セレクションが地域を救う?
トップの写真は、一昨年の2019年8月にゴイアス滞在時にエスタージオ・エヂモ・ピニェイロ(Estádio Edmo Pineiro)、通称セヒーニャ(Serrinha)と呼ばれるゴイアスエスポルチクルービのホームスタジアムで行われたオリンピックに向けた強化試合ブラジル代表xチリ代表の試合を観戦した時の一コマ。
タイトルと写真はかけ離れているが、これから書いていこうとすることはこの写真にも繋がることなのでひとまず覚えておいてください。
さて、日本ではクラブに入団するためのテストを「セレクション」と呼ばれている。 一方ブラジルでは「ペネイラ」と呼ばれているが、ここ数年は「Avaliação(アヴァリアソァン)」と呼ばれることが一般的になってきた。
タイトルにあるように、サッカー王国ブラジルではこの入団テストのセレクションが地域を救う手段の一つにもなっているという話。
「ブラジルでは…」って言いたいところだけど、自分は限られた地域しか行ったことないから限定的になることを踏まえて。
サッカー王国ブラジルのクラブは"真の意味"で地域に「密着」という『より寄り添っている』ことがわかる一つの例について書いていこうと思う。
日本ではセレクションする時に参加費が徴収される。相場で言うと1000〜2000円になるだろうか。Jリーグの下部組織が開催するセレクション参加者は平均して100人くらい。 金額でいうと10万円〜20万円くらいの収入になる。
地域密着を謳うクラブが徴収するこのお金の使い道が地域のために使われているだろうか?
答えは『NO』
ほとんどの場合、クラブの懐(ポケット)に入る。
コーチの臨時ボーナス的に使われたりするのがほとんどだ。
一方ブラジルではというと…
数年前に訪れたサンパウロのとあるクラブ。
F1ブラジルGPで有名なサーキット場があるインテルラゴスという地域にこのクラブはある。このクラブを有名にしたのは、スペイン代表でも活躍したジエゴ・コスタを輩出したこと。
そのクラブの名は
「Barcelona Esportivo Capela(バルセローナ・エスポルティーヴォ・カペーラ)」
このクラブはセレクションをこんなカタチでリリースをしている。
その中にセレクションに参加する条件としてこう書いてある
・Levar 1kg de Alimentos (1キロの食料品を持参)
日本でいうセレクションの参加費が1キロの食料を持参すると参加できるというのだ。
ちなみに、この「1キロの食料品」というのは、「パスタ(乾麺)・豆・米 」を購入することがブラジルでは一般的なこと。
その日にセレクションは3回実施されるから、各セレクションに40人集まったとしてもおそらく120人が参加することを想定すると、120キロもの食料がこの日に集められる。
本題は、ここから。
この集められた食料は一体どうなるだろうか?
クラブのあるホームタウンの慈善団体や孤児院などに寄付され、ホームレスや生活に困っている人たちに配給されたり、炊き出しに使われていく。
もちろんクラブによっては、「Projeto Social(プロジェト・ソシアウ)」と呼ばれる社会貢献事業の責任を果たす義務もあるから、地域の貧困層の子どもたちを週1〜2回という定期的にスクールを無償で開催し、スクールに参加することで朝ご飯や昼ごはんを食べられる環境を提供したりもする。
一昨年ブラジル滞在時に、CBF(ブラジルサッカー連盟)によってオリンピック世代の親善試合が開催された時も、この時は食料の指定はあったものの1キロの食料と引き換えに試合のチケットを交換するという取り組みもあった。
その時の投稿はこちら👇
クラブによっては集められた食料を世帯分にパッケージし、配給を受け取りに来た地域住民や施設へ直接選手が配布したりもする。
リンクの記事は、コリンチャンスはホームレス100人に食料品を配給した時のもの。
SDGsという持続可能な社会にピッタリな取り組みと言えると思う。
街の食料品店で購入👉市民による経済的な支援
購入した食料を寄付👉興行としての収益より観戦者に楽しみを提供
集められた食料を慈善団体へ寄付👉生き延びるための支援
支援された人々👉支援提供してくれたクラブを応援する
よく「これからも応援してください」ってプロ選手の口から聞くけど、応援したくても応援する側の体力(経済的な意味も含め)がなくなればできなくなってしまう。
スポーツの持つ力は、勇気を与えることだけが全てではない。
今の日本は、「地域に密着する」という言葉より『地域に寄り添うための活動』という点でみると、ブラジルサッカー界から学ぶべき点が大いにあると思う。
#BarcelonaEsportivoCapela
#Levar1kgdeAlimentos
最後まで読んでいただきありがとうございます!