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2022年7月の本棚

7月に読んだマンガたちを発売日順にまとめていきます。


正反対な君と僕 1巻 / 阿賀沢紅茶(集英社)

いつも元気だけど空気を読んで周りに合わせてしまう女子・鈴木と、自分の意見をしっかり言える寡黙なメガネ男子・谷くん。正反対な二人が織りなす共感必至のラブコメディ

ジャンプ+連載の超注目作。今月の最初にして最大の楽しみでした。鈴木がもうとにかく表情豊かでキュート。谷くんも慣れないながらも真っ直ぐで誠実。
不器用でいじらしくても、相手を理解しようと歩み寄る二人の恋愛模様を応援せずにはいられません。

ラブだけでなく、コメディも充実、というかエッジが効いていて大好きです。クスッとくるシーンがいくつもあって感情がジェットコースター状態のまま、とてつもない幸福感に包まれている作品。脇役も皆んないい子たち。電子版だと連載時のカラーページがそのまま収録なので読むなら電子版がおすすめ。もちろん紙でも買いましたが。

作者の阿賀沢紅茶先生のお人柄がそのまま作品に反映されてるような感じなのでTwitterや Instagramも要チェックです。


恋人以上友人未満 1巻 / yatoyato(集英社)

地元に帰ってきた元AV女優の宮子は母の勧めでお見合いをすることに。しかし、そこで出会った相手は共演したこともある元AV男優だった。清楚なキャラとして売っていたAV女優とオラオラ系で売っていたAV男優がそれぞれ素の状態で再会した時、斯くもピュアッピュアなラブコメが始まる。

恋人以上で友人未満というよくある言い回しのようで、そうない二人の関係が面白い。知ってる人の知らない部分が知られていく微妙な心の距離感が上手く描かれているように思えました。多分リアルのAV俳優の恋愛とは掛け離れている。


株式会社マジルミエ 3巻 / 岩田雪花・青木裕(集英社)

大手化粧品メーカーの魔法少女・リリーと協働業務にあたるカナ。自分より美しく、自分より有能な他の誰かを前にした時に感じる劣等感。魔法少女として働くとはどういうことなのか。現場で成長していくカナを応援したくなる第3巻。

魔法業界EXPOでの一件はエンジニアたちの活躍でなんとか無事収束したものの、カナの上司、重本社長と因縁がありそうな超大手魔法少女企業アストの社長・古賀。大きな事件が起こる予感。


怪獣8号 7巻 / 松本直也(集英社)

四宮長官と融合し、より強大な存在となった9号を前に、圧倒されるカフカたち防衛隊。9号によって作り出されたという10号を兵器化しようとする保科副隊長。かつての最強怪獣6号の兵器の適合者候補として名前が上がったレノ。戦力を整えていく。

本当にもうずっと一生9号との戦いが続く。そういう作品と言えばそこまでなんだけど「①9号強い!→②カフカたち頑張る→③9号逃げる→④逃げるな卑怯者!」の流れが永遠に続きそうな上に、9号を倒したとしても11号12号と出てきそうなのがちょっとつらい。人気作の宿命か。


サマータイムレンダ2026未然事故物件/ 田中靖規(集英社)

ハイネとひづるが出会った破格の物件は、”これから何かが起こる”という「未然事故物件」だった。部屋の調査を買って出た二人が体験する奇妙な現象の記録。

『サマータイムレンダ』本編で十分に描けなかったというハイネとひづるの友人としての日々をこういう形で読めてよかったです。ホラー要素はありつつも、二人がそれを全力で楽しんでいて、もはや微笑ましかった。『岸辺露伴は動かない』みたいな感じでシリーズ化してほしいなー。


さよなら絵梨 / 藤本タツキ(集英社)

タツキ先生の次なる読切は映画を撮る少年の話。母の最期を撮ることを託された優太は、母の死後、絵梨という少女と出会う。彼女が満足する映画を制作をすることになった優太だったが、絵梨は”ある秘密”を抱えていた。

展開はタイトルの通りなんですが、その内容のどこまでが現実で、どこからが映画の中の話なのか、はじめから全部優太の妄想なんじゃないか、とか、そもそもこの作品自体タツキ先生の創作だし、とか、すべての境界が曖昧に描かれ、エクスプローションして、最後はもう拍手するしかないような。そんな感じでした。

考察とかは知りませんが、どうやらオマージュした映画があるそうで。でもオマージュしてこんなものを生み出せるってやっぱり凄まじいですね。

待望の第二部もスタートし、TVアニメの情報も解禁間近な『チェンソーマン』についても楽しみで、ますます目が離せないタツキワールド。


Dr.STONE 26巻 完結 / 稲垣理一郎・Boichi(集英社)

完成したロケットで月面までやってきた千空たちが目の当たりにする”ホワイマン”の正体。そして”彼ら”の望みとは。石の世界を生きる科学冒険浪漫、堂々完結!!

千空たちの旅は一旦完結したけど、これが終わりじゃなくて、科学はこれからの未来にずっと続いていく。100億%フィクションで、でも現実と地続きなこの壮大な物語に出会えて幸せでした。TVアニメ3期も楽しみです。

石上千空
石の世界に、ゼロから文明を築いた科学者、石上博士。
新世界で彼はこう呼ばれた。
Dr.STONE

『Dr.STONE』26巻 p.201

(↑こういうの大好き)


トリリオンゲーム 4巻 / 稲垣理一郎・池上遼一(小学館)

メディア帝国建国の足掛かりとして調達した軍資金20億円を芸能事務所ゴッド・プロモーションの買収に使い切ったハル。初めて生まれるハルに対するガクの微かな反抗心。最初からダミーだったというソシャゲ開発事業のメンバーと共にガクはハルに「本気のケンカ」を仕掛けるため水面下で動き出す。

スケールはどんどん膨れ上がっているけど、その中でも個人個人が大きな目標に向かって動いているのが気持ちいい。頑張るガクのさらに先を動くハルが目指す先を見届けたい。唆るぜ、これは。


妹の友達が何考えてるのかわからない 3巻 完結 / 玲。(一迅社)

最終巻。ちょっと無難な感じの終わり方でしたが、最後まで描き切ってもらえたので文句なしです。つゆちゃんは最後まで可愛かった。正直、連載がしんどいんだろうな〜という雰囲気はちょっとあったと思う。お疲れ様でした。


SANDA 4巻 / 板垣巴留(秋田書店)

「サンタクロースは子どもの願いに逆らえない」。サンタクロースの背負う呪いに雁字搦めにされる三田は真の強さを求める。大人になる前の美しい子どもの時間を祝う「未成人式」の会場で、子どもたちの願いは叶うのか。

今回はちょっと「溜め」の巻だった印象。


ババンババンバンバンパイア 2巻 / 奥嶋ひろまさ(秋田書店)

李仁くんの童貞を狙う吸血鬼の森さんが気になる葵ちゃん。森さんが学校での李仁くんのボディーガードとして支配下に置いたチンピラ童貞のフランケン先輩は実は葵ちゃんの兄で、長年、森さんを狙うバンパイアハンターで李仁くんの担任教師の坂本先生は本当は森さんに童貞を奪ってほしいと言う。

一体どこへ向かっているのかという程のカオスなキャラクターとその関係。「BL」と書いて「ブラッディラブコメディー」と読む。ちょっとかなり好きな面白さです。


きみとピコピコ 3巻 / ゆずチリ(秋田書店)

夏休みにゲームをやりにアゲハさんの家に来てしまったオタくん。明らかにヤクザの家かと思ったら建設会社だったということで一安心。しこたまゲームをやることになったのでした。

新学期にはゲームを一切やったことのない部活動調査員のチョロいライバル(?)も現れ、アゲハの嫉妬心とゲーム愛が燃え上がりそう。ただ、鶴先輩と部長の恋仲の方が面白かったりする。


可愛いだけじゃない式守さん 14巻 / 真木蛍五(講談社)

式守さんに噛み付く後輩の隼瀬さん。そんな彼女の中学時代、自分にも周囲にも嫌気が差していた時期に、手を差し伸べてくれた式守さんとのエピソード。胸が締め付けられるほどにやるせなさとそれを包み込む優しい強さ。

式守さんと和泉くんの関係と、式守さんと隼瀬さんの関係が重なるシーンがよかった。二人にとっての式守さんは間違いなくヒーローなのかもしれないけど、式守さんに二人を救ってあげているという感覚は一切ないのが良いんですよね。人は一人で勝手に助かるだけ。


ブランチライン 4巻 / 池辺葵(祥伝社)

仁依と山田の仕事に対する姿勢と人間関係が素敵で大好き。誰かのことを「宝もの」と言える仁依の真っ直ぐで偽りのない強靭な魂。本人もおそらく自覚していない山田を想う気持ちを、家族のみんなはちゃんと気づいていて、でもそれを本人に伝えたりせずそっと見守ってあげようとする。いい。

「いつも幸せでいてほしい子なんだよね やさしすぎる子だから」なんて、誰かにこんな風に想ってもらえたら、それだけで何だって出来てしまいそうになる。
いろんな人がいて、その全部が違う中で、自分の「宝もの」を見つけていきたいと思う日々です。

私もリアルではたくさんの人と
関わりたいとは思わないんだけどな

いろんな人が生きているということは
知っていたいんだな

違う声で
違う姿で
違う価値観で
違う毎日を生きているのがおもしろい

自分もちょっと自由になれる
もう自分の視野の狭さで誰かを縛りつけたくないからな

月子さんはその中で私が見つけた宝ものだ
山田も私が見つけた宝ものだ

八条寺仁依/『ブランチライン』4巻 p.25-29


吾輩は猫であるが犬 1巻 / 沙嶋カタナ(祥伝社)

前世が犬だった猫は心優しい少女に拾われる。かつて飼っていた犬との思い出を忘れられない彼女のために、立派な犬のような猫になると誓う一匹の猫の物語…という表題作の他、心温まる犬猫エピソードを描いた短編集。

普段あまり触れない「動物視点の作品」だったので新鮮で面白かったし、普通にちょっとウルッと来ちゃいました。ペット、特に犬猫を飼っている人、飼ったことのある人はハンカチが必要かもしれません。


河畔の街のセリーヌ 1巻 / 日之下あかめ(マッグガーデン)

舞台は19世紀フランス。”先生の教え”だけを頼りにパリへと上京した14歳の少女・セリーヌは一人の老紳士と出会う。彼は言う。「パリの街とそこで働く人々についての本を書くために『目』を貸してほしい」と。斯くして様々な職業を体験し、それを記録していくこととなったセリーヌ。パリの街角で紡がれる職業体験記。

史実には残らない。絵画にも描かれない。そんな街角の些細な景色や人々の暮らし。生きていくなかで取りこぼしてしまいそうなそれらが一人の少女の視点で鮮やかに描かれていきます。好きなテイストでした。


映像研には手を出すな! 第7集 / 大童澄瞳(小学館)

作品を見る「誰か」の立場を意識して、今一度物語作りを考える浅草氏。自分の作ったアニメを見た人たちが何を感じ、どう思うのか。想像と実感の旅は続く。

ワシは人と話すのが苦手だけど、
ワシのアニメを見た人達が
何を感じているか知ることができれば、
人間のことが知れるかもしれないと思っているのだ。

ワシはこれからどこへ行くのか。
これから何を見るのか。

浅草みどり/『映像研には手を出すな!』第7集 p.70


GLITCH-グリッチ- 1〜2巻 / シマ・シンヤ(KADOKAWA)

『ロスト・ラッド・ロンドン(LLL)』のシマ・シンヤ先生の新連載。とある町に引っ越してきたミナトとアキラの姉妹は、学童で出会ったイト、ケイの二人と一緒に町に現れる「奇妙な影」について調べ始める。静かな町に起こり始める小さな異変(グリッチ)。町が抱く謎の正体とは。

『LLL』で描かれたシマ・シンヤ・ワールドがちょっとSFチックになって再び味わえる。内容は『電脳コイル』的な感じでしょうか。あとはキャラクターたちが多様性満載。ミナトとか、見た目完全にお兄ちゃんかと思ったらお姉ちゃんで驚いた。

見た目が違う
話す言葉が違う
そういうことで勝手に怖いと思うのは
偏見だ

ケイ/『GLITCH-グリッチ-』2巻 p.25

作中のケイの言葉でもあるように、大なり小なりの「多様性」についても『LLL』と比べてもう少し濃く、踏み込んで描いていくのかな?背筋を正して読んでいきたい作品になりそうです。


Gutsy Gritty Girl -ガッツィ・グリテ・ィガール- / シマ・シンヤ(KADOKAWA)

『LLL』からの『GGG』。シマ・シンヤ先生の短編集。一作目の表題作から切れ味バツグンでした。前日譚が嫌いな人はこの世にいないと思ってますし、何より装丁がもう最高にクール。表紙が見えるように飾っておきたい。


舞妓さんちのまかないさん 20巻 / 小山愛子(小学館)

大台の20巻。屋形の仕込みさん・理子の店出し(舞妓デビュー)回。心配するめがねさん姉さんのソワソワ感が微笑ましい。なんだかんだ、この先輩後輩関係が尊くてやっぱり好きです。ずっと思ってるけど「めがねさん姉さん」って呼び方も好き。健太への想いがどんどん大きくなるすーちゃんはもう言わずもがなに大好き。


花とくちづけ 5巻 / 七都サマコ(講談社)

順風満帆の咲人さんとかすみちゃん。進路調査や同級生男子の登場と若干の壁はありつつも、二人のいちゃラブは加速する一方。もはや高校卒業即入籍でもいいレベルだけどそれじゃダメですよね、物語的に。


R15+じゃダメですか? 1巻 / 谷口轟・裏谷なぎ(講談社)

親にあらゆる娯楽を禁止されてきたが故に、同年代の子と比べてドラマなどの「刺激的なシーン」へ対する耐性が極端に低い主人公の天羽秋音(あまう あきね)。ひょんなことからクラスメイトの映画オタク・冬峰の所属する映画研究会の部室で、様々なジャンルの「R15+映画」を観ていくことに。

登場する作品もどれも面白そうだったし、映画開設マンガとしても十分楽しめる作品でした。二人の先輩として出てくるキャラクターが「相手の身体を舐めるとその人が48時間以内に観た映画(ほかのエンタメ映像作品含め)がわかる」という謎の特殊能力も持ち合わせていて面白い。ブチャラティかな?しかも巨乳である。

秋音ちゃんの毒親がどれほどヤバいかで作品全体の味も変わってきますが、1巻としては大満足の面白さでした。ただ、思春期とかに抑制されたものは大人になってからマイナスな方向に爆発しがちとよく言うので程々にしておいた方がいい気はする。


海が走るエンドロール 3巻 / たらちねジョン(秋田書店)

芸祭後、空くんの存在によって波立つうみ子さん。彼の影響で芸能界にも足を踏み入れていく海くんとの映画制作の話も思うように進まず、課題やバイトと忙しい時間を過ごしていく。そんな中で考える、自分が「映画に拘る理由」。想像していたより遥かに広く深い大海原で、対岸を探す航海は続く。

うみ子さんの生き方が素敵で、安心して読めている気がします。本人の心はザワザワしてますが、年の功というか、人柄というか、自分の気持ちの落とし所を上手く見つけている感じ。なんやかんやあるけど生活は続くので、そういう折り合いの付け方は見習いたい。でもそうやって生きていた中で諦めてきたものとかを今、拾っていっているんだろうな〜と考えると、良い老後を過ごされてるなと思う。


夜の名前を呼んで 3巻 / 三星たま(KADOKAWA)

少しずつ成長していくミラの姿に驚くばかりな第3巻。正直、何巻か飛ばした?ってくらいの成長を見せてくれている。

好きな絵本作家さんとの回はもうちょっと泣きそうになった。ああいうのに年々弱くなっていく。


よふかしのうた 12巻 / コトヤマ(小学館)

マヒルの家庭は想像以上に歪んでいた。彼との仲直りを望むコウの前に現れたキクの元眷属だという男と、キクを消し去ろうとする吸血鬼の女。そして半吸血鬼化が進むコウ。ここにきて繰り広げられる壮絶なバトル展開に息を飲む。

TVアニメスタートに合わせての嬉しい二ヶ月連続刊行。今までもバトル展開はちょくちょくあったけど今回は特に多めでした。コトヤマ先生、動きがある画を描くの絶対好きでしょ、と常々思っています。覚醒したコウが強そう。


ゴールデンカムイ 31巻 完結 / 野田サトル(集英社)

最終巻。内容についてはもう言うことないでしょう。文句なしの大団円です。好きなキャラクターは漏れなく全員ですが、最期のシーンで一番涙腺にきたのはチンポ先生こと牛山辰馬かもしれない。今まで感情移入するシーンが少なかったけど最期まで漢らしくて格好いい。ずるい(大体みんなそう)。

最終話で杉元と並んで歩くアシ(リ)パさんの少し大きくなった後ろ姿とかも地味ながら物語を締めくくる描写として大正解で大好き。そして最後もぶちかましていく白石という男。愛してるぜ…。ありがとうゴールデンカムイ。ありがとう野田サトル先生。

『ゴールデンカムイ展』にも無事行くことができました。超濃厚だった。


スケバンと転校生 1巻 / ふじちか(双葉社)

転校生の神崎凛々は校内でも恐れられているスケバンの南雲あつ子に「かわいい言葉」を言わせたいという変な西壁の持ち主。でもその真意は、実は淡い恋心で。彼女に振り回されるあつ子もまんざらだでもない様子。80年代を舞台にした百合ラブコメ。ちょっとノリが合わなかったかもしれない。


メダリスト 6巻 / つるまいかだ(講談社)

白熱する中部ブロック大会。高難度の連続ジャンプを成功させるライバルに対抗する唯一の手段は、今跳べるジャンプ全てをハイレベルかつノーミスでクリアすること。司との金メダルの約束を果たす為、そしてその先に待つ光に挑む為、いのりが奇跡の下克上を見せる。

夜鷹純が大っ嫌いだから早く鼻っ柱をへし折ってほしい。


ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ 4巻 / ナガノ(講談社)

アニメも絶賛放送中のなんか小さくてかわいいやつの第4巻。今回は感動の「パジャマパーティーズ」回や「ほめられリボン」回が収録。「ハチワレの一日」も特に好き。

ただ、Twitterの連載と話数の差がかなりついているから正直「やっとか」感は否めない。次巻やっとオデ登場だしね。表紙の登場キャラクターが枯渇する日が来そう。


ポラリスは消えない 2巻 / 嶋水えけ(スクウェア・エニックス)

死んだ推しのアイドル・ソラの姿で世に出る主人公・ミズウミ。芸能事務所に目をつけられ、ソラが生前所属していたグループ「ポラリス」の再結成のために動く。

1巻の時の狂気さみたいな雰囲気はちょっと薄まって、流行りの(?)芸能界マンガみたいな流れになってきた感じがしなくもない。


落ちこぼれ召喚士と透明なぼく 1巻 / 漆原雪人・藤近小梅(ブシロードクリエイティブ)

この世から存在ごと消えてしまった妹を探す平凡な少年・歩は、とある古書店でマシロという見習い召喚士の少女と出会う。彼女は物語の世界の住人を呼び寄せ、使役することができると言う。妹の失踪に異世界が関係していると踏んだマシロと手を組むことになった歩は様々な物語の世界を渡る。

作画・藤近小梅先生(『好きな子がめがねを忘れた』『隣のお姉さんが好き』)ということで読んでみた一冊。有象無象の異世界作品とは一味違いつつも、拭いきれない異世界感と歩のラノベ主人公っぽさから、ちょっと読むのに苦労した感じでした(異世界アレルギー)。でも切り口自体は面白かったです。あとマシロちゃんがかわいい。


僕の妻は感情がない 5巻 / 杉浦次郎(KADOKAWA)

タクマとミーナの新居の隣に住む女子高生・絵里栖。”アンチロボット"的思考を持つ彼女は実は自分自身もロボットだった。所属する学校のクラブ『ロボットを町から追い出す会』で話し合われるロボットとの向き合い方について。

人間のパートナーは人間であるべきか、そうでないか。主人公たちの幸せな生活描写とは別の場所で、作品のテーマについて深く踏み込んで描かれていて考えさせられました。

私たちはロボットがいることで
必死に苦労しなくても心を満たせるようになる
満たせないことで苦しまなくてすむようになる

代わりに失うものもあるでしょう
でも私はそうあるべきだと思います

心が満たされたあとの社会
その向こう側に行けると信じているからです
この子たち(ロボット)と一緒ならね

小野美智香/『僕の妻は感情がない』5巻p.155


しょうもないのうりょく 3巻 完結 / 高野雀(竹書房)

「他人の異能がわかる」星野さん「不老不死」の藤原さんは晴れてお付き合いをすることに。慣れない二人の交際模様も描きつつ、いつものテンションで社内外の人間模様を描かれる最終巻。

設定を根底からひっくり返すようなラストだったのは意外でしたが、現代社会において、性格や特性も「異能」と言い切ってしまえば、楽だったりするし、結局捉え方次第なのかも。「みんな違ってみんな良い」ということで一つ。


ななどなどなど 1〜3巻 / 宇崎うそ(芳文社)

陰キャを極めたワガママ不登校お嬢様・玉村小町を更生させるべく派遣されてきたのは、高性能交友用ヒューマノイド「7D-O型」通称「ななど」

ななどに連れられ再登校を果たした小町と友達になってくれたのは、可愛い見た目で内気な廃課金ゲーマー・吉岡るると、そんなるるガチ恋勢の社交的陽キャ・高山萌
生粋のぼっち気質でプライドだけは高いポンコツお嬢様は楽しいスクールライフを送ることができるのか!?

久しぶりに手に取ったきらら作品は、イラストレーターとして認知していた宇崎うそさんの連載作でした(きららで連載していたと知らなかった)。

メインキャラたちがとにかく立っていて、関係性も絶妙。きらららしい「微百合(あくまで読者目線での表現で、萌のやってることはガチ百合のそれ)」要素もありつつ、「AI」テーマならではの友情描写も程良くありつつ。
ギャグの温度感も個人的に大好きな部類でした。作者のユーモアセンスがそのまま反映されているような感じ。根が面白い人がやるボケに思わず笑わせられる、みたいな(伝われ)

いわゆる「萌え4コマ」の域を超えた、かなり満足度の高いドタバタ陰キャコメディでした。100点!

この重版出来ツイートの「再び刷りますわ!!」の台詞が妙にツボに入ってしまい、購入の最後の一押しになったので、作者の方は何でもかんでも宣伝ツイートしていくべきだと改めて思いました。

(かわいい)


ぷにるはかわいいスライム 1巻 特装版 / まえだくん(小学館)

主人公・コタローが作ったスライム・ぷにるに命が宿り、ある日、かわいい女の子へと姿を変えた。思春期真っ只中のコタローとかわいいスライムのぷにる。二人(?)の関係はこれから進展するのかしないのか…?

公開後、ネットをザワつかせた「コロコロコミック史上初のラブコメ」が待望の単行本化。通常版を電子で、特装版を紙で購入しました(いつもの手口)。特装版にはかわいいぷにるのかわいいアクリルスタンドが付属!かわいい!
過去に読切で描かれた作品をテコ入れ(スライムを美少女擬人化する)してネットで公開したらバズったという例。かく言う自分もそれに乗せられまんまとハマりました。

各回ごとに違った「かわいい姿」を見せるぷにるがもう全部かわいい。「オモチャに命が宿る」という要素も『トイ・ストーリー』的でとても好きです。そこにフィーチャーしている回(結構長編)も連載版では登場します。「モノとヒトの境界線」という永遠のテーマみたいなものをしれっと扱っているのも凄みがある。

1話の最後に「これはスライムのぷにると中学生コタローがともだちじゃなくなるまでのお話…。」とあるのが何を意味するのか。かつてのコロコロキッズはもちろん、全人類に読んでみてほしい作品です。


うちの猫は仲が悪い / 谷口菜津子(KADOKAWA)

漫画家の谷口菜津子さんとその夫で漫画家の真造圭伍さん(『ひらやすみ』好評連載中!)が飼っている(正確には真造先生宅で飼っている)猫のフミ(10歳ウニ(3歳は超絶不仲。二匹がいつか仲良く寄り添い合うことを夢見る健気な人間たちの生活を描いたコミックエッセイ。

お二人がご夫婦ということは存じ上げておりましたが、あまり結婚生活を想像できなかったので、そこ目当てで買ってみたというのが正直なところです(実際仕事柄、別居婚らしい)。
でもお二人の生活スタイルがどこまでも「猫ファースト」で、愛に溢れていました。この考え方は動物(特に猫)を飼う上でとても大切だよな、と改めて感じたところで、もちろん溺愛するし、食べちゃいたいと思うけど、あくまで「猫がただそこにいる」というその空気感ごとを愛せる人が良い飼い主なんだろう、と思いました。

あと、谷口先生の近影がゲンガーみたいで好きです(どうでもいい)。


環境測定員さん / 鳴海アラタ(KADOKAWA)

人間界に捨てられた悪魔の女の子は環境測定員の人間に拾われ、育てられる。その人間をボスと呼び慕う悪魔は、人間の死後、環境測定員としての仕事を引き継ぎ、様々な環境測定の為に奮闘する。

「環境測定員」という職業がつまり何なのかは作中でも詳しく言及されていませんが、困っている人に手を差し伸べてあげる便利屋みたいな存在。「情けは人の為ならず」なお話でした。


セシルの女王 2巻 / こざき亜衣(小学館)

宮廷での己の無力さを知ったセシルは一度故郷に戻る。アンとエリザベスの力になるべく、大学へと進学するが、そこでもまた、それぞれの思惑が交わりあう。カトリックとプロテスタントが対立する宗教革命の時代を、セシルはどう生きるのか。




雑記

7月はなんと言っても『正反対な君と僕』と『ぷにるはかわいいスライム』という待望の2作の月でした。両方とも連載開始から1巻発売までのスパンが比較的短かった気がするのもweb連載故の強みですね(多分)。

そして一番のサプライズだったのが『ななどなどなど』。先月末の新刊チェック時には存在すら知らなかったので一番印象深いのはもしかしたらこれかも。こいつぁまた大好きな作品に出会っちまったな、と思いました。好きすぎる…

あとは単行本以外だと、『殺し屋Sのゆらぎ』の舟本絵理歌先生の新連載が告知されて、大喜びしました。秋頃からスタートとのことですので、早くて9月、遅くとも11月からでしょうか。楽しみです。

今月は、三週間に渡って開催される世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」を毎日遅くまで観戦していました。もう面白くて面白くて、マンガ読んでる場合じゃねえと思いつつも、いつもとほぼ同じペースで読んでました。

実際、自転車レースは平均5~6時間の競技時間の中で、日本で中継されるのは(日によって違いはあるものの)3~4時間とかで、その中でも1分1秒目が離せないわけではないので、何か別の作業をしたり、それこそマンガを読みながらくらいの片手間で楽しめるのが良いところ。
それでいて、風光明媚なヨーロッパの景色を舞台に選手同士の関係性やチームの戦略が複雑に絡み合い、肉体と精神を極限まで擦り減らしながらゴールを目指す。
もう、こんなスポーツ他にある?ってくらい魅力的なスポーツなのです。

話が逸れましたが、現実の世界も空想の世界も、心躍るもので溢れていて幸せだなと思う日々です。来月も楽しみだ。

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