。よし、ならばここはいっそのこと、Paraviを入れてガッツリ観まくってやる!と決断。そんなところで、感想日記的なものを綴ってみたいなと思います。いつまで続くか分かりませんが、どうぞお付き合いくださいませ。 ※以下、すこぶるネタバレします


あらすじ:すべてはここから始まった

 商談の連絡を受け、門前仲町にやって来た貿易商の男、井之頭五郎(松重豊)。相手のカフェの店長(山村美智)は、とにかくおしゃべり。次から次へと話題が変わり、思わず五郎は面食らってしまうのだった。
 何とか話を切り上げてカフェを出た五郎は、気になっていたというアンティークショップへ。そしてさらに富岡八幡宮でお参りをしたところで、どうしようもないほどの空腹感に襲われるのであった――。

五郎さんと門前仲町

 冒頭、「何年ぶりだ?」とつぶやき、続けて「学生時代に深川祭りを見に来た時以来か…」と回想しているように、あまり馴染みではない様子。今回訪れたのも、3時間前に商談の連絡を受けたという唐突なものでした。ただし、「近くに一度見てみたいアンティークショップがあった」ともつぶやいていることから、機会を見つけて訪ねようとしていた場所であることがうかがえます。

所感1:13分余りのプレゼンテーション

 記念すべき初回ということで、五郎さんのキャラクターや世界観をプレゼンする回、といった内容。幕開けのナレーションが説明的で、今のような独白感がちょっと薄い。まだカタチが出来上がっていない感じもあり、かえって新鮮です。
 雰囲気良さげな路地に嗅覚を示す五郎さん。おばあちゃん(宮内順子)が手持ちのミカンをこぼしたのを見つけて、サッと駆け寄る紳士ぶりを見せる五郎さん。おしゃべりで強引な相手とはウマが合わない五郎さん。一匹狼でありたいと考える五郎さん。酒が飲めない五郎さん……。13分にギュッと詰め込まれています。

 今の感じとはちょっと違う一面も見せます。その一つが、商談相手が待つカフェ「Paddington(パディントン)」の前に到着したときのシーン。看板に書いてあった“おいしいコーヒーと手作りごはん”というキャッチを見て、淹れたてのコーヒーと茶碗に盛られた白飯を思い浮かべてしまいます。これはどうも現在の五郎さんらしくない。今なら軽食か、洋風のランチに思いを馳せそうな気がします。

 もう一つ、今となっては想像しづらいのがタバコを喫うシーン。お目当てのアンティークショップに入る直前、入り口に灰皿を見つけるとにこやかな表情でタバコを取り出し、一服します。いくつかのシリーズで喫煙シーンが入っていますが、タバコに対する風当たりが強くなった現代では省かれてしまった側面と言えるでしょう。

 今や定番の決めゼリフ「それにしても、腹が減った……」は、お参りを終えたところで初登場! 口を真一文字に結び、目をギュッとつぶった苦悶の表情で、今のような三角口でぽかんとした表情(‘▲‵)とはずいぶん違います。また、苦悶の表情を近くにいた巫女さん(尾道絵菜)に目撃されているようなシーンも、現在ではほとんど見られません。今や定番となったあの表情も、回を重ねるうちにブラッシュアップして出来上がったものなんだなぁ。
 あと、ポン・ポン・ポン♪と木琴?の音と共にズームアウトしていくシーンもこの回から出てきますが、ポン・ポン・ポンの音が今より1~2オクターブ低い気がします。こんな違いが発見できるのも面白い。

所感2:あの“お決まり”のシーンは未登場

 今回のお店、焼き鳥屋「庄助」を発見した後からはザッツ・五郎ワールド全開。ドリンクをオーダーする際、女将さん(ふくまつみ)の読み違いをきっちり正してウーロン茶を注文。そしてすぐさま「焼き鳥は何がありますか」と尋ねます。この時は、ねぎま・なんこつ・かわ・砂肝・手羽先・レバー・つくねの7種類(塩のみ)すべて一本ずつオーダーしましたが、メニューを見ずにすぐオーダーに入るという流れもなんだか新鮮です。

 やがて出された串に「なんでメニューに焼き鳥定食がないんだろう」とぼやきつつ、舌鼓を打つ五郎さん。あっという間に最後のつくねを頬張り、「美味い!なんだろう、この美味さは。何だか、笑えてくるな」と短く感想をポツリ。大げさになりすぎない喜びの表情が印象的です。

 続けて、ほっけスティック焼き、信玄袋、ウーロン茶のおかわりをオーダー。ほっけスティック焼きはその名の通り、ホッケを棒状に切って焼いた一品。「和風なのか洋風なのか分からんが美味いぞ」と感想を漏らしており、その味が気になるところです。一方の信玄袋は、巾着状の油揚げにオクラとホタテを詰めて焼いた、酒飲みに確実に刺さる肴。五郎さんも「これだよ、これ!」と太鼓判。食べたくなるやないかーい。
 さらに五郎さんの攻勢は続き、生ピーマンとつくね、とどめに白米代わりの和風焼めしをオーダー。しらすと梅肉を具材とし、ネギの代わりに刻み大葉を散らした一品で、これもまた飲兵衛にはたまらないメシだなと一目でわかるメニューです。ああ、食べたい。

 初回ということで、試行錯誤感が垣間見える内容でした。そういえば食事前の「いただきます」と食後の「ごちそうさま」が無かった。これもまた後々定番化していくものなんだろうなぁ。いやあ、面白い。

今回のマニアックポイント

>>今回のズームアウト

 記念すべき初回のズームアウトは、開始から9:27ごろ。お参りを終え、すれ違ったバカップル(死語?)のやり取りを鼻で笑った直後、「それにしても…」と独白が入るよりちょっと早いタイミングで顔をゆがめます。直立でポケットに右手を突っ込み、俯いた姿勢でズームアウトします。
 前述の通り、ポン・ポン・ポン♪のテンポがかなり速く、音がちょっと低め。そして苦悶の表情のところで巫女さんと目が合い、ビクッとされてしまうという、今とは違う演出となっています。

>>今回の珍客

 今回は客よりも店の女将さん(ふくまつみ)のキャラが印象強め。ウーロン茶をウーロンハイと早合点したり、ウーロン茶を切らして隣の酒屋へ買いに行ったのを「店の外にも冷蔵庫があるんですよ」と言ってみたり。焼鳥メニューを説明するシーンなど、いいキャラクターぶりを見せています。

 お客さんでは、常連客(柏木厚志)。颯爽とやって来てマイボトルを確認すると、つくねと生のピーマンをオーダーし、五郎さんに独自の“つくねピーマン”を見せつけます。今後のシリーズに続く、五郎さんの“別テーブル盗み見オーダー”の源流を作りました。

ふらっとQUSUMI

 原作者の久住昌之さんがドラマに出たお店をたずねる名物コーナーは初回から健在。最初はドラマ本編にのっとり、つくねとピーマンをオーダーしています。そして、「井之頭五郎は飲めないんですけどね」と言いつつ、瓶ビールをグビリ。今なら“庄助サイダー”とでも呼んでいたかもしれませんが、この時は特に名前を濁さず、軽快に飲んでいます。
 そしてコーナーの最後には、居酒屋を舞台にドラマを作ることに抵抗があったことを語っています。しかし料理や店内の雰囲気の良さを挙げ、「こういうのもアリかなと思いました」とコメント。初回に敢えて居酒屋を舞台としたことで、以降の回の出演店にも幅が生まれたのかもしれません。

出演者について

 ゲスト出演者と五郎さんのやりとりも「孤独のグルメ」シリーズの見どころですが、記念すべき初回は、山村美智さんが“高級趣味を持つお喋り好きなカフェの店長”を演じました。クレジットは店長となっていましたが、あの雰囲気はオーナーっぽい。そして開始4分ほどで、主人公である五郎さんをはるかに上回るセリフ量を乱れ打ちしました。
 山村さんは元フジテレビアナウンサーで、アナ時代には「オレたちひょうきん族」で“初代ひょうきんアナウンサー”として出演、お茶の間の人気者となりました。現在は女優に転身、舞台やテレビドラマを中心に活躍されています。

 また、焼き鳥屋の女将役はふくまつみさん。人当たりの良いおばちゃんを好演しており、ふらっとQUSUMIで登場した「庄助」の本物の店長さんも「似てる」とびっくりしていた様子でした。
 ふくさんは70年代から、テレビドラマやバラエティ番組での再現ドラマなどの出演を重ねてきた女優。公式サイトのプロフィールを見ると、「DOLLS」「HANA-BI」「キッズリターン」など北野武作品への出演歴も。

クレジット

脚本:田口 佳宏
監督:溝口 憲司
音楽:久住 昌之、Pick & Lips、フクムラサトシ、河野 文彦、Shake、栗木 健、戸田高弘
タイトルバック:「JIRO's Title」(作曲:久住 昌之)
松重“五郎”豊のテーマ「STAY ALONE」(作曲:久住昌之、フクムラサトシ)
撮影協力:深川商業協同組合、cafe パディントン、GALLUP、富岡八幡宮、庄助

【出演】
井之頭五郎:松重 豊
カフェの店長:山村 美智
みかんおばあちゃん:宮内 順子
カフェの店員:吉永 実夏
バカップル・男:福間 匠
バカップル・女:相馬 有紀実
巫女:尾道 絵菜
庄助の店長:ふくまつみ
庄助のバイト:三木 結美
サラリーマン1:橋本 利貴
サラリーマン2:宮川 智勝
サラリーマン3:堀口 泰寿
常連客:柏木 厚志

今回の名言

「ほぉ~……」
 カフェへの道すがら、昔ながらの下町感漂う路地を見つけた五郎さんの感嘆。以後、五郎さんの価値観を示すセリフや行動が多く散りばめられている。
「イメージがイヤなぶつかり方だ」
 商談相手が経営するカフェの看板に書かれた“おいしいコーヒーと手作りごはん”という文言を見て、淹れたてのブラックコーヒーと茶碗に盛られた白飯をイメージした五郎さんが面食らい、思わずつぶやいた一言。初回は想像の照準が甘い。
「苦労は、今の状態がまさにそうだ」
 息もつかせぬほどにしゃべり続けるカフェの店長の「色々ご苦労もおありなんでしょう?」と問われた時の五郎さんの内心のぼやき。いつだって五郎さんはものすごく話す相手に弱い。そんな気がする。
「死ぬほどタバコが喫いたい。急ごう」
 やっとの思いでカフェを出た五郎さんが漏らしたつぶやき。今のドラマでは全くタバコを喫わないが、かつての五郎さんはそれなりに喫煙者だったのだ。
「結婚同様、店なんかヘタに持つと守るものが増えそうで、人生が重たくなる。男は基本的に、体一つでいたい」
 五郎さんの人生観が垣間見えるつぶやき。いつだって空腹には勝てない人だから、我が身は重くしたくないのだろう。
「それにしても、腹が減った……」
 記念すべき第一回目の空腹。眉をしかめ、口をゆがませ、顔をうつ向かせた苦悶の表情は今の感じと違って本当に苦しそう。
「俺の経験によれば、昔ながらの美味い店を探すなら、川のそばを攻めろ」
 古き良き構えのお店を好む五郎さんならではの嗅覚を示す一言。この後、実際に五郎さん好みのお店が立ち並ぶ地域を見つけるので、さすがは五郎さん。
「美味い!なんだろう、この美味さは。なんだか、笑えてくるな」
 お店の人気ナンバーワン、つくねをひとくち食べた五郎さんが笑みとともにこぼしたつぶやき。初回は自身の気持ちの掘り下げがずいぶんシンプル。
「八幡さまに美味いメシが食えますようにって、ついでにお願いしたのが効いたようだ」
 神社仏閣を見るとお参りをする五郎スタイルの信心深さを物語る一言。
「これが福袋なら大当たりだな!……うん、これだよこれ、今日はツイてるな!」
 信玄袋の味に納得の五郎さんが漏らしたつぶやき。今ならもっとダジャレをかましているところだが、初回はやっぱり控えめ。
「今度はタレで白いメシ食いたいな」
 エンドロールが流れるそばで、五郎さんが最後に漏らした一言。タレも白飯も逃した漢の未練である。

本日の五郎さんのお食事

【カフェ パディントン】
・商談中に飲んだコーヒー
【庄助】
・ウーロン茶(2杯)
・焼鳥(ねぎま・なんこつ・かわ・砂肝・手羽先・レバー・つくね、各1本ずつ):焼鳥は7種類ですべて塩焼き 一番人気はホクホクのつくね
・ホッケスティック:スッキリとして何ともスタイルの良いホッケ なかなかお目にかかれないおつまみ
・信玄袋:パリッと焼いたきんちゃく状の油揚げ 中にはホタテとおくらが同居している
・つくね(2本)とピーマン
・和風焼めし:しらすと梅肉が入った焼めし パラッとかかったシソの葉がいい
【デザート?】
・おばあさんから貰ったみかん(1個)

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