[5分で読める]四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(再会28)(無料試読あり)
このお話のあらすじ
母と父が連絡を取り合っていたことや母の言葉に、思いの丈をぶつける主人公。母はそれを静かに聞いていた・・・・・・。
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以下本文
「ほんとにごめんね。今までよく頑張ったね。全部知ってるよ。勉強も運動も頑張って、かけっこが苦手だったのに5年生の運動会の時には徒競走で一番になったのも、中学に入ってずっと勉強で1番を取ってたことも、みんな」
「え、なんで?」
ぴたりと泣き止んでお母さんの顔を見る。お母さんは優しい顔をしている。背中を撫でていた手が私の頭を撫でる。
「みんな、お父さんから聞いて知ってる」
「お父さんと会ってたの!?」
「違うの。これのお陰」
そう言って私に見せたのは、手首に着けられた白い数珠だった。どこかで見たことがあると思った普通の数珠よりも小さな玉で作られている数珠。
「あ、これ。お父さんのと同じ・・・・・・」
父が寝る前によく着けていた数珠と同じ物だ。本当に、寝る前の少しの時間しか着けないから、最近はほとんど顔を合わせることも無くなっていたのもあってすぐに思い出せなかった。
お母さんは大事そうに数珠を撫でる。なぜこの数珠のお陰で私の色々なことを知れたのか。お母さんの説明を静かに待った。
「これはね、同じ物を持ってる人と意思疎通ができる数珠なの。この数珠に力を流すと、そうね、糸電話みたいに話せるって言ったらイメージ湧くかな」
「じゃあ、これを使ってお父さんと話してたの? 私、全然知らなかった。言ってくれれば私も話せたのに!」
「お母さんが、お父さんに口止めしたの。ただでさえ寂しい思いをさせる。変に関わったら余計に寂しい思いをさせてしまうからって」
「じゃあ、お父さんはお母さんのこと、全部知ってたんだ・・・・・・」
「・・・・・・そう。お父さんは全部知った上で、私を送り出してくれた。いつもあの人は私のわがままを優しく受け止めてくれる。あの人のお陰で、渚はこんなに良い子に育った。お父さんは、何も悪くないの。最近は私の力が足りなくてなかなかお父さんと話せなくなってたから、ずっと心配してた。元気そうな顔を見て、お母さんすごく嬉しかった」
「そんなこと言ったって・・・・・・私、ずっと寂しくて・・・・・・」
言えなかった言葉たちが、我先にと口から飛び出して行きそうになる。ぽろぽろと落ちてくる涙を膝で受け止めながら、私は必死に口を閉じる。
お母さんの手がもう一度背中に伸びる。お母さんの温もりが優しく私を包んだ。耳元で優しい声がする。
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