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junaida『EDNE (エドネ)』/ミヒャエル・エンデ『鏡のなかの鏡―迷宮―』

☆mediopos2793  2022.7.11

EDNE(エドネ)はもちろん
ENDEを逆から読んだもの

本書はミヒャエル・エンデの
『鏡のなかの鏡―迷宮―』へ捧げる30篇のオマージュ

1つの話(絵)は
左と右の見開きで構成されていて
左の絵は右の絵の鏡像になっている
どの絵もjunaidaならではの不思議で魅力的な世界であり
英語と日本語でそれぞれの話
(アフォリズムのようでもある)が記されている

『鏡のなかの鏡』には
「1 許して、ぼくはこれより
    大きな声ではしゃべれない」
から
「30 冬の暮れ、
    雪のおおわれた教会ない・・・・・・」
までの30の話があり

最後の話がまた
最初の話につながっていくが

『EDNE (エドネ)』は
「30 誰がこの扉を通ったのか。・・・」から始まり
「1 なぜこの扉を通るのか。・・・」で終わる

EDNEがENDEの逆になっているように
30から始まって1で終わり
最初の話(絵)につながっていく

「扉」が「鏡」「合わせ鏡」となって
扉と扉のあいだに迷宮が広がっているように・・・

エンデの作品では
『モモ』や『はてしない物語』がよく知られているが
この『鏡のなかの鏡』や『自由の牢獄』といった名作は
とりあげられることは比較的少ないようだ
こうして独創的でクオリティの高い作品が創られることで
あらたな読者にも開かれていくことを期待したい

さてこの『EDNE [エドネ]』の刊行を記念して
東京都の二子玉川 蔦屋家電と京都府の丸善 京都本店で
6月3日から特別展示もスタートしているとのこと

■junaida『EDNE (エドネ)』
 (MOE BOOKS 白泉社 2022/6)
■ミヒャエル・エンデ(丘沢静也訳)
 『鏡のなかの鏡―迷宮―』
 (岩波書店 1985/4)

(ミヒャエル・エンデ『鏡のなかの鏡』〜「訳者あとがき」より)

「『鏡のなかの鏡————迷宮』は連作短編である。鮮やかなイメージと豊かなストーリーをそなえた三十の話は、ひとつずつ順番に、大きくゆがんだ鏡像となって前の話を写し出し、最後の話がまた最初の話につながっていく。そのつながりは、論理や因果関係の連鎖というよりは、むしろ音楽の進行に似ている。この本は、三十枚の絵からなる変奏曲と呼べるだろう。エンデじしん、『鏡のなかの鏡』の迷宮は、建築としての迷宮ではなく、意識の迷宮であると言っている。」

(junaida『EDNE (エドネ)』より)

「30 誰がこの扉を通ったのか。どちらの側から通ったのか。それはいつだったのか。そして、なぜだったのか。」

「29 夢の住人たちは、どこか誰かの夢の中で、さらに別の夢の扉を開けていく。目覚めることを、禁じられたまま。」

「28 閉ざすばかりではない。開け放つことも、我々には選べるはずだ。」

「27 この役に選ばれたのか、あるいは自ら選んだのか、演じてみれば分かるだろう。」

「26 楽園を知らない私たちにできるのは。その輪郭を想像することだけよ。演じるの。ありったけの思いを込めて。」

「25 ほんの一刻前、楽園に生まれ落ちた魔神の影は、千年先の少年に、終われぬ旅の終わりを見せた。」

「24「オワリ」初めに伝えた私の名だ。では最後に私が何と名乗るか、あなたには分かるだろうか。」

「23 名もなきそれを手放すために、俺は手に入れる。名もなきそれを手に入れるため、俺は踊る。名もなき踊りを舞うために、俺は手放す。」

「22 あらゆる秘密は決して叫ばない。囁くだけだ。まるで悪魔のように。君はただ、宙を舞うこの不完全な沈黙に、耳を澄ませるだけでいい。」

「21 すべての灯りを失くしたのなら、鏡に映っているのが神なにか、悪魔なのか、それを知る者もいなくなる。」

「20 私だけの真理の底で、知らない男が途方に暮れている。ほんとうに、知らない男だ。」

「19 最も醜くおぞましい三匹の奏でる。なによりも透明で、慈愛に満ちた三和音。美しいものと綺麗なもの、その真理の違いを疑わぬ者に、この響きが届くはずもない。」

「18 芸術家の矛盾が見事に伝達され、顔のない誰かがその矛盾を芸術と呼び、疑うことを知らぬ人々がそれに続く。」

「17 合わせ鏡にのっぺらぼう。映る姿は誰の顔。」

「16 鏡の自分に、弾丸を撃ち込んだことはあるか? 鏡の自分が、絶対無傷だと証明できるのか? 鏡の自分は、本物なのか?」

「15 氷の張った大空に、君宛のメッセージを刻もう。君を含めて誰ひとり、本物の言葉なんか読めやしないのに。」

「14 いずれは消えて無に還る、踊る炎たち。彼らの燃え盛る喜びは、ひとりひとりのほんとうなのだ。」

「13 出逢いもすれ違いも、全てほんとうのこよだった。その瞳に互いが映りあった喜びは、永遠に存在し続けるのだ。たとえ、真実から目を背けたとしても。」

「12 向こう側の存在を、こちら側が知る術はない。ただし、向こう側が存在しなければ、こちら側もない。その逆もまた然り。」

「11 この両の手に刻まれた、天使狩りの大罪。奈落でさえ、俺から逆走していく。」

「10 落花を学んだ私には、足下だけがその方向ではない。奈落は上でも下でもなく、思考を停止したお前の背後で笑うのだ。」

「9 憂鬱に時刻ちょうど。死者から生者へ、あらゆる思考の交換を。」

「8 ついに私にも肉体化が始まった。どこかで誰かがこの身体に輪郭を思い描いているのだ。あと少し。生と死の境界線まで、あと少し。闇が、眩しい。」

「7 息絶えた者たちに血が、この純白の衣を紅く染め、眩しいほどの暗闇が、漆黒に染めかえていく。」

「6 失われた言葉で、失われた芝居を、失われた舞台で、絶え間なく演じていた。」

「5 向かい合う、舞台と客席、虚構と現実。破壊と調和。わずかな厚みの、たった一枚の布きれが、完全にこの世界を分断している。幕はまだ上がらない。」

「4 すでにここに亡き者にも、未だ生まれてさえいない者にも、こう伝えよう。相変わらず今日も、世界は祝福に満ちている。」

「3 伝わることが伝えたいこととは限らない。幸福は、人知れず咲いて、誰にも知られず散っていく花なのだ。」

「2 この迷宮への扉は、幸福を知る者にのみ開かれる。だが、この迷宮にとどまれるのは、幸福を忘れた者に限られる。」

「1 なぜこの扉を通るのか。いつ通るのか。それはどちらの側からなのか。そして、それは誰なのか。」

※junaidaプロフィール
1978年生まれ。画家。2010年、京都・荒神口にHedgehog Books and Galleryを立ち上げる。『HOME』(サンリード)で、ボローニャ国際絵本原画展2015入選。『Michi』(福音館書店)で、第53回造本装幀コンクール・日本書籍出版協会理事長賞(児童書・絵本部門)受賞。その他の作品に、『THE ENDLESS WITH THE BEGINNINGLESS』『LAPIS・MOTION IN THE SILENCE』(ともにHedgehog Books)、宮澤賢治の世界を描いた『IHATOVO』シリーズ(サンリード)、『の』『怪物園』(以上、福音館書店)、装画・挿絵の仕事に『せなか町から、ずっと』(斉藤倫作/福音館書店)などがある。(「2021年 『街どろぼう』 で使われていた紹介文から)

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