【ホロライブ小説】『七彩大戦』:第2章 開戦
マリンと悟が共同生活をして1週間が経っていた。
「マリンさん、今日は買い物に行きましょう!」
唐突に悟はマリンへ提案した。悟は困っていたからだ。
マリンは悟と共同生活をしてから家にいる間は悟のTシャツやスパッツを着ており、
色気のある格好をしていたためだ。年頃の悟にとって死活問題であったのだ。
「そのマリンさんってのやめないか?マリン船長または船長って呼んでくれ」
冷蔵庫の麦茶を取り出しながらマリンが答える。
「で?買い物だっけ?いいよ、行こう。こんな薄着だと悟の視線が気になるし。」
そう言うと、マリンはニヤッと笑ってジト目で悟を挑発した。
「じゃあ、お昼にでも行きましょう」
悟は図星であったが気付かれないように挑発にはスルーした。
悟とマリンは買い物リストを二人で確認しながら大型商業施設に向かっていた。
大型商業施設に着くと、マリンは少し別行動することになった。
理由は行っていなかったが悟はなんとなく『女の子の買い物』を悟った。
悟は商業施設の本屋で待つことにした。
一冊の本を取って読んでいると後ろから声を掛けられた。
「あれ~?オブザーバー君じゃない?」
それは本屋店員の制服を着た『白銀ノエル(しろがね)』だった。
「マリンは?一緒じゃないの?」
辺りをキョロキョロしながらあたりを見渡すノエル。
「まだ、『七彩大戦』開催までは3週間ほどありますよ。」
悟に緊張感が走る。ノエルと出会うことによって戦闘が始まると思ったためだ。
悟の困惑に気づいたノエルが心配を払拭するように続けた。
「大丈夫だよ!開催までは戦闘ができないから。それは他のプレイヤーのみんなもね」
すると、後ろから毎日聞いてる声がした。
「ノエルじゃーん!あんたここでバイトしてんのー?」
ドキッとして振り返るとそこには所用を終えたマリンがいた。
「そうだよー!制服かわいかったからねー」
2人は悟をそっちのけにして仲良く談笑していた。
買い物を終えて夕方になっていた。
「マリンさん、ノエルさんと仲良かったですね」
悟はマリンとノエルの関係に興味があったので話題を振ってみた。
「マリン船長な?」
とマリンはお決まりの呼び名の訂正を入れた後に続けた。
「ノエルも含めてプレイヤーのみんなとは友達であり、仲間だったからねー」
どこか嬉しそうなマリンに悟は続けて聞いた。
「戦闘なんかやめてじゃんけんで1番を決めれば平和ですよね!」
そんな悟の提案にマリンは険しい顔になった。
「それはないよ、戦闘が始まればみんな真剣になるよ」
マリンの語気がすこし強い気がした。
悟にも緊張が走った。
マリンと悟の共同生活はあっという間に時が経っていた。
悟は昼の時間にバイトまたは大学へ行き、マリンはバイトや『七彩大戦』の準備を進めていた。
夜になるとマリンが夕食を作ってくれて、2人で食卓を囲むのであった。
その他にもラノベでありそうなお風呂イベントや夜這いイベントがありながも健全な生活であった。
既に『七彩大戦』は開催日は迎えていた。
しかし、プレイヤー同士の戦闘は行われていないようであった。
今日は気分転換の為に2人で公園へ来ていた。
2人はベンチに座りながらコンビニで買った肉まんを食べていた。
「『七彩大戦』が始まりましたけど、戦闘はまだ起きていないようですね」
『七彩大戦』が始まるとオブザーバーである悟の前腕には7つ刻印が現れた。
これはプレイヤーの生存を意味する刻印であり、プレイヤーの絶命した場合は刻印は消えるようだ。
「そういえば、マリンは他のプレイヤーがどんな能力を使うかを知ってるんですか?」
悟は『七彩大戦』を観戦するにあたって事前知識を入れることに興味があった。
「マリンじゃなくてマリン船長だろ?」
いつの間にか呼び捨てで呼ぶような仲になっていたが、マリンのこのツッコミは定番となっていた。
「いや、他の人がどんな能力かは分からないだよ。以前に参加した時の記憶の一部は消されちゃうんだよねー」
マリンはコンビニで買った肉まんを頬張りながら答えた。
悟は間を開けて、核心を付いた質問をした。
「マリン船長は最後の一人になった時にどんな願いを叶えたいんですか?」
マリンは口に入れた肉まんをゆっくりと飲み込むと前を向いたまま答えた。
「私は受肉してこの世界を行きたいなって思ってるよ」
悟は黙って聞いていた。
「私は生前は配信者として一生を終えたから、結婚とか『普通』の生活を経験してみたいんだよねー」
マリンの横顔は夢を叶えたい少女の顔であり、無邪気さを感じた。
日が暮れ、悟とマリンは公園から帰路に立っていた。
「やっと来たか」
そう言うとマリンは足を止めた。
悟が困惑していると、数メートル先に一人のプレイヤーが立っていた。
「気づかれちゃったか、できれば不意打ちを決めたかったんだけどね」
悟とマリンの前に現れたのは『小鳥遊キアラ(たかなし)』であった。
「悟の近くに居れば自然とプレイヤーが集まるからな」
得意気にマリンがキアラを挑発する。
プレイヤーはオブザーバーである悟の半径10km以内でないと能力が使えない。
これはオブザーバーが観測者の役割を果たしやすくすための制約である。
また、プレイヤーはオブザーバーがどこにいてもある程度の位置が分かるになっている。
「まだ、オブザーバーの近くにいるなんてマリンちゃんも迂闊だよね、それとも能力に自信があるのかな?」
負けじとキアラも挑発し返している。
悟は固唾を飲んでいる。
少しの睨み合いの後、キアラがマリンへ猛突進してきた。
マリンはどこからか単発銃(フリントロックピストル)を取り出し、突進してくるキアラへ向けて発砲する。
放った銃弾はキアラの脳天を貫いた。キアラは力なく倒れた。
「し、死んだの?」
悟がキアラの様子を確認しようと近づこうとした時にマリンが強く止めた。
「近づくな」
すると、倒れたキアラがむくっと起き上がった。
「なんだ、油断しなかったか。これで油断したマリンちゃんを仕留めるつもりだったのに」
キアラはマリンが持っていた単発銃が剣(カットラス)になっていることに気づいた。
「そうか、マリンちゃんは『武装系』の能力みたいだね」
能力にはいくつかの系統がある。武装系とは自分の周りに鎧や武器などのものを出現させる能力を指す。
「そう言うお前の能力はなんだ?私の銃弾は確かに脳天を貫通しているように見えたが?」
マリンが相手の能力について探りを入れる。
「私の能力は『加護系』。名前を付けるなら『不死身』だよ。マリンちゃんの能力のどっちが強いかの勝負だね」
そう言うと、キアラは不敵な笑みを浮かべた。
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