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次世代を切り開くデジタルテクノロジー:『「次」の世界をつくる デジタルテクノロジー図鑑』レビューと考察

web3に特化したファンドの共同創業者である comugiさんの書籍「「次」の世界をつくる デジタルテクノロジー図鑑」は、初めてweb3の世界に触れる人でも理解しやすい一冊です。

ビジネス書やWebメディアの編集のバックグラウンドを持つ著者のスキルが光るこの本は、多くの図解や強調部分が配され、手軽にパラパラと読めます。

この本は6章構成で、NFT、DeFi、ビットコインといったweb3に加え、メタバースについても詳しく解説しています。一見、分厚くて手ごわそうに見えますが、図解や黄色のマーカーで重要なポイントが強調されているため、読むのは思っているほど大変ではありません。

本書の醍醐味は、新しい知識を得るだけでなく、その知識をもとに未来を想像することを促してくれるところです。本書を読み、新たなテクノロジーが我々の生活にどのように影響を及ぼすのか考えることができます。

社会を変えるDAOとその進化

本書の中でも特に注目すべきは5章と6章で、ここでは社会を変える可能性を秘めたDAOについて詳しく解説しています。様々なDAOのタイプが図解で示されており、それぞれの特徴やユニークな例が紹介されています。FTのみのタイプ、NFTのみのタイプ、NFT+FTのタイプ、そしてスマートコントラクトで自動制御される完全なるNFT+FTによるDAOといった4つのタイプについて、具体的な事例とともに解説されています。

本書で紹介されている4つのタイプは次の通りです。

  • タイプ1 FTのみ:これは、通常のトークンを稼ぐだけに特化したサービスやコミュニティのモデルです。たとえば、マップ作成に貢献するメンバーに対してトークンが配布されるような「Hivemapper」というサービスが存在します。

  • タイプ2 NFTのみ:ここでは、売上全額がトレジャリーウォレット(組織の財務を管理するウォレット)に入るというモデルが存在します。これらの資金は、NFTを基に運営されるコミュニティにより、各種の決定権を行使する際に使われます。代表的な例としては、NounsDAOが挙げられます。

  • タイプ3 NFT+FT:このタイプでは、NFTとFTが組み合わさったモデルが実現されています。一例として、NFTの商品を購入し、その行動によってトークンを獲得し、それを金銭的な報酬に変えるという仕組みがあります。本書では、「TEKKON」というプロジェクトが紹介されており、これは街中のマンホールの写真を撮影して自分のNFTを成長させるというゲーム化された取り組みです。このデータはマンホールの老朽化や修理のタイミングを把握するために使われ、その活動を通じてトークンが発行されます。

  • タイプ4 スマートコントラクトで自動制御される完全なるDAO:こちらは、NFTとFTを組み合わせたDAOにスマートコントラクトによる自動制御が追加されたモデルです。これはまさに完全なるDAOのイメージで、現状ではまだ具体的な存在は確認されていないものの、将来的に出現する可能性があるとされています。

DAOとDOの対比、そしてNFTコミュニティの未来への洞察

DAOは完全に自動化され、人間の手が介在しない運営を実現します。しかし、我々人間としての存在意義、人間らしさを考えると、必ずしも人間の介在しないDAOが果たして目指すべきものなのか、という疑問が湧きます。

一方で、DO(Decentralized Organization)は、自動化をせずに分散型組織として活動するメンバーがそれぞれの役割に沿って活動を進めるという考え方です。私自身は、このDOの方向性こそが我々が目指すべきものではないかと感じています。

現状の日本では、タイプ2のNFT(Non-Fungible Token)だけのコミュニティやタイプ3のNFTとFT(Fungible Token)のコミュニティが主流ですが、これからの未来を予想する視点として、どのようなタイプ4の組織へと進化するかが重要となります。

ビットコインはDAOではない?

本書の中で特に目から鱗だったのは、ビットコインとDAOについての見解でした。一見、ビットコインはDAOの理想形態とも思えますが、ビットコインのコミュニティには「トレジャリーウォレット」が存在しないという部分について考察されていました。

この点を考慮すると、ビットコインが新しいプロジェクトを生み出す可能性は低いと言えます。つまり、ビットコインは真の意味でのDAOとは言えないのかもしれません。これは私自身のビットコインに対する捉え方を変えるきっかけとなりました。

DAOっぽいファンダム:BTSの例

一方で、DAOっぽい組織の例として挙げられたのが、韓国の人気グループBTSのファンダムでした。BTSのファンたちは「Army」と呼ばれ、共通の目的、すなわちBTSをさらに有名にし、彼らから新たなプロジェクトを期待するというモチベーションで応援を行っています。

彼らにはトレジャリーウォレットはありませんが、共通の目的を持ち、口コミやSNS投稿などでBTSを盛り上げています。このBTSのファンダムは、ある意味でDAOの要素を持っているといえます。

まとめ:農業とweb3の紡ぐ未来

私自身は、「web3」をキーワードに農業支援の活動を行っています。この視点から見ると、共通の目的に向けてメンバーが自律的に活動を進めるという、ファンダムのような形式は非常に相性が良いと感じています。

農業web3コミュニティのMetagri研究所では、元々、FarmFi構想を掲げてDAOを目指して始めましたが、その道筋において、この本は非常に価値のあるガイドブックとなりそうです。

重要なのは、単にFTやNFTのようなトークンの価値を上げるということではなく、共通目的に向けてメンバーが自律的にさまざまな活動を行う仕組みづくりです。この考え方を活かすことで、より効果的な農業支援の実現が可能となるでしょう。

特に第5章と第6章で得た洞察は、未来のDAOやDO、そしてNFTコミュニティの可能性を探る上で大いに参考になりました。

この本は、NFTやDeFiなどの複雑なテーマを図解やわかりやすい言葉で解説しているため、この分野に興味がある方にはおすすめの一冊です。

今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

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