ひとつもない
僕にしか見えない地図を広げて眺めていた。
すると、気付いた。
あぁ、たくさんの人を傷付けてきたなって。
あぁ、たくさんの人を傷つけるんだなって。
あぁ、もう誰も傷つけなくないなって。
………………
目の前の湖に、白色の街灯が映っていた。実際の街灯は明るすぎて見れないが、水面に映った街灯はちょうど良い明るさで美しく見えた。でも、水面の街灯は掴み取れない虚像だった。
ふと思った。
僕は水面に映る街灯を追いかけている方がいいんじゃないか。
明るすぎる街灯は掴み損ねて、もう掴み取れないんじゃないか。
水面の街灯が分相応ということじゃないか。
虚像であっても、嘘であっても、もう誰も傷付けない。
息を殺して。じっと。じっとしているんだ。
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