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とある5分間の戦いの末に得たものは冷ややかな視線だけだった

ガラガラの電車
空いている席を見つけて腰をかけた。

私は自分のスマホで暇をつぶし、ある程度した所でふと目の前の席に目をやると3歳くらいの男のがコクリコクリと眠っていた。

そう、コクリコクリしているのだ。

電車の一席が存分に余る程小さな身体でコクリコクリしているのだ。

背もたれに寄りかからず、膝から下はしっかり椅子の境目から垂れている。

小さな手は隣に座っているお父さんと思われる人の膝に添えられているだけ。

電車が揺れるたびにかなりの勢いでコクリコクリしている。

『これ下手したらコクリの勢いで頭から落ちるんじゃないか…?となりに座っている父親は心配じゃないのか?』

ふと隣に座る父親と思われる人物に目をやる。

父親は爆睡している。

『まじかよ…』

逆隣に座っている母親と思われる人物に目をやる。

母親は爆睡している。

『えーーー…』

その間にもお子は頭がコクリコクリしている。

しかし絶妙なバランスで耐えている。

もう不安で不安でお子から目が離せない。
心拍数はどんどんあがる。(私の)

子供を座り直させてあげるべきか、お母さんを起こして教えるべきか、、でも見ず知らずの女が急に接触してきたらショタコンに間違えられて騒がれないか?

いろんな想像が頭を巡る。

その間にもお子は絶妙なバランスでコクリコクリしている。

こうなったら仕方がない。


『お子が頭から落ちると確信したタイミングで私が飛び出し受け止めよう。』

うまくいく保証はないがこれが最善の策だと思った。


私は手に持っていたスマホを鞄に入れ、いつでも飛び出せる準備をした。

『いつでも来い。受け止めてやる。』

お子は今もなお絶妙なバランスでコクリコクリしている。

父親と思われる人は変わらず爆睡している。

母親親と思われる人も同上。

私の心拍数がどんどん上がる。


電車は揺れる。

お子はコクる。

親は眠る。

私はドキる。

電車が次の駅に止まる為ブレーキをかける。

お子がコクる。

今までにないくらい大きくコクる。

『これはまずい!!』


その瞬間は私の体は大きくビクッ!と動いた。

ホラー映画でいきなりオバケが出て来て身体がビクッッとなるくらい動いた。

一つ開けて隣に座っていた女性がビックリして私の方を見た。


その瞬間お子は絶妙なバランスでいつものコクリコクリの位置に戻った。

女性が私の事を見ている。

私は何事もなかったかのように座り直す。

電車が止まる。

親と思われる人間が目を覚ます。

お子はコクリともせず眠っている。

親が子を起こす。

親子で電車を降りていく。


私は鞄からスマホを取り出す。

何か用があるわけでもないのにアプリを開いては閉じてを繰り返す。

右隣の視線が怖い。


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