無題

サイコキラーだ、一体なんだそれは!
逃げろ逃げろ逃げろ

僕は野球が嫌いだった。小学生のうちは野球がうまければ放課後のヒーローであって習い事を一つもしたことない僕は人数合わせの1人で8番か9番。守備位置はレフトかライト。野球は好きじゃないけれど学校という組織で円滑に過ごすにはそこにいた方が良かったあの嫌悪感を思い出してしまった。ボールが僕の顔面に当たって止まらないほど鼻血が出ている様をピッチャー中心に味方チームも含めケタケタ笑っている様子も思い出してしまった。もう学校へ行きたくない。帰ってそう家族の前で打ち明けると父親の車で最寄りのコンビニに連れ出され、「何かあったのか?」。僕が少し黙っていると「行かないとそいつらに負けたことになる」。そう言われて僕は、何かあったのか?の方の質問だけに「何もないけど、面倒臭くて」と答えた余計な記憶を思い出してしまった。
よく野球をしていたその公園に久々に行く機会があった。あれだけ果てしない嫌悪感と閉塞感で大きいと思っていたグラウンドはあまり小さかった。体の大きかったイトウくんは野球を習っていなかったにもかかわらずホームランを量産するバッターで、だけれどホームランとしていた草原までの距離は手で投げても余裕で届く距離だった。そしてそのグラウンドの端っこには「野球禁止」の注意書きがされていた。それに加えてグラウンドが工事柵で囲われていて近くまで行くとバスケットゴール設置のため工事中と書かれていた。
その公園をぐるっと一周して見ると森と言われていた丘のようなところは森とは呼べないほど見晴らしが良かった。
変化していく様ではなく変わったそのものを最近良く見る。
なんだか変化後の全てものの密度が薄い。
それは目に見えているものだけではなくて記憶や現状に直結するのかと思うと満たされていないものが、満ちていない完成したもので勝手に埋められていくような感じがした。自分の中の空白の量は減ったのに喪失感に苛まれる。疲れた目では夜が止まって見えて温度湿度に疎くなっていった。月が明らかにオレンジでどこかの家からテレビの音が聞こえる。何かを感じれるように感じるように目を瞑ってみる。変化後の僕に何ができて何を考えるのか。何もできないことは歓迎するが何も考えなれない自分を再見するのは絶望の一秒前。怖くなって目を開けた。その事実にはまだ辿り着きたくなくてうやむやにした。可能性。まだやれるしまだなにもやっていない。貧乏ゆすりが止まらない。

ps 冒頭部分の二文は今宵アメリカンユートピアをみたからであるのでご了承を

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眠れない夜に

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