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高校を出て建築系の専門学校に行き、設計事務所に就職したが半年で辞めてフリーターになった。
就職してからの半年間は短いようで長かった。
朝9時から夕方17時まで。卒業してすぐの僕には仕事が終わるはずもなく、何が終わりなのかもわからず日を跨いで事務所にいることも少なくなかった。建築は大好きだった。興味を持ったのは高校の3年生の時。本屋で島田陽さんの建築本を手にとってからたくさんの建物を見て回った。でも、建築がだんだん嫌いになっていた。
図面を見るのも、描く時もちっとも楽しくない。その頃はただただ苦しかった。誰にも言えなかった。言えない自分が悪いけれど悲しかったし、自分の存在意義を感じることができなかった。正直死んだ方が楽だと思った。気分が乗る日はいやいやながらパソコンと向き合える。気分が乗らない日はパソコンの電源のスイッチを押すのも嫌だった。パソコンの起動音が嫌いになった。このままこの仕事を続けていたら建築が嫌いになるなと思っていた。そのうちやることなすこと嫌いになるなと思った。
見兼ねた友人が助けてくれた。友人には本当に感謝してる。一度立ち止まって自分と向き合うことができた。何が本当に大事なのか。働くことのか。お金を稼ぐことなのか。食べることなのか。「これだ!」という結論は出なかったけど事務所は辞めた。

そんな時にTwitterで坂口恭平さんに出会った。恭平さんはまとまらないけど、作り続ける人だった。絵を書いたり、畑にいったり、セーター編んだり、ギターを作ったり、歌も歌う。本当に凄い人。真似をしようと、あいた時間で編みものを始めた。めんどくさいけど楽しかった。スヌードをつくった。編んでる時は生き生きしてた。慣れてくると手が勝手に動くようになり鼻歌なんか歌い出す。今は冬に向けたセーター作りの勉強中。

畑を始めた。きっかけは知り合いのお手伝い。
農作業はキツかった。同じ作業の繰り返しだ。
事務所よりは楽だった。開放感があって自由だった。それでもキツいのに変わりはなかった。お手伝いに行く内に空いてるスペースを貸してもらった。土づくりをして種を買って植えた。
芽が出たときに涙がでた。素直に嬉しかった。芽がどんどん伸びて枝が増え実がつくまでの過程はずっとワクワクしてた。はやく畑に行きたくて仕方なかった。最近収穫が始まった。
「自分で作った野菜を自分で料理して食べる」これほど幸せなことは無いと思う。生きててよかったと思った。野菜を作る。食べ物を作ることはこの先もずっと続ける。

ある時、畑を借りてる人から空き家を紹介してもらった。フリーターは家を買った。もちろんお金は貸してもらったけど。少しずつ改装を始めている。畑がついているからそこに住みながら暮らすつもりだ。

絵を描き始めた。これも恭平さんの影響。現代美術館で恭平さんの絵を見た。油絵だ。雨が降っていて気分は沈んでいたけど、絵を見ると元気が出てきた。見終わった後も雨が降っていたけど体は動きたがっていた。そんな恭平さんがパステルで絵を描き始めた。パステルか疑うくらい力強く繊細な絵だった。自分も描きたいと思った。すぐにパステルを買いに行った。それぞれ違う色の6本入りのサクラパステル3種買った。早速描き始めた。カッターで削りながら手の指を使って色を伸ばしていく。空の色なんかは複雑で青に紫や白、水色を混ぜたりして作る。手で描くのが楽しい。今は7枚目。
1日1枚ペースで描いている。猫が多い。猫は好きだ。動物の中で1番僕と似ている気がする。

今は週に5日のバイトで食い繫いでる。
月に12万くらいの稼ぎ。生きていけるから充分だと思ってる。もう少し「つくる」ための時間が欲しいと思ってる。何かを作っている時、気分に関係なく体が軽い。心から楽しいと思える。今の仕事は全く苦では無い。むしろ楽しいくらいだ。だか、週に5日も働くと作るための時間はなかなか確保できない。

僕の理想は毎日同じペースで暮らすこと。
そのためには今の仕事も考えないといけない。
今後の目標は「生業を作ること」。
生きていくために必要最低限のお金を稼ぐこと。

そんな僕は今日で23歳。
我理想主義者也。

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