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大学のランキングとスチューデント・ローン

コロナでたくさんの大学がオンライン授業となりました。キャンパスライフを期待して4年制大学に行くつもりだったのに、授業がすべてオンラインとなり、これでは意味がない、と進路をコミュニティーカレッジに変更した学生さんもたくさんいるそうですね。

高校を卒業してすぐ、費用が安く済むコミュニティーカレッジに行かずに4年制の大学に進学する理由はいろいろあるとは思います。キャンパスライフを楽しみたい、その大学の校風が好き、憧れの有名大学だから、代々家庭ではその大学に進学している、などなど。そして、ランキングの高い大学に行けば、お給料の高い仕事に就くことができて、一生安泰だ、そう思って、ランキングの上位の大学に進学する学生さんも多いと思います。

大学のランキングは、US Newsがあげているランキングが有名です。では、US Newsの大学のランキングはどうやって決められているのでしょうか?果たして、ランキングが上位になっている大学に行くと、一生安泰なのでしょうか?

4年制総合大学のランキングの決め方は、以下の要因から決めているそうです。

6年での卒業率・進級率 22%
低収入家庭出身の学生の卒業率 5%
卒業率 8%
学部のアカデミックな評価 20%
大学職員 20%
高校の成績優秀な学生の入学割合 7%
資金の使い方 10%
卒業生からの寄付 3%
卒業時における借金の割合 5%
合計 100%

「学部のアカデミックな評価」は評論家などからの意見で決まっています。「大学職員」の項目の中で一クラスの大きさ、というのはまだ納得できますが、3分の1以上は職員の給料で決まっています。「卒業生からの寄付」「卒業時における借金の割合」も評価の対象になっています。

つまり、大学の職員の給料が高く、学生ローンなどの借金を背負った学生が少なく、卒業してからも寄付をくれるような裕福な家庭出身の学生がたくさんいる大学の評価が高くなる、ということです。
(参考文献:“How U.S. New Calculated the 2021 Best Colleges Rankings” https://www.usnews.com/education/best-colleges/articles/how-us-news-calculated-the-rankings )

今、米国で4年制の総合大学に行くと一体どのくらい費用がかかるのでしょうか?前出のU.S. Newの総合大学でランキング一位になっているプリンストン大学の2020-21年度の一年間の学費は$53,890、寮費・食費などの費用$17,820、合計$71,710にものぼります。
(参考文献:”#1 in National Universities”: https://www.usnews.com/best-colleges/princeton-university-2627

しかしながら、2019年の米国の家庭の年収の中央値(Median)は$68,703です。これはあくまでも一家庭の年収であり、個人年収ではありません。つまり、プリンストン大学に一年間通うための総費用は、一家庭の年収を数千ドル上回っているということです。家庭の年収の総額以上の費用を一人の子供の学費として支払うことは難しいですよね。しかも4年間も支払うとなると、総額で$300,000近く支払う必要がでてきます。(参考文献:”Income and Poverty in the United States:2019” https://www.census.gov/library/publications/2020/demo/p60-270.html#:~:text=Median%20household%20income%20was%20%2468%2C703,and%20Table%20A%2D1).

もちろん、優秀な学生さんですと返済不要の奨学金が付くとは思いますが、奨学金で全額賄えるということのほうが稀だと思います。そのため、どうしてもこの大学に行きたい学生さんが頼るのはスチューデントローンとなります。

では、アメリカの大学のスチューデントローンの総額はいくらくらいなのでしょうか?

アメリカでは、国から借りたスチューデントローン(Federal Student Loan)の総額は1.5兆ドル($1.5 trillion)、その他に金融機関などから借りたスチューデントローン(Private Student Loan)が推定1,190億($119 billion)ドルあり、4300万人、つまり成人の6人に1人がスチューデントローンを抱えています。近年の大学費用の高昇もあってか、25歳から34歳までの若い成人の3人に一人はスチューデントローンを抱えています。米国の2020年度の国家予算は4.79兆ドル($4.79 trillion)ですので、スチューデントローンの総額は、正に国家予算の3分の1にも上る、ということです。
(参考文献:”Addressing the $1.5 Trillion in Federal Student Loan Debt” https://www.americanprogress.org/issues/education-postsecondary/reports/2019/06/12/470893/addressing-1-5-trillion-federal-student-loan-debt/#:~:text=About%2043%20million%20adult%20Americans,not%20backed%20by%20the%20government.
“Breaking Down the US Federal Budget” https://www.itsuptous.org/blog/breaking-down-us-federal-budget-charts-and-graphs#:~:text=Creating%20the%20national%20budget%20for,was%20set%20at%20%244.79%20trillion. )

大学ランキングだけを見て進学する大学を決める学生さんは少ないとは思いますが、「ランキング」で高い大学に行くだけがその後の人生にとって良いことだとは思えません。ましてや卒業時にスチューデントローンという莫大な借金を抱えてしまった場合にはなおさらです。

サンダース上院議員や民主党は「スチューデントローンを全額または一部帳消しにする」という案を出していますが、借金をするのが嫌だからコミュニティーカレッジに行く、返済不要の奨学金の付いた大学に行く、という方法を取った学生さんもたくさんいる中、この方法が公平だとは思えません。

ランキングで上の大学に行くだけではその後の人生は約束されません。ランキングが大学の本当の価値を反映しているかどうかも疑問です。ランキングは一つの目安として、自分に取って大学生活で何が一番大事なのかを考えると同時に、なるべく借金を作らないように大学を選ぶことが大事ではないでしょうか。

The Stellar Journal 2020年10月掲載
https://www.stellarrisk.com/ja/collegestudentloanrankings/?fbclid=IwY2xjawEjK3JleHRuA2FlbQIxMAABHULYl8LcUcSYRXWnx0aorACFTOAjUlS0BuRbVANgInnFkG4fNOs6WbwEjA_aem_tEGDvw60CpML1x5pvNAojw

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