諸君、私は得点方式のマダミスが好きだ!
このnoteの結論は
「私、NOVAKは得点方式が採用されているマーダーミステリーが好きです」
という意志表明のみになります。
その上で、なぜそうなのか、をつらつらと述べてまいります。
いろいろ前置き
まず、1つめの前置き。
このnoteを書こうと思ったきっかけは、「とどちゃま」さんの
こちらのnoteでした。有料コンテンツですし、詳細は書きませんが、マーダーミステリーは「ゲーム」を失いつつあり物語への傾倒が強くなっている、という指摘でした。同意できる部分も多くありつつ、でもそのタイトルには抵抗したい部分もありつつ、何よりも、自分も常日頃思っているものを書きたい、という欲求を刺激されました。
2つ目の前置き。得点方式が採用されているマーダーミステリーが好き、だからといって、得点方式が採用されていないマーダーミステリーが好きじゃないわけじゃありません。まあ論理の基本ですが、結構ここはちゃんと言っとかないと、点数方式じゃないけど好きな作品がいっぱいあるのと矛盾するじゃないか!って言われそうなので。
3つ目の前置き
僕は得点方式のあるマーダーミステリーが好きです。ただし、得点を他プレイヤーと比べるマーダーミステリーは正直あまり好きではありません。というか、得点を比べる方式にして、プレイヤーが忖度なしに楽しく遊べるゲームデザインになっていることはとても稀だと思っています。
得点比べる方式だとした場合、「そのアイテム欲しいからください」って言われた時、勝利を目指すためには、どーでもいいアイテムでも、自分の得になる要素がない限り渡さない、が正解なわけですよ。本当に楽しくできます?そのゲーム。いや、言い方が違いますね。本当に楽しいようにデザインされてます?そのゲーム。もちろんそこをあえて成立するように、交換や開示を制限するようにデザインしたゲームもありますが、本当に稀です。
僕は自作「殺意の特異点」のルールには
と最初のテストプレイ時に記載しました。最初のテストプレイの時にこの一文はとてもプレイヤーさんに納得してもらえたので、ここは一切それ以降変えていません。
なお、これは、PvPの否定では決してありません。犯人と探偵、のように、目的が相反することによって、PvPは生まれます。ゲームデザイナーは得点を用いて、PvPをデザインすればいいのです。
では、こういう疑問を持った方もいるのでは?
だったら、得点じゃなくていいんじゃないの?
そう、得点じゃなくてもいいんです。でも、得点がいいんです、の理由を次の章から順序だてて話していきます。そう、ここまでは前振りです。
そもそも、マーダーミステリーの面白さって何?
順序立てて、ってそもそもそっから話すんかい、みたいな話が始まりました。道のりは遠そうです。ゆっくりお付き合いください。
これは以前自分tweetしたことがある内容なのですが……
僕は、マーダーミステリーの面白さは、以下の3つの要素で構成されていると思っています。
・物語体験
・物語解明
・物語発生
です。
※超余談ですがこの時のtweetを拾ってじゃんきちさんがインタビュー受けててびっくりしました
「物語体験」とは、そのシナリオで提供する物語を登場人物として体験する面白さ。「物語解明」とは、そのシナリオの解明されていない秘密を解明する楽しさです。「推理」と言い換えてもよいでしょう。幅を広くもたせるためにそう表現しました。ここまでの2つはわかりやすいのではないでしょうか?
さて、残るは「物語発生」です。
物語発生、はすごく平たくいえば、その回の参加者の行動によって生まれるその回ならではの物語の発生です。「ドラマ」と言い換えてもいいかもしれません。マーダーミステリーとは、プレイヤーの行動によって、その回ならではのドラマが生まれます。
これは与えられた筋書のない「ゲーム」でも発生します。将棋や、スポーツなど。つまり、とても強く、「ゲーム」と密接にからんでいる要素です。
マーダーミステリーやってて、自分たちの回ならではの物語が紡がれた、って言いますよね。そして、いろんなGMさんが「自分たちの物語を紡ぐのが最終目的です」っていいますよね。あれです。
では、この物語発生と得点方式がどうからむのか。
物語発生の面白さ
物語発生させるためには2つのアプローチがあると思っています。
A プレイヤーが意識して物語をつくりあげる
B プレイヤーが無意識のうちに物語がうまれている
Aにおいては、プレイヤーが意図したアドリブであったり、演技を含むロールプレイによって、物語が生まれるケースがあります。
Bにおいては、プレイヤーが目標を達成するために行動した結果、そこに揺らぎがうまれ、その回だけの物語が生まれるケースがあります。
もちろん、ABどちらにおいても素晴らしい物語が発生し得ます。
ただ、問題があります。
Aには当然、ハードルの高さがあります。たとえ台本があっても演技は難しかったりするのに、それをアドリブで話すというのは相当な難易度です。もちろん、できないわけではないですし、これでキャラクターの気持ちになって素晴らしい物語を紡ぐ方々を僕もGMとして何度も何度も見てきました。
しかし、どうしても難易度が高く、ハードルの高さとともに、どうしてもその意識された演技(しかも素人)に茶番ぽさを感じる人も中にはいるでしょう。観客を意識しながらキャラクターを演じる、という行為は誰にでも自然に出来る行為ではありません。
一方、Bはどうか。基本的にプレイヤーは、目標、得点を目指してプレイしてもらうのです。そして、プレイヤーとキャラクターの気持ちをマッチングするためにゲームデザイナーは目標やそしてその重みづけとして得点を設定するのです。そのことによって、プレイヤーはゲームのプレイ=RPとして自然に物語を生み出せるのではないか。
そう、BはRP関係ないのではないのです。BこそがRPの本質ではないでしょうか?
自分はそう考えます。その場合、得点とは、プレイヤーとキャラクターをつなぐRPの架け橋なのです。そして、得点とは、そのキャラクターが紡ぐ物語の魅力を、プレイヤーに丸投げするのでなく、ゲームデザイナーとしてバランスを取り、物語発生に責任を持つ、という意志表示だと思っています。
この、プレイヤーが自分のキャラクターの目標を意識して(得点を多く得られるように)プレイした結果がその人たちだけの物語になる。僕はこれこそがマーダーミステリーの最大の魅力である、と考えています。
もちろん、目標だけでも充分それを伝えられているマーダーミステリーゲームは沢山あります。それはそれで素晴らしいことです。それを自分たちの解釈でキャラクターとして作り上げることができ、素晴らしい物語を作り上げた。それは作者、GM、プレイヤーの努力によってなしえたものです。これを否定するものではありません。
ただ、それと得点は決して相反しないと考えますし、得点があるからこそ「物語」という外側の要素を意識せずにプレイヤーはそのキャラクターの価値観をあわせ、キャラクターと一体となってプレイできる部分もあるのでは?と考えています。そして、1人のキャラクターが複数の目的をもってその優先度、重みづけをプレイヤーとして意識することで、その外側、姿にキャラクターとしての行動として現れる。そこにこそ得点の意味があると考えています。
数字化そのものに抵抗する方がいらっしゃるのもわかります。ただ、僕は数字によってキャラクターをイメージするプロセスが大好きなのです。わかってくれる方は少数かと思いますが、初代の光栄の三国志で、諸葛亮孔明の知力が100で、99のキャラクターはいなくて、98に他の軍師たちがいる、これこそが数字によるキャラクターデザインだ!と萌える人間なのです。
……話がそれましたw
だから、僕はこの1点の重みの差にこそ、ゲームデザインを感じます。
この1点を捨てて他を選ぶべきなのか、1点にこだわるのか。それは、そのキャラクターの人生、価値観のモデル化です。テーマをどうモデルに落とし込むか。それによってプレイヤーたちがどう物語を意識せず物語をつむげるのか。これぞ物語発生のゲームデザインではないでしょうか。
また、得点により、近視眼的になることもあるでしょう。でも、それでいいのです。引いて物語を見られるのは、終わった後でかまわない。これに関して次に述べます。
マーダーミステリーの「目的」
マーダーミステリーの説明の時に多くの場合、以下のような説明がなされます。
その通りだと思います。だが、この説明は少し、不十分だと自分は思っています。
プレイヤーとして、キャラクターの願いをかなえてあげるために重要度を得点化し、それを目指す、というプレイ中の目的。
プレイ中は意識しないけども、終わってこの物語を振り返った時、この回ならではの素晴らしい物語を得られている、という最終的な目的。
この2つは意識するタイミング、レイヤーが違うのです。
プレイしている時に「物語を紡ぐこと」を果たして意識してもらうべきなのでしょうか?もちろん、雰囲気をこわしたら他の人を過度に攻撃してもらわないように意識をしてもらうことは重要です。ただ、「物語」という外側の存在を意識せず、あくまでキャラクターとして重要だと思うこと=目標=得点を目指してプレイしてもらって、そのことによって結果的に「最大の目的」である「物語を紡ぐこと」ができたら、素晴らしい物語がうまれたら、それはそれはもう素晴らしい奇跡だと思いませんか?
そして、僕はその奇跡こそが、マーダーミステリー最大の魅力である、と考えています。そしてその奇跡をプレイヤーとしても、GMとしても何度も目撃してきました。そのためには、プレイヤー=キャラクターとしてRPするために得点に機能してほしいし、ゲームデザイナーにはそこにこだわってほしい、と思うのです。(こだわった上で得点方式を選ばない、という選択も同時に尊重します)
だから………
諸君、私は得点方式のあるマダミスが大好きだ!
以上になります。
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