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僕と命のロウソク
第五十一話 緊急手術
事故現場に駆け寄ると、トラックの左前輪と後輪の間に上半身を突っ込むようにして横たわっていた。
屈みこんで覗くと、目を半開きにして意識を失うゆかりちゃんの顔が見えた。
(頭の上のロウソクが!!!)
根元から切り倒された木のように、ロウソクが根元から折れ、横倒しの状態になっていた。よく見ると無色の炎が上がり、尋常じゃないスピードでロウソクが溶けていく。
トラックの運転手が、『この子がいきなり飛び出してきたんだ!』と大声を上げていたけど、僕の耳には、ほとんど届かなかった。
(ゆかりちゃんが死んじゃう……ゆかりちゃんが死んじゃう……)
僕は、震える手で携帯を取り出し、救急車を呼んだ。
そのころには人だかりができ、事故のことを聞きつけた先生たちが校舎からすっ飛んできていた。
僕は、絶望的な気持ちになってパニックになっていたはずなのに、無意識にゆかりちゃんの家と自宅に連絡を取り、無理やり救急車に同乗して病院に向かっていた。
何の因果か、ゆかりちゃんが担ぎ込まれた病院は、以前僕が事故で入院した病院だった。もちろん、ゆかりちゃんが入院して医療過誤があったいわくつきの病院でもあった。
病院に到着してしばらくすると、
「山崎君、何があったんじゃ!」
ゆかりちゃんのおじいさんとおばあさんが、慌てて駆け込んできた。
学校でトラブルがあったこと、それに関係したゆかりちゃんがパニックになって道路に飛び出したところをトラックに轢かれたことなどを簡単に説明した。
その説明の間に、ゆかりちゃんのおじいさんとおばあさんは、病院の先生に呼ばれて診察室に向かった。
僕はひとりになると、腰が抜けたように診察室の前のソファに座った。
一般外来棟とは違い、本館の診察室周辺には人気があまりなかった。
ひとりになって、ゆかりちゃんの頭の上のロウソクの状態を思い返す。
木が根元で切り倒されたようなロウソクの状態。根元が皮一枚の状態でつながっていた。こんなことを見たのは初めてだった。
無色の炎は、意識がないことの現れだけど、あのロウソクの異常な溶けかたは、命の危険があることは明白だった。
思わず、最悪な結果を考えてしまう。自然と恐怖で体が震えてきた。
20分ほど経って、ゆかりちゃんのおじいさんとおばあさんが診察室から出てきた。
「ゆかりは、危険な状態のようだ……」
おじいさんは難しい顔で言って、僕と一緒に手術室場所へと移動した。
すでに手術室に運び込まれるゆかりちゃんと対面した。と言っても、意識はなく、他の場所で応急処置と検査を受け、点滴や何やらをいっぱいつけられた状態で運ばれてきた。
「ゆかりー! ゆかりー!」
おばあさんの悲痛な呼びかけも、ゆかりちゃんはピクリとも反応しなかった。
そして、手術が始まった。
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