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【ホロライブ小説】『七彩大戦』:第3章 溶岩少女の領域

キアラとマリンとの戦いはしばらくの間続いた。
「もう、3回は殺してるはずなんだが、お前は本当に不死身なのか?」
マリンは顔について返り血を拭いながらキアラに問いかけた。
「マリンちゃんも大した能力じゃないのに強いね。全然、とどめを刺せないよ。」
そう言うとキアラは切り落とされた腕を再生させた。
悟は高度な戦いを驚嘆の目で見ながら、「観戦者」としての自分の役割を自覚した。
「俺はただ、戦いを観戦するだけだ。介入してはいけない。」
そう自分に言い聞かせながら、悟はマリンとキアラの戦いに集中した。

すると、突然公園の方から大きな音がした。
どうやら公園の方でもプレイヤー同士の戦いが始まっているようだ。
キアラは懐から煙玉を取り出し、地面にたたきつけた。
「マリンちゃん、楽しかったよ。決着はまた今度ね。」
どこからかキアラの声が聞こえる。どうやらキアラは逃げるようだ。
「マリン、大丈夫か?」
興奮気味に悟が問いかけた。
「マリンじゃなくて、マリン船長だろ?」
マリンは持っていた単発銃の傷を確認しているようだ。
「キアラが逃げてよかったな。不死身なんてどうやったら倒せるんだ?」悟が不安そうに問いかけた。
「プレイヤー毎に有利、不利はあるだろうがバランスが崩壊しそうな不死身はブラフだろうな。第一、不死身ならここで私を殺してるはずだ。
なのにあいつは近くにプレイヤーがいるのを感じて逃げた。多分、命にストックがあるんだろうな。
ストック型ならここで3機も落とすことが不自然だから、おそらく時間でストックが回復するんだろう」
マリンの冷静な考察に悟は頼もしさを感じた。
「そんなことより、公園でやり合ってるやつら見に行こうぜ」
マリンにはどこか余裕があるようだ。
悟とマリンは公園に向かっていた。

公園では『紫咲シオン(むらさき)』と『白銀ノエル(しろがね)』が戦っていた。
シオンは空中に展開した魔法陣の上に立っている。
ノエルはシオンを見上げ立っていた。
「ノエルちゃんは遠距離型じゃないみたいだね」
「そうだね、団長(ノエルの一人称)の能力は"パワー全振り"だから遠距離系の能力ではないかな」
それを聞いてシオンは見下したようにニッと笑った。
「私の能力は『空間転移』魔法陣を通して空間を繋げることができる」
魔法陣がノエルを取り囲うように展開される。
「ノエルちゃんは魔法陣の先に何があると思う?」
シオンは不敵な笑みを浮かべる。魔法陣の奥から機械音が聞こえる。
「食らえー!!」
そう言うと魔法陣のから無数の弾丸がノエルへ向けて打ち出された。
「す、凄い」観戦している悟が声を漏らす。
「魔法陣の先は自動砲台があるんだな。えげつねぇ」
マリンも額に汗を浮かべる。
ノエルは銃弾の雨に包まれる。

シオンはひとしきり撃った。
「ノエルちゃーん?原型あるかなぁ?」
シオンがキャハハと笑いながら生存確認をする。
銃弾の雨によって砂埃が起こり、ノエルの姿は見えない。
シオンが目を凝らしていると、砂埃の中からハンドボールくらいの大きさの石が飛んできた。
それはシオンの頬をかすめた。
「ひッ!」
シオンは情けない声を上げ、尻もちをついた。
「ごめんね、シオンちゃん。外れちゃった。次は当てるからね」
「な、なんで、死んでないの?」
ノエルはほぼ無傷であった。
「団長の能力は『超身体(ナイスボディ)』。体全体が密度の高い筋肉で覆われてて銃弾は効かないんだ」
ノエルはそう言うと地面に固定されている公園のベンチを片手で持ち上げた。
「そうだ、遠距離系の能力じゃないって言ったけど、物を投げれば遠距離系の能力かも?」
ノエルは悪意のない笑顔でシオンに言った。
「・・・!」
シオンは無言で額に汗を浮かべる。
シオンは死の恐怖を感じた。
シオンは魔法陣を展開するのに1秒程度かかる。
ノエルの持っているベンチを投げられれば魔法陣での防御が間に合わず、撃ち抜かれしまうためだ。

「やってんにぇ」
シオンとノエルの戦いゆっくりと近づくものがいた。
それは『さくらみこ』であった。
「全員まとめてかかって来るにぇ」
みこが全員を挑発した。
その挑発にノエルはみこに向けて、持っていたベンチを投げた。
時速200kmを超えるベンチが勢いよくみこへ飛んで行った。
みこは向かってくるベンチに手のひらをかざす。
ベンチはみこの手に触れる寸前で蒸発して無くなった。
「なんだ?あの能力は?」
悟は得体のしれない能力に驚いた。
「これは熱か?」
マリンは大気中の温度が高いことに気が付いた。
皆が混乱している中、みこが得意気に解説してくれる。
「みこの能力は『極炎(エリート)』だにぇ。みこが触れた物は蒸発するんだにぇ」
「それだけじゃないにぇ。『極炎領域(エリートロード)』」
みこの詠唱と共に辺り一帯がマグマと火山岩に包まれた。
「悟。あんたは船長の後ろに居な」
あたふたしている悟を船長は守るように後ろへ誘導した。
みこの能力は『領域系』である。『領域系』の能力は相手と自分を展開した領域内に閉じ込めることができる。
また、自分の強化や魔獣の召喚など追加効果が付与されるような能力もある。
『領域系』は数ある能力の系統の中でも最強核である。
この混乱に乗じてシオンは自分の魔法陣で離脱していた。別空間と転移できるシオンだけは領域から脱出することができる。

「まずはノエルの打ち砕いでみせるにぇ」
そう言うと、マグマの中から巨大な腕が出てきてノエルを襲う。
ノエルはその大きな腕をパンチで破壊した。ノエルの拳は焼けた。
「みこち、やるねぇ」
ノエルの拳のやけどを見ながら言った。
「ノエルはここで倒してやるにぇ」
みこはマグマを操り、ドラゴンの首を作った。
ドラゴンの首が伸び、ノエルへ向かって襲い掛かる。
ノエルはドラゴンの首を破壊したり、躱しながら距離を詰めていく。
「すごい。距離をどんどん詰めてる。でも…近づいても触れられれば蒸発しちゃうんじゃ?」
悟は目の前の戦いを考察する。
ノエルはあっという間に距離を詰め、みこの手の届く範囲まで来た。
「ノエルはバカだにぇ!!」
みこがノエルへ手を伸ばした。
ノエルはそれよりも早く地面を勢いよく殴って周辺を陥没させた。
みこの足元が崩れ、よろめいてしまう。
ノエルはよろめいたみこの殴り吹っ飛ばした。
みこは背後にあったマグマ溜まり落ちた。
「あっちゅ!あっちゅ!」
みこは自分のマグマで燃え、消失してしまった。
悟の前腕に刻まれたみ刻印の一つが消えた。
みこが絶命したことにより辺りの一帯のマグマが消えた。

「さぁ、ノエル。次は船長が相手してやるよ。疲れたとか言わないよなぁ?」
マリンはノエルを煽る。
「もちろんだよ、マリン」
笑顔で返すノエル。
「悟!先帰って晩御飯作っとけ!」
マリンはそう言うとノエルと一緒に姿を消してしまった。
仕方なく悟は先に帰った。
晩御飯を作ってマリンの帰りを待っていた悟であったが
今日の一連の疲れが出て、ソファで寝てしまった。
次の朝、マリンは家に帰ってこなかった。

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