「47都道府県 女ひとりで行ってみよう」 読書感想

 益田ミリ氏著「47都道府県 女ひとりで行ってみよう」を読了したので、個人的な感想を書こうと思う。(ネタバレあり。)

 読み始めて、最初は大がかりな計画に対し、著者である益田氏が全く旅行を楽しんでない気がした。そして終始一貫して女1人で旅している自身が世間からどう見えるかということを非常に気にしていた印象を持った。草加せんべいを作りたくて行ったのに店員さんが勧めてくれないので諦めたり、海産物は苦手なのに地元の名産だからと注文し案の定食べられず、あろうことか残した海鮮丼を店員の目を盗んでハンカチで包んでカバンにしまうという恐ろしいことをしていた。
実際、本人も何度もやめたがっているし、読んでいてモヤモヤして「もう無理して行かなくていいんじゃないか!?」と思うことも何度もあった。(当時ウェブ連載していたとのことで簡単に投げ出すことはできなかっただろうけども。)
 しかし読み進めていくと、一人旅が楽しくなってきていたり(途中でまた嫌になっていたけど…)、自身がやりたいことをやろうと益田氏の中で旅慣れてきた感が出てきてモヤモヤ感はしなくなっていった。

 この本を読了して感じたことは、各地の観光地より旅先で見たものを益田氏がどう感じたか、益田氏の人間性が見えてくる小説だった。
 私の中の益田氏は、旅先で人と交流を深めることを良しとせず(羨ましがるけど)色んな事に興味を持つが思うことを飲み込む引っ込み思案で、長崎原爆資料館で外国人グループを注意したり、旅なんか出たくないが一度やると決めたら最後までやろうという生真面目さが垣間見え、そして子供の不安そうな顔を見て胸が締め付けられるいい人のイメージが根付いた。

 最初、観光地の感想レポみたいな小説を期待して読み始めたが、他の人のレンズ越しに見た世界はどう見えるのかが感じられる良い小説だった。私も全力後ろ向き人間なので、益田氏に非常にシンパシーを感じた。あと絵がシンプルながら非常に可愛らしく読んでていて最後の4コマを読むのが楽しみだった。

 この本が「この夏のオススメ図書」として色んな本屋で平積みされているのを見る。日本人みんなが一度は考える計画を実際にやってのけ、非常に読みやすいこの図書はオススメされるべき図書なのだろう。ただ、凄い共感する人と、モヤモヤが強く残る人の両極端の意見が一定数いそうな気はする。 私は最後まで読んで好きになった。他の人のこういう旅行記も是非読んでみたい。

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