見出し画像

アルゼンチンの金物屋さん

1.perdon no castellano

『すいません、スペイン語が話せません。』

アルゼンチンでお店で買い物する時、まず自分が言葉を話すことができないことを伝えることにしている。いきなり話しかけられても困るので、まずこれを発信することを自らのマナーとしている。  
それでも話し続けてくるお店の方もいるので、わからない場合はそのまま退散する。まだ、そこを乗り切る会話力を持っていないので仕方ないが、受け入れてくれるお店を探すしかないという手段。

2.金物屋(Feretteria)での出会い

ある日、湯沸かし器が故障してお湯が噴出して部屋(キッチン)を水浸しにしてしまった。買って取り付けたばかりなので、その取り付けの人に連絡を試みるが一週間以上かかるという返信。湯沸し器がないということはシャワーがない生活を一週間強いられるという現実。途方に暮れながらも何とかできないものかと考えたところ、近所に金物屋があることに気づく。
言葉がわからないながらも、家で周辺画像を撮って勇気を出してお店に飛び込んで聞いてみることにした。

3.気立ての良いご老人だった


画像はお借りしたものです


お店に入って過少箇所を画像で見せながら、固定したい場所を伝えて結合部分に合いそうな固定リングを購入してみる。だが、湯沸し器の給湯の圧力に耐えられず、突貫工事テイク①は失敗に終わる。
そしてまたお店に走って(徒歩3分)どうにかできないか相談する。結合箇所ではなく、お湯を供給するパイプごと交換するという提案だった。
そのご老人は、言葉のわからない日本人に接続の順番を丁寧に説明してくれたので、その知恵を頼りにパイプを購入して家に戻る。

4.なかなか上手く繋ぐことができない

日本ではDIYが苦手なタイプだったので、聞いた通りにやっても上手くいかないという予想通りの展開。今ならもう一回聞けるだろうと、またお店に走って(徒歩3分)どうしても繋がらないことを伝えて、軽くお店に助けを求める作戦に出た。

5.助っ人の登場

いろいろやりとりしているうちに、お店の奥からスパナを片手に若者(息子さん?)が登場した。おそらく、家まで来てくれるという話なんだろうと思う。出張費用とかもろもろの不安はあったものの、これが一番早い方法だと思って流れのままに家まで案内することにした。
安全面や他人を家に入れることの危険度の懸念もあったが、お湯のない生活から逃れられるなら、という思いでいっぱいだった。

6.そして若者も気持ちの優しい男だった

作業時間は5分ちょっと、あっという間の出来事だった。結合部分の余計な金具を外すという作業に気づけなかっただけのこと。さっと取り付けた後は「Chao!」とだけ言って帰っていった。
他の用事を済ませつつお店にお礼に伺ったが、夕方16時でお店は営業終了していた。閉店間際に余計な出張をさせてしまっていたのだった。

7.翌日お店にお礼に行くと

気立てのいいご老人の姿はなかった。我が家に来てくれた若者の姿があったので、出張費用の話をしたら「いらない」とのことだった。なので、部屋の懐中電灯用の単一電池4本を買ってお礼とさせていただいた。こういうものが結構高価だからお店に貢献できたと勝手に思っているが、そういう気持ちが伝わったかどうかはわからない。

8.こういう出会いが貴重な経験

言葉がわからないことを蔑視しないこと、簡単な様だけど自分が日本でそうしていたかというと自信がない。そんなことよりも聞こうとすること、伝えてあげたいという気持ちに気概を感じた瞬間だった。
湯沸かし器で困っていることが伝わって、勇気を出して何とかしたいという気持ちを出していって良かったと思う。何回も金物屋を家を行ったり来たりするのも滑稽でしかないけど、笑わずに受け入れてくれた。
近所の金物屋だけど、これからここを使っていこうかなって思う。せっかく出会えたこの機会を大事にしたいって思った瞬間だった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?