推理の面白さってなんだろう?

はじめに

最近、こんなnoteを書きました。

推理が面白い作品が感性に合えば推理が面白いだけだ

推理重視作品、とかラベルによって推理が面白いかが決まるわけじゃない。

ってあまりに当たり前の主張のnoteなんですが、これ書いといて、じゃあ推理の面白さってなんやねん、ってところに触れずにいるのはなんか卑怯だなあ、と思ったのでそこまで書いておこう、と思いました。こういう時には、面白さを分類するに限ります。マーダーミステリーに限らず「推理の面白いところ」を分類します。そして、この分類によって、自分はこれ重視する、これはいらんわ、って各自の好みが浮かび上がり、よりプレイヤーが「推理の面白い」マダミスにマッチングされることを望んで書きます。

では、ここより下は「推理の面白い要素」を羅列していきます。すべての要素がすべての作品に含まれてるわけではないです。また、このnoteはあくまで分類&サマリーであって、あまりドラスティックな面白さはないかもしれません。そこはご容赦を。

A.提示される謎が面白い

これを一番最初に書きました。誰が殺したんだ。Who done it?はまあ推理の場合あるでしょう。ただ、それだけではない、How done it? Why done it?どうやって??なんで??って言いたくなるようなシチュエーション、殺され方、というのはそれだけで続きを知りたくなりわくわくします。この謎を解き明かしたい、という謎の存在はとても重要だと思います。これは、一番最初であるかどうかは作品によるかと。

日本の本格の巨匠、島田荘司先生は、本格ミステリーとは

物語の前段階に魅力的な謎が現れ、物語が進行して結末に 向かうにつれ、それが論理的に解体され、説明されていくという形式を持つ小説のこと

とされています。僕はこの定義こそ基本的に本格ミステリーであり、面白い推理をもたらすと思っています。

B.捜査・情報の収集が面白い

これ、意外と見逃されがちな面白ポイントだと思うのです。捜査のプロセスが楽しいかどうか。小説など一方向のメディアだと、どう情報を提示していくか、というデザインになるわけですが、ゲームにおいてはこれは能動的な行為であって、単にカードを取る、選択肢で選ぶ、だけだとその魅力は低いと言えるでしょう。この魅力のわかりやすいいい例が、僕は「すずひ企画」さんのミステリーイベントだと思ってます。証拠の写真を撮り、それをキャストに見せることによって、解答が得られる。これは面白い発明です。

また、単にテキストから選ばせるのでなく、絵や、実物が存在して、そこを実際に見て気づくことによって情報を得るのも捜索を面白くする要素ですね。

ミステリーイベントで言うと、「推理展示」も現場調査で気づくことを元に構成された面白いものです。

また、マーダーミステリーにおける密談によって情報収集しようとするのもこれにあたるのではと。

C.ストーリーが進行する中で得られる情報が面白い

Bの捜索でなくても、強制イベント的なもの、また演劇型のものであれば演劇でもたらされる情報、が大きなカギになるものもあります。これはやはり元祖ミステリーイベント、epinさんの得意とするところでしょう。ミステリーナイトにおいては舞台で視点をどこを見てるかによって気づく気づかないの差が生まれます。

また、舞台という場所ではなく、役者とキャストが同じ目線で行動しながら事件が起きる、といったものもあります。リアルタイムミステリーと呼ばれるものです。epinさんのM3もそうですが、僕らの探偵FILEさんの作品なんかもそうですね。本当に1年前に行われたイベントは素晴らしかった……!

D.要素の整理が面白い

推理においては、膨大な量の資料や情報があふれます。これを整理することもひとつの楽しさと言えるでしょう。好き嫌いあるでしょうけど、マーダーミステリーでいつも時系列整理をしたりするのも、その一種と言えるでしょう。情報量の波にのまれる面白さ、というのは、ある意味、整理の面白さ、ともいえるでしょう。

E.情報の結合が面白い

得られた情報はそのままでは推理には使えません。ただ、これらの情報がどういう意味を持つのか。他の要素と結びつけることで、その意味が浮かび上がってきます。こうやって、複数の情報が有機的につながって、物語が見えてくることは推理の楽しさのひとつでしょう。ひらめきの面白さ、も、この情報の結合であると言えます。

F.論理展開が面白い

消去法など、論理のパズルによって、可能性が狭められ、ひとつの解が導けることがあります。そういった論理パズル的面白さ、というのは推理のひとつの魅力と言えるでしょう。論理展開がないと本格ではない、という方もいるのではないでしょうか。

G.仲間とのブレインストーミングが面白い

これは、D、E、Fともかぶる部分がありますが、この行為を一人でなく、協力して行うことによって、情報がつながっていくのがとてもとても面白いです。誰かが手掛かりを述べたことにのっかる楽しさ、そのダイナミクスは推理を複数人でやることの醍醐味であり、また、複数人でしか推理をやらない、という人が多いのもこの部分の意味を強くすると思います。

H.トリックが面白い

トリックには2種類あって、犯人がしかけたトリック、作者がしかけたトリック、両方あります。この仕掛けに気づけるかどうか。この犯人、作者との知恵比べの面白さが推理にはあります。

I.どんでん返しが面白い

Hまでやってきて、いろいろ整理しても、それでも気づいていなかったこと、新しい情報によって、すべてのものが一気にひっくり返る楽しさ。これは起承転結の転の部分であることもあれば、最後の大どんでん返し、結の部分であることもあります。綾辻行人さんは、これがあることが新本格の条件である、とおっしゃってました。

まとめ

ここまでざっくりとA~Iに要素分解してきました。おそらくもっと細かく割ることもできると思いますし、もっとまとめることもできるでしょう。他にこういうのもあるよ、という方もいるかもしれません。で、ここまで分類して振り返ってみましょう。

あなたは、どの要素を重要視しますか?

これがここまで地味にまとめてきて、一番問いかけたかったことです。全部!という答えもあるでしょう。ただ、これ人によって違うと思いませんか?たとえば、D情報の整理なんてちっとも面白くない、という人もいるでしょう。一方でHトリックがないなんて推理ですらない、という人もいるでしょう。

これはあくまで僕個人の嗜好でいうと推理小説なら

I>A>H>C>E>>>>D>F (B,Gはない)

なわけです。実際真面目に論理的に推理なんてほぼしてません。ぶっちゃけ、謎が解かれてわーびっくり!ってなりゃそれでいいのです。

ただし、これがマーダーミステリーや推理イベントだと変わります。

G>A>B>C>I>H>E>>F>>>D

だいたい僕の嗜好はこんな感じだと思います。ブレストが本当に楽しい。そのために能動的に動くことが面白いのです。そして、これは僕の嗜好として、整理はできるならしたくないです。アリバイ整理とかあんま面白くないと思ってしまいます。でも、この整理、情報の波にのまれながら整理することを推理として面白い、と思う方は確実にいます。その両者が「推理が面白い作品」って言っても、それは違う方向性になるのは当たり前です。

で、それはどっちが上か下かの問題ではないと思うのです。それぞれの推理の好み、というのは意外と「推理重視」なんて言葉で説明はつかなくて、こういった要素の何を好むか、によって全然違います。

また、こう分類することの意味はもうひとつあります。作者の方、これらのそれぞれの要素をどう重視し、どう切り捨てるのか。たとえばBなんて、意外とマーダーミステリーにおいて雑にデザインされてませんか?と思うことがあります。トークンでカード引く、というのは本当にBにとって最適解ですか?実際、名作と言われている作品は、このあたりの要素の雑になってる部分にスポットを当てた作品が多いのでは?僕はそう考えています。

今回のnoteは、推理の面白さについて、でした。マーダーミステリーの面白さ、にまで話が広がると、もっともっと要素が増えてややこしくなります。ぜひ、推理ってものの可能性を狭めず、これからももっと「推理が面白い」マーダーミステリーの誕生を願っています!

(追記)僕が一番推理が面白かったマーダーミステリー

これを最後に書こうと思ってたのに忘れてました!僕が今までプレイした中で一番推理が面白かったマーダーミステリーは

ランドルフ・ローレンスの追憶

です!この作品は、映画のような物語体験、が評価されることが絶賛されることが多く、推理としての評価が各種アンケート見ると他の作品の方が評価されてるのをよく見ます。でも、僕はこの作品の物語体験を評価した上で、推理としても1番だと思ってます。その説明をする時に、なんと!上の面白さ分類の話が生きてきます。

自分でもランドルフのこと忘れて上の評価分類書いてたのですが、ランドルフの推理の何を評価してるかと言うとまさに

G>A>B>C

なんですね。意識せず書いてたのです。自分でもびっくりしたんですが。おそらく他の方はこれが違うことでしょう。だからこそ評価が違う。また、ランドルフのすごいところは、これらAからIの面白さの多くをカバーしている、というのも大きいと思いました。

この評価分類で自分の好きなマーダーミステリーの評価をしても面白いのではないでしょうか?






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