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アーノルド・ミンデル『身体症状に「宇宙の声」を聴く―癒しのプロセスワーク』

☆mediopos-2548  2021.11.7

わたしたちは多次元的な存在だ

多次元的であるということは
それらのうちのひとつの次元
たとえば物理的な身体の次元だけで
生きているわけではないということだ

プロセス指向心理学のアーノルド・ミンデルは
わたしたちの身体は
「虹が多くの色から成り立っているように」
「さまざまな「色」の現実をもっている」という

ミンデルの提唱する
そうしたレインボー・メディスンでは
少なくとも次の3つの次元を射程においている

 1.合意的現実
 2.ドリームランド(夢の次元)
 3.エッセンス

「合理的現実」は測定可能な物理的現実
「ドリームランド」は夢に類似したイメージ経験

そして「エッセンス」は「沈黙の力」から夢が生起する
プロセスに対する明晰な感覚である
「沈黙の力」とは
「あらゆる情報を潜在的に蓄えた非局在的な場」で
その場ではわたしたちの「下位状態、想像、痛み、苦しみ、
関係の問題、のすべてが世界全体と絡み合っている」

肉体における病も心における病も
少なくともその3つの現実と関わっているが
現代のいわゆる科学的生理学的な医療は
多くの場合測定可能な物理的現実のなかで
対症療法による直接的な治療を行おうとする

けれどもわたしたちの病が
病ではないとしてもさまざまな問題が
「世界全体と絡み合っている」のだとすれば
「1.合意的現実」だけでそれらを癒やすことはできない

わたしたちがさまざまな次元を
それと意識しないままにせよ
現実として生きているのだとすれば
「癒やし」はそれらすべての次元に
関わるものであるとしてとらえる必要がある

ミンデルはひとつの次元だけに取り組む医療を
「単色の医療」と呼び
「自覚(意識)のすべての次元を含む」医療を
「レインボー・メディスン」と呼んでいる

その意味でなんらかの「身体症状」があらわれたとき
わたしたちはその症状の「声」を
多次元的に聴きとる「耳」が必要になる

一〇年ほどまえによくミンデルを読んでいた頃があったが
久しぶりに目にとまったのでそのなかから
本書をとりあげてみることにした
現代の「医療」があまりにも「単色」だからでもある

■アーノルド・ミンデル(藤見幸雄・青木聡訳)
 『身体症状に「宇宙の声」を聴く―癒しのプロセスワーク』
 (日本教文社 2006/4)

「虹が多くの色から成り立っているように身体は−−−−他のあらゆる物質と同じように−−−−さまざまな「色」の現実をもっている。そのうちのある一つの「色」は「合意的現実」であり、私たちみんなが慣れ親しんでいる。実体的で、物理的な、生物医学的現実の諸側面である。その現実の中では、「通常の身体」は、頭、二本の腕、二本の足、心臓などからなり、時空間に位置づけることができる対象とみなすことができる。しかしながら、すべての物質と同様、身体は他の「色」、あるいは他の「周波数」を持っている。
 身体は夢に似た次元をいくつも有している。それは容易に測定したり、時空間内に位置づけたりすることができない。身長、体重、体温は測定できるが、身体がもっているはずの量子波動パターンないし微細な感覚は直接測定したり、位置づけることはできない。それにもかかわらず、多くの人たちは、そのパターンが顕現して認識できる以前に、それの微細な傾向性を感じることができる。
 レインボー・メディスンは、物質的現実の実際の時間や空間とともに、身体の心理的現実における夢のような次元をも含む。レインボー・メディスンは、解剖、診断、投薬、手術、生物物理学などの古典的医療の要素とともに、主観的経験、夢のパターン、意識のあらゆる次元といった代替医療の方法をも含む。
 レインボー・メディスンは少なくとも以下の現実の三つの次元に取り組む。それぞれの現実(次元)は自覚の特定のあり方と結びついている。

 1.合意的現実−−−−時間、空間、重量、再現可能な測定の観察
 2.ドリームランド(夢の次元)−−−−主観的感情、夢、夢に類似したイメージ経験
 3.エッセンス−−−−微細な傾向性の知覚。沈黙の力から夢が生起するプロセスに対する明晰な感覚

 これらの次元の一つしか取り組まない医療を私は「単色の医療」と呼ぶ。対して、レインボー・メディスンは自覚(意識)のすべての次元を含むものである。」

「身体の主観的経験は、内的経験の多くと同じように、合意的現実の速度(時計の速度)とは異なる時をもつ。この違いは誰でも感じることができる。あなたの日常的意識がドリーミング・ボディに対して、それが望まない仕方で無理強いしようとするとき、身体はある種のストレス反応を創り出す。それは日常的な時間に対する内側からの叛乱である。
 直線的な時間に従うことによって、身体の時間つまり身体感覚の時間からあまりにも遠ざかると、「風邪」や「流感」といった形での反乱が起こるかもしれない。日常感覚とは対照的に、タオイスト的な意識状態では、現実の行為とドリーミングボディの経験は継ぎ目なく一つになる。タオは古代ギリシアのカイロスという概念を思い起こさせる。」

「ユングは、人と出来事の間の非局在的連関を「共時性(シンクロニシティ)」と名づけた。「非因果的秩序」を彼は言わんとしていたのだ。こうした非因果的関連は、共有された「意味」−−−−リヒャルト・ヴィルヘルムがタオを説明するのに使った言葉−−−−の結果として生じる、ユングによれば、共時性が起こるのは、二つの出来事が同じ意味をもっっているとき、あるいはヴィルヘルムの言葉を借りれば、同じタオをもっているときである。
 沈黙の力(あなたのパイロット波)はあらゆる情報を潜在的に蓄えた非局在的な場であるため、あなたの下位状態、想像、痛み、苦しみ、関係の問題、のすべてが世界全体と絡み合っている。原理的に言えば、あらゆる病気は、世界から影響を受け、また世界に影響を与えるという意味で、「環境病」である。
 通常、「環境病」という言葉は、合意的現実において私たちの身体に影響を与える毒素やアレルゲンを指すものとして使われる。だが、ここでは関係のもつ雰囲気と関連した。より広い意味の「環境病」を探求していく。
 「あの人は頭痛の種だ」あるいは「目の上のこぶだ」という言いまわしは、身体と関係性の間の非局在的な結びつきを私たちが感じていることを示唆している。他者の存在はあなたの身体の調子に影響を及ぼす。それゆえ、対人関係に取り組むことは(理論的に言えば0あなたの症状にとっても役立つはずだ。外部にいるとあなたが思っている他人は、あなたの内部にも存在するからである。」

「遺伝は定められた運命ではない。遺伝学は何が起こりうるかについての概略を与えてくれるが、細胞の中で起こる個人的な「変異」や、他者との出会いが人生をどう変化させていくか、といったことに答えることはできない。」
「ある意味で、あなたは歴史(過去)が変容をもくろむ「器」である。あなたの身体問題は、錨で過去に固定されたものであるかもしれないが、同時に、未来に向けた解答かもしれない。」

「「人生」「愛」「自然」そして「老い」といった言葉は、多次元的な経験の数滓を含む。老いに関する合意的現実の要素は。ふつう物理的身体の衰えを指している。私たちの容姿は変化する。縮み、背が曲がり、白髪になり、頭髪が薄くなり、しわが増える。聴覚、視覚、感覚が衰える。記憶が正確ではなくなうr。一般的に、老いは徐々に進行する生物学的衰えを意味している。」
「合意的現実では、時間の経過が老化の原因である。」
「老いに対するレインボー・メディスンの視点には、科学的見解とスピリチュアルな見解、測定可能な現実と測定不可能な現実の両方が含まれる。人はみな老いていく。同時に、「老い」や「加齢」は、未知なる神秘的プロセスを指す空っぽの用語でもある。ドリームランドでは、老いは多様な並行世界によって表現されうる。ドリームランドでは、合意的現実の年齢に関係なく、「あなた」は赤ん坊であり、老人であり、生者であり、死者であり、あなた自身であり、あなた意外の諸々の人物である。あなたは多数の宇宙から成る集合体なのだ。
 合意的現実で、あなたがただ一人の人に思われるのは、そうした他の宇宙が周縁化されているからである。あなた(そして他の人物すべて)の潜在的な歴史、死、生、子供時代、晩年のすべてを合計した姿だけが、あなたの全体像である。あなたのすべての諸部分の物語を合計することに意味がある。一つの世界だけでは不十分であり、まるで人生の何かが失われているかのように、あなたは不安定になるだろう。」

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