マーダーミステリーの魅力って何?

このノートの主旨は、僕の考えるマーダーミステリーの魅力、について以前からつぶやいていることを一度まとめなおしてみよう、というものです。

発端のTweetはもう一年半近く前のものですが、こちらです。

このTweetからしばらく経って、ランドルフ・ローレンスの作者、じゃんきちさんが言及してくださったりしました。

https://www.creators-station.jp/interview/curiousity/117731

(今後「ランドルフ」を超える作品は生まれるのでしょうか?という質問に対して)

さて本題。

僕の考えるマーダーミステリーの魅力は

物語体験

物語解明(≒推理体験)

物語発生(≒ゲーム体験)

の3つに分類できると思っています。さて、その3つはそれぞれどういった魅力なのか、を解説していきましょう。


物語体験

ストーリー、ストーリードリブン、没入感、感情移入、演出、世界観、読み合わせ……

最初に、物語体験、に関わる要素をつらつらと並べてみました。これは比較的わかりやすい要素ではないかと思います。プレイヤーが行動することで、新しいページが開いていく。言葉だけではなく、音、映像なども含む演出でその物語を体験できる。

またその物語を、物語世界の一員として参加する、というのは間違いなくマーダーミステリーの醍醐味のひとつです。

謎解きなどでも、物語性の強いものはありますね。まさにそれに近い、ページをめくるのは自分のアクションだけど、基本は直列的、シーケンシャルに物語は進んでいきます。

物語解明

推理、ミステリー、大謎、秘匿、真相、犯人当て、情報共有、伏線、ブレスト、カタルシス……

いわゆる、謎解きにおける小謎ではなく、世界の謎、隠された情報、犯人などを様々な情報を有機的につなげ、ひらめくことで、真相にたどり着く。まさに「ミステリー」の部分になります。

推理、といっていい部分なのですが、どうしても推理というと犯人を当てる部分に狭くイメージする方もいますので、こういった表現にしました。用意した物語のページを開くだけでなく、自らその隠された内容を探し当てる行為。

多分、マーダーミステリーを体験するまで「推理」という行動をしたことがない、というプレイヤーは多かったのではないでしょうか。マーダーミステリーは多くの人に、推理体験、物語解明の楽しさを広めました。

よく話題に出るのが、じゃあ、犯人は物語解明がないのか、という点です。正直、初期の頃のマダミスには犯人にこの要素は薄かったかもしれません。しかし、最近のマダミスには犯人にも追いたい真相がある場合も多く、物語を解明したい、という欲求に応えるように作られている場合も多いと思います。そして、それは魅力的な作品ほどそうです。

推理に関しては過去に2つほどnoteを書いてるのでご参考まで。

個人的に、推理が面白いか、というのは絶対的な評価のように言われることにはとても抵抗があります。結局推理が面白い、は人によります。

特に、マーダーミステリーにおいて「推理が面白いかどうか」は単に推理の本筋の話だけではなく、捜査を楽しめるようにデザインされているか、ブレストが起きやすく各人から情報が徐々に集まるように設計されているか、というのが重要なポイントだと思っています。

物語発生

ゲーム、駆け引き、インタラクション、ドラマ、ナラティブ、勝敗、投票、誤解、すれ違い、交渉、アクションフェイズ……

マーダーミステリー流行り始めの作品は、物語体験と、推理体験(物語解明)さえあれば、評価されていた部分も多くあると思います。ただ、ここ1、2年はほぼそれだけで評価される作品はなくなった、と思います。

「自分たちだけの物語を紡ぐこと」
これが実感されない作品は(特に有料、対面の作品においては)高い評価は得にくくなっているのではないでしょうか。

そのためには何が必要か。
僕は一言で言うならば、「ゲームであること」だと思っています。

たとえば、スポーツをイメージするとわかりやすいかもしれません。対戦要素のあるスポーツは「ゲーム」です。ゲームであるが故に駆け引きが存在し、駆け引きの結果、その試合ならではの展開、ドラマが生まれる。これと一緒のことだと思っています。

ドラマ、と言いましたが、このドラマはもちろんゲームデザイナーが計算してプレイヤーの選択で起き得るように作られているものがほとんどですが、時にその想像を超えた物語を生み出すことがあります。これこそが「物語発生」の醍醐味です。

過去にこちらのnoteでも書かせていただきましたが、「物語を意図的にプレイヤーが作る」ではなく「ゲームとして目的のためにプレイヤーが行動した結果、物語が生まれる」ことが重要なのです。

また、ドラマを生み出すのは点数方式だけではなく、キャラクター同士のインタラクション、それぞれの関係の描き方によっても生まれます。AというキャラクターがBというキャラクターをどう思っているのか。逆にBはAをどう思っているのか。これが=と限らないが故に、すれ違いをうむことができます。キャラクタの設計が優れた作品は、ゲームっぽさを感じさせず、この設定に従うことでドラマが生まれます。すれ違いはマーダーミステリーの花である。僕はそう考えています。

どれかひとつに収まらない要素

魅力を3つに分けて説明してきましたが、基本的にこの3つでマーダーミステリーの魅力は語れる、と思っています。が、マーダーミステリーを語る上でなくてはならない要素があります。その言葉を敢えてここまで使わずに来ました。

そう、RP(ロールプレイ)です。

RPは人によって定義が異なったりするので、ここではRP(目的達成)、RP(演技)と敢えて分けて考えてみます。

RP(目的達成)は比較的わかりやすいでしょう。物語発生、にほぼ含まれると考えていいでしょう。その目的の絡み方が物語を発生するようになっているので。

そして、RP(演技)はどう考えるか、これは物語体験、及び、物語発生両方に効果をもたらします。この物語の中の登場人物として演じることで、自分自身の体験感も高めた上で、他の人たちにもそのキャラクターの存在感を感じさせることができる。読み合わせとかはまさにそうですね。

と同時に、RP(演技)は物語発生、をもたらします。これは、そのプレイヤーがそのキャラクターをどうとらえ、どういう演技をしたかによって、ある時はすれ違いを、ある時は駆け引きや、対立を生みます。また、なんらかの交渉や説得にも影響を与えるでしょう。

RPは物語体験、物語発生をブーストする要素なのです。

同じように、たとえばリアルな場を使った公演は、上記3要素すべてをブーストし得るでしょうし、他の切り口はありますが、最終的には上記3要素の複数をブーストするもの、と考えて良いと思います。

魅力3要素の高い作品

では、NOVAK自身はどういった作品がこの3要素のうちどの魅力が高かった、と考えているのか……。そもそも、あくまでこの3要素は、「魅力」つまりプレイヤーがどうとらえるか、なので個人差があって当然です。なんども言いますが、物語解明にしたって、これが好み、好みじゃない、は確実にあります。

続きはこちらで話しました。そしてこの後に実際発表した順位を追記。


第10位タイ Why done it ~探偵たちの推理~


https://booth.pm/ja/items/3145668
誰が!なんと!言おうとも!物語解明型!
物語を解明しようと挑んでこそ得られる体験。
すべてのマーダーミステリーで唯一、鳥肌が立ちました。

第10位タイ アンノウン


https://booth.pm/ja/items/2836406
すべてが高レベルなバランス型オンライン作品。
2人用マダミスで1人の焼死体が箱に入ってから未来に送られてくるという、「魅力的な謎が最初に提示される」島田荘司的「本格」の定義そのままの王道。一方でオンラインでここまでの物語発生を巻き起こす作品はそうありません。
この物語発生の強さが、GMして他の人の物語を見たい、という欲をかきたてます。

第9位 招待の正体 ~I delete~


https://syoutainosyoutai.studio.site/
宿に宿泊する、という行為が、3要素すべてをブーストする作品

物語体験>雰囲気のある宿での1泊2日の物語の進行
物語解明>推理にアナログさと説得感が発生
物語発生>RPしたままで料理の準備や夕食まで体験

場所とリアルな時間経過ふまえたゲームデザインが秀逸。

第8位 桜の散る夜に


https://mdms.jp/scenarios/1408
好き!本当に好きな作品。ここまで感情移入した作品はこれと1位の作品だけだと思います。
ドキサバさんは、展開のうまさで物語体験と物語解明を盛り上げるのが本当にうまい。
その一方でこの作品は特にキャラクターの描き方が見事で、その心情とシンクロすると、その回にしかない物語が発生します。多分、配役含めハマる人とハマらない人の差が大きい作品。

第7位 緑の森の百年女王


https://joldeeno.com/murder-mystery/midori/
個人的には物語体験の大きさが一番。
特に世界観がダントツで好きです。この世界観にもっとひたっていたかった。
由布院まで行って杜塚さんGMにプレイさせていただいたことで、異世界にきたような不思議な感覚がありました。

第6位 Cosmo Murder Grand Hotel


https://joldeeno.com/murder-mystery/cosmo/
物語体験が一番ですが、物語発生としても好き。
殺意の特異点プロット書きあがった直後に作者のひまうどさんGMで遊ばせていただいたのですが、「こんなの作れねえよ~、無理だよおおお」って終わった後あまりのCMGHの愛と物量に圧倒され嘆いてましたw
殺意の特異点はこの作品のアイディアを踏襲して一部作られており、殺意の特異点での物語発生の高さの一部はこの作品のおかげです。

第5位 遠き明日への子守唄


https://projectuzu.wixsite.com/gyoiagata/lullaby
これは圧倒的、物語体験!
音楽含めた演出の破壊力、没入感がもう……すごい……。
GM1人でこの世界を作り上げ演出する手腕に感服です。
なんで泣いたか言えないんですけど、泣きました。

第4位 シュレーディンガーの密室


https://note.com/white_panda/n/nc218ca0c0e04
おそらく、物語体験、として評価されてる方が多いと思いますが、実はそれだけではなく各魅力のバランスのいい作品、だと思っています。物語解明の楽しさにあふれていますし、物語発生として、本当によく各キャラクターの関係性が計算されていると思います。キャラクター自身がその関係性をどう考えるかの細かい差異で物語が生まれるように作られている。本当に、見事なデザインだと思います。

あと、これらの物語を盛り上げるためのGM技術がハンパないです。この作品は機会あったら遊んで欲しい人を集めて観戦してほしいです。本当に素晴らしい体験でした。

第3位 裁くもの、裁かれるもの


https://mdms.jp/scenarios/40
圧倒的、物語発生型!
人狼とかマダミスとか、この手のゲームにおける自分の経験すべてを総動員して目標達成に行って、それに応えてくれた作品。本当に面白い「ゲーム」でした。アドレナリンがすごかった……。

第2位 ランドルフ・ローレンスの追憶


https://mdms.jp/scenarios/7
もういわずもがなな、物語体験型代表。ただ、僕は物語解明としても、レベルが高い作品である、と訴えたいです。まず、そもそも物語解明したい、という欲をどうかきたてるか、ここからうまい。そして、その後どう解明させていくか、というプロセスのデザインが本当に秀逸です。いまだにあの時の議論の流れを明確に覚えています。

第1位 さよならを聞かせて

自分にとっては、すべてが最高でした。まさに物語解明をしたくなる物語体験、その上で他のキャラクターたちとの思惑のすれ違いによる物語発生。そしてエンディング。すべてのマーダーミステリーの中で最もキャラクターの気持ちになり、そのために物語が生まれ、そして、エンディングでも泣いた作品です。今後素晴らしい作品が出て来ても、あの時のような瑞々しさではもう楽しめないんじゃないか、そう思うほどです。

番外編 殺意の特異点


https://note.com/nova_kmt/n/nbd371758264b
さて、番外編として。自分から見て、自作である殺意の特異点はどういう魅力の作品だと思っているのか。

当然作ってるときは3つの魅力の定義は自分の中にはなかったんですけど、結果的に、3つの魅力をそれなりに兼ね備えた作品になっていたのではないか?と自己評価しています。

もう最初のテストプレイから3年たつ殺意の特異点がここまで遊んでもらったのは、当時そう多くなかった、「物語発生」の要素をたまたま持っていたからで、そのために、プレイヤーの方々と一緒に成長でき、あまり古くなる、ということがなかったからでは?と思っています。


以上、スペースのために書いたnoteですが、前々から思ってたことをまとめられて良い機会になりました!お付き合いいただき、ありがとうございました!

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