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2020上半期良かったアルバム9選

出た順聞いた順。延期になったりならなかったり、なんだか遠い昔のことのように思えたり、色々あった上半期。


Pet Shimmers − Angel Mad

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チープな夢はサイケな癒やし、丁寧で、優しく、感じるままに眼を細め、浮かび続けているうちに気がついたら地面に足がついていたみたいなそんな音楽。どう考えて変でどう考えてもいい。それでいてこのジャケットで、なんだからよくわからなくてとっても素敵。よくわからないままアルバム出て、聞いても結局よくわからないってそういう魅力。とにもかくにもとても良い。


Military Genius - Deep Web

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白黒の世界、それはタル・ベーラの映画みたいで、ずっと抑えの効いたDirty Beachesみたいな感じもする。世界は何も起こっていない悪夢のようで、どこにも辿り着けないことだけがわかっている。意識は彷徨い、暗い世界に記憶のかけらを映し出す。ゆるやかで鈍い快感。N0V3LでCrack Cloud、センスはやっぱりどこかに出る。

The Wants − Container

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反復するビートに浮かぶメッセージ、沸き上がってくる興奮、未来世界のGang of Fourみたいなかっこ良さ。BODEGAのギタリスト、Madison Velding-VanDam、そのSF映画的美意識に脱帽。ソリッドで冷たい色味、冷静な論理の中に怒りが内包されているようなこの雰囲気に心がざわつく。もう格好いいとしか言いようがないってくらいにクール。これはちょっと過小評価されてる気がするよって不特定多数のみんなに言いたい。


Porridge Radio − Every Bad

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ある種の痛さ、記憶の中に存在し、ふとした瞬間に蘇り、心を再び傷つける。自らそれを呼び覚ますのは自傷行為なのかもしれないし、それはある意味では癒やしなのかもしれない。こういう映画を見てこういう音楽を聞いて考えて、痛みを感じるのはどういうことなのかと自問して、痛みを感じなくなった自分を想像する。痛みについて考えると、人についての期待がいつもついて回って、裏切りと憎悪の前段階の感情に辿り着く。あまりにマジであまりに直球、だからこそ伝わるその感情、Porridge Radioのこのアルバムに美しさを感じるのはそういうところなのかもとちょっと考える。でも毎日は聞けない。けどきっとだからこそ素晴らしい。


Sorry − 925

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本物はなにも言わなくてもわかるもの。スリリングな感覚、付け足しとそぎ落とし、薄暗いライトの先のこの感覚こそがほんとの世界。寓話的で醒めていて、物語の中に感情があり執着と離別を繰り返しもう一回ここに戻ってくるみたいなそんな感覚。夢の中で、まとわりつく重力こそがリアルを作る。全ての曲は世界の一部で、塊こそが世界、そしてそれはここにある。結局はこの雰囲気を愛せるかどうかなんじゃないかってそんなことも思ったけれど、もう今はこの夢にどっぷりと浸かりきっている。細部でくすぐり全体で魅了する、Sorryは最高にクール。


Locate S,1 - Personalia

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変化こそがキー。どうしてそれを選択したのかそれがなぜ今なのか、そこに全てが現れるから。最初に知った時(CE Schneider Topicalの時)とはもう音楽性が全然違うけど、でも今この音楽をやるってことが素晴らしい。タイトルトラック、Personaliaを聞いたときにこれは来たって思った。闇と不安と皮肉とディスコ、メロディセンスはそのままに時代を映す、こういうのがきっとポップミュージックの魅力のひとつ。


Jerskin Fendrix − Winterreise

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けたたましく寂しいパレード。Black Country, New Roadとblack midiのおじ的存在として一部で有名ケンブリッジのJerskin Fendrix。なぜだか知らないけど心をかきむしるこの音楽。寂しい、寂しい、寂しい、寂しい、ひとりよがりで結局それしか言っていないような気もするけれど、でもだからこそ輝く光のパレード。それを横目で一人眺めて家へと帰る。暗がりが迎え入れ、そのまま隅でうずくまる。全部が嘘で全部がほんとう。フェイクで素顔、頭がおかしくとっても真面目、そんな感覚 、うそとほんとのその世界(髭とメガネこそJerskin Fendrix だと思っていたからジャケット最初誰だかわからなかった)。

ARTHUR − Hair of the Dog

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ARTHURの音楽が好き、この世界が好き、愛おしい。
たぶんそれだけで理由はいらないのかもしれないけれどでも考える。そこにあるのは優しさ、相手を思い思いやるその心、それをユーモアとカートゥーンじみたアレンジで包み込むからだからこんなにも好きだって思いに溢れる。グッドメロディでひねくれて、誰にもわかってもらえなくてもいいって思えるし、わかってくれる誰かのことは好きだし、この小さな世界がなぜだかとても愛おしい。そんな類いの音楽、ARTHURマジで素晴らしい。

Sports Team − Deep Down Happy

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Blur越しに見えるThe Kinks、Oasis役を演じるPulp、ブリットポップの良さを集めて海を渡たりPavementとThe Strokesをそこに加える。つまり自分たちがいいと思った音楽がここにあるということ。それは基本で、それが根源。でも何に影響を受けても、結局はここ、ロンドンの街に戻ってくる(街にはきっとそういう引力がある)。思った以上にブリティッシュでだからこそ新鮮に響く思い出、皮肉は愛で憧れで、ギターミュージックに再び火をつけ未来を夢見る。UKの、ロンドンの、きっとここから先が第二章。


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