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小説紹介『名探偵のままでいて』

三度のご飯より一度読書!毎日が読書日の優香です!
今回ご紹介するのは、小西マサテルさんが書かれた『名探偵のままでいて』です。本書は、レビー小体型認知症を患いながらも、孫娘が持ち込む謎を解き続ける祖父の物語です。

本作の中心には、認知症によって徐々に「名探偵」としての自己を失いつつある祖父と、そんな祖父を支え、共に謎を解き明かしていく孫娘楓の深い絆が描かれています。日常に潜むさまざまな謎を通じて、二人の関係性が深まり、祖父の認知症による挑戦と孫娘の愛情が繊細に描かれています。

タイトル『名探偵のままでいて』は、この物語の核心を突いています。認知症と診断された後も、祖父が名探偵としてのアイデンティティを保ち続けること、そして孫娘楓が祖父をそのように見続け、支え続けることの願望を示しています。祖父にとって、謎を解くことは自己の確認であり、孫娘との絆を深める手段。楓にとって、謎を共に解くことは、祖父との大切な時間を作り出し、祖父が「名探偵のままでいて」くれることへの願いを込めた行為なのです。

読み進めるうちに、特に印象的だったのは、楓が祖父のもとへ謎を持ち込むシーン。これらの瞬間は、認知症によって変わってしまったかのように見える祖父の中に、かつての鋭敏な探偵の姿が垣間見える瞬間であり、読者にも祖父の「名探偵」としての輝きを再認識させます。また、これらの謎解きを通じて描かれる家族の愛、特に祖父と孫娘の絆の深さは、本書が単なるミステリー作品ではなく、家族の物語であることを強調しています。

『名探偵のままでいて』は、謎解きの面白さと共に、認知症というテーマを通して、人間としての尊厳、家族の絆、そして愛情の深さを描いた作品です。この物語から受ける暖かさと希望は、読み終えた後も長く心に残るでしょう。祖父と楓の物語を通じて、私たちに大切な何かを思い出させてくれるはずです。ぜひ、この感動的な旅に出てみてください。

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