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『カヴァレリア・ルスティカーナ』と世界遺産

2024年7月15日海の日に出雲フィルハーモニー交響楽団の第26回定期演奏会が開催された。
歌劇「カルメン」第一組曲・第二組曲から始まり、生誕200年を迎えたブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」から第4楽章、後半はオリジナル稿による「カヴァレリア・ルスティカーナ」のフィナーレ、として最後に「カヴァレリア・ルスティカーナ」の物語の12年後を描いた歌劇「12年後~カヴァレリア続編」と盛りだくさんなプログラムである。
私は、前半はオケ、後半は合唱の一員として参加した。

 

演奏会が終了して1週間ばかり経つが、今も頭の中はカヴァレリアのメロディーが流れている。今回はカヴァレリア・ルスティカーナの世界観が頭から消えないうちにこの作品に関連する世界遺産について書いてみた。


『カヴァレリア・ルスティカーナ』の舞台

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」はイタリアの小説家ジョヴァンニ・ヴェルガ(Giovanni Verga)が自身の出身地であるシチリア島を舞台に描いた同名の短編小説がもととなっている。
この小説を作曲家ピエトロ・マスカーニ(Pietro Mascagni)がオペラ・コンクールのために作曲し、舞台化したものが歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」である。
新国立劇場のホームページによると、「カヴァレリア・ルスティカーナ」の舞台となったのはシチリア島南部のヴィッツィーニ村とされている。

赤いマークがヴィッツィー二村

シチリア島の世界遺産

そもそもシチリア島はどれくらいの広さだろうか?
調べたところ面積は25,420k㎡とのことだが、今一つピンと来ない。
どうやら、九州>シチリア島>四国ということらしい。
現在シチリア島には5つの文化遺産と2つの自然遺産、あわせて7つの世界遺産が登録されている。
そんなに広くはない島に7つもの世界遺産が存在するあたりは、さすが世界遺産登録数世界1位のイタリアである。

①アグリジェントの考古地区(1997年登録、文化遺産)

シチリア島の南西部にある遺跡で、「神殿の谷」と呼ばれる場所には7つのドーリア式の神殿遺跡があり、特に「コンコルディア神殿」は今もほぼ完全な形で残っていることで有名である。

②ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ(1997年登録、文化遺産)

シチリア島中央にある遺跡で、古代ローマ人の別荘跡。
モザイク絵画やコリント式の円柱が連なる廊下などが残っている。
ヴィッツィーニ村から車で1時間ほどの距離にある。

③エオーリエ諸島(2000年登録、自然遺産)

シチリア島の北岸沖にある7つの主要な島と5つの小島からなる諸島で、現在も火山活動が続いている。
噴火の種類をあらわす学術用語「ヴルカーノ式噴火」「ストロンボリ式噴火」は、主要島であるヴルカーノ島とストロンボリ島から命名されている。

④ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の都市景観群(シチリア島南東部)(2002年登録、文化遺産)

シチリア島南東部にある後期バロック様式の街並みが残る8つの街からなる。
特にノート市街は美しく、石灰岩の「サン・ニコロ大聖堂」はシチリア・バロック建築の傑作とされている。
ここもヴィッツィーニ村から車で1時間ほどの距離にある。

⑤シラクサとパンタリカの岩壁墓地遺跡(2005年登録、文化遺産)

シチリア島東部の地中海沿岸にある古代シラクサの歴史的な街とパンタリカの墓地遺跡からなる。
5,000以上もの墓とギリシア植民地時代の住居跡が残っている。
ここもヴィッツィーニ村から近く、特にパンタリカの岩壁墓地は車で1時間もかからない距離にある。

⑥エトナ山(2013年登録、自然遺産)

シチリア島の東海岸に位置し、標高は3,326mと富士山とほぼ同じ高さで、現在も火山活動が続いている。
ヴィッツィーニ村から70kmほどしか離れていないため、その姿は村からも見ることができる。(実際に行っていないので想像でしかない。)

⑦パレルモのアラブ・ノルマン様式の建造物群と、チェファルとモンレアーレの大聖堂(2015年登録、文化遺産)

シチリア島北部にあるシチリア島内最大の都市パレルモとその周辺に点在する12世紀の建造物群。
9つの歴史的建造物と2つの宮殿と3つの教会、1つの大聖堂、1つの橋からなる。西洋とイスラム、ビザンツなどの文化が混じり合った「シンクレティズム(syncretism)」(異なる芸術や文化が合体・融合するさまを指す)の代表例とされる。

最後に(余談)

イタリア本島とシチリア島は橋か何かで繋がっていると思っていたら、全くの勘違いで、本島からシチリア島に行くには、島に2つある飛行場に向けて飛行機で行くか、本島とシチリア島の間のメッシーナ海峡をフェリーで渡る方法しかないようである。但し、列車で来ると、港でそのまま車両ごとフェリーに乗り込めるらしい。
いずれにしても、たくさんの世界遺産があり陽気なイタリア人の住むシチリア島に行き、ヴェルディ作曲の「シチリア島の夕べの祈り」とやらを体験してみたい。


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