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セミナーに関するQ&A(3/13追記)

どうも!脳卒中の歩行再建を目指す中上です!

こちらは過去の歩行セミナーに参加された先生方から頂いた質問に対する回答や見解をまとめたnoteになります。

質問が増えるとnote内容もどんどん更新される形になっていますので、是非いいねを押して頂けると、通知が飛ぶのでよろしくお願いいたします。

過去セミナーは復習動画としてnoteを購入することで視聴可能です。

是非復習などにご活用ください!

Q:皮質橋網様体脊髄路は同側、両側性支配どちらになりますか?

A:両側性に下行することが報告されている1)。

皮質網様体脊髄路は、運動前野や補足運動野(6野)、一次運動野(4野)、そして近年は体性感覚野(3野)の大脳皮質から、脳幹(橋・延髄)にある網様体、そして脊髄のγ運動ニューロンに投射する経路の総称になります。

これらの神経線維は主に、興奮系と抑制系の2つの役割を持ち、興奮系は姿勢筋(屈筋・伸筋)の筋緊張を高め、抑制系は姿勢筋の筋緊張を抑える機能を有します。

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さらに、この網様体には脊髄の中でも内側・外側それぞれに投射し、それぞれに投射先も異なります。

内側網様体脊髄路:両側の頸髄〜腰仙髄に投射し、主に頸−体幹筋(脊柱起立筋)を支配
外側網様体脊髄路:頸髄〜腰仙髄に投射し、主に上下肢近位筋(伸筋=屈筋)を支配

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これら2つの作用により屈筋・伸筋は共収縮することで関節の固定と荷重の支持に関与することで、姿勢保持に重要な役割を果たします。

Q:Ib抑制・促通で、ストレッチでよくある立位でのアキレス腱伸ばしなどは促通になってしまうのか?

A:荷重量や肢位にもよって異なる

一般的にいわれるのはゴルジ腱器官(腱紡錘)は筋の緊張によって興奮します。

そして、その興奮をⅠb求心線維を通って脊髄内の介在ニューロンを介して、主動作筋のα運動ニューロンを抑制することで、筋収縮を抑制します。

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これがⅠb抑制のメカニズムであり、これらは荷重(特に歩行場面における立脚後期では)が加わることで主動作筋を興奮させるⅠb促通に転ずることがあります。

ここで重要なのはゴルジ腱器官がどのように反応するかを理解する必要があります。

ゴルジ腱器官は直接的なストレッチに比べ、そこと連結する筋の収縮により伸張刺激がより強く加わります(アキレス腱部の伸張は下腿三頭筋の収縮による影響を受ける)。

つまり、傾斜台などでの持続的なアキレス腱部の伸張刺激では、実際に骨格筋の収縮は伴わないため、抑制そのものも加わりにくい可能性があります。

そして、実際に荷重が十分踵に加わらないと、荷重下での足関節背屈の動きにならないので、そもそもアキレス腱部の伸張がどこまで加わり、下腿三頭筋の筋の緊張度合いがどうなっているかを触診で確かめることが重要となってきます。

Q:また、臥位においても筋の反応が高まるとのことでしたが、ストレッチとの違いは伸長持続時間の差などか影響しているのでしょうか?

A:特に重要なのは荷重量としての刺激入力

セミナーの中でご紹介した論文などをみていくと、重要なのはどれだけの荷重量(〇〇ニュートンで表現)が加わるかが重要となってきます。

そして、荷重量に応じて腱部分の伸張度合いにも大きく影響を与えます。

これは歩行でも言えることですが、歩行時の立脚後期では腓腹筋・ヒラメ筋に比べ筋腱移行部の伸張性が強く生じます。

つまり、目的にもよりますがアキレス腱部の伸張性を引き出したい場合や下腿三頭筋の筋緊張を高たい場合は、より荷重刺激を伴った中での刺激入力が重要となってきます。

Q:支持性(立脚期)について、荷重下で運動することでγ線維が発火して筋緊張が高まる。その結果、支持性が安定するという捉え方でよろしいでしょうか?

A:その捉え方で問題ありません。γ運動ニューロンの発火には脳幹からの下行路(出力系)、筋紡錘・腱紡錘からの上行路(入力系)によって支持性が安定します

荷重刺激が筋紡錘・腱紡錘の伸張性に関わることは前述した部分からも理解できると思います。

合わせて重要なのは、荷重が加わるということは、それに対する抗重力活動が必要になるということです(荷重が加わらない宇宙などの無重力空間では、それに対する抗重力筋の活動を働かす機会が減少する)。

特に網様体は上行性賦活系として視床を介して大脳皮質に情報を伝達していきます。

つまり、重要なことは荷重を受け取る受容器、それを感知する中枢システム、この2つを理解することが支持性の安定性に関与するということになります。

(3/13追記分)荷重をかけることで網様体脊髄路が働くメカニズムは?

A:重力を受けることで姿勢保持に必要な筋緊張が無意識的に網様体脊髄路を介して反応を起こす、合わせて感覚フィードバックとして脊髄内反射経路や小脳ループが働くことでリアルタイムに筋緊張が制御される

我々人が地球上にいる限り、必ず受けるのが重力という力になります。

この重力を受けた際に、正常であれば重力に抗するだけのなんらかの力を返す必要があります(そうじゃないと重力に押しつぶされてしまいます)。

それは骨を中心とした骨格系での安定性と、その骨格系のアライメントを維持するための少ない筋活動です。

イメージとしてはジェンガのような積み木をイメージしてください。

この積み木はある程度安定性をとることで、崩れることなくある形を維持し続けられます。

しかし、ひとたびバランスが崩れると、積み木自身では制御ができず、そのまま崩れてしまいます(ジャンがというゲームでひとつずつ抜いていくと積み上げたジャンがが崩れるイメージです)。

そうなった時にその積み木を正しい位置に調整する役割が必要になるのですが、それを担うのが筋肉が持つ張力になります(なぜここであえて筋張力と表現したかは、随意運動として常にそこを意識的にコントロールしているわけではないからです)。

つまり、この無意識で制御される筋張力の働きが抗重力筋としての姿勢筋緊張になります。

では、この姿勢筋緊張がどういったメカニズムで作用するかですが、我々人には随意的な要素として骨格筋を働かす(筋の求心的な収縮を引き出す)皮質脊髄路を介した随意運動経路と、

無意識的な要素として骨格筋を働かす(弱い持続的な筋収縮である筋緊張を引き出す)皮質網様体脊髄路を主に介した(厳密にはここには視蓋脊髄路や前庭脊髄路なども含まれます)筋緊張制御経路があります。

それらの情報が脊髄内にあるそれぞれの運動細胞(皮質脊髄路はα運動ニューロンに、皮質網様体脊髄路はγ運動ニューロンに)に繋がることで、骨格筋の働きをコントロールします(詳しくは前後の質問や、過去記事をご覧ください)。

つまり荷重が加わるということは、この重力の影響を身体がより強く受けるということに繋がり、その力に対して姿勢を安定させるために必要な皮質網様体脊髄路がより強く発火するメカニズムが必要がなるということになります。

そして、人の重心は絶えず移動(変化)し続けることから(静止立位で重心動揺系にのると絶えず重心が動き続ける)、リアルタイムに姿勢崩れなどを感知するセンサーが必要で、その情報をもとに姿勢筋緊張の張力変化を引き起こす必要があります。

それを実際に行っているのが、筋にある筋紡錘で、これらからの情報が脊髄ないし脳へ感覚フィードバックとしてその時々の重力を受けた際に生じる筋緊張変化を引き起こすことになるのです。

以上の部分をまとめると、荷重が加わることで大きく2つのメカニズムが作用します(①筋緊張を無意識的にコントロールするメカニズム、②さらに情報をリアルタイムで変化させるメカニズム)。

荷重が加わるとということは重力がより加わるということ、そのために姿勢保持に必要な骨格筋の筋緊張を働かすための大脳皮質の6野を中心した部位から脳幹にある網様体に情報が下降し、そこから脊髄内のγ運動ニューロンに働きかけることで骨格筋の筋緊張が高まる。

そしてさらに重要なことは、それらは絶えず無意識的にフィードバック情報として脊髄内および脳内に伝達され、脊髄反射を介してより筋緊張制御がなされるとともに、感覚情報をもとにさらに筋緊張をコントロールするための小脳系ループなどを介した部位への刺激伝達がなされるという2つの大きなメカニズムがあるということになります。

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Q:講義を踏まえて腱反射の評価結果はどういった解釈になるのか?

A:脊髄機能・脳からの反射コントロールを簡便に把握するのに役立つ

腱反射とは、太い骨格筋につながる腱を筋が弛緩した状態で軽く伸ばしハンマーで叩くと、一瞬遅れて筋が不随意に収縮する反射です。

これは急な外力によって筋が損傷するのを防ぐための生理的な防御反応としてみられる筋の収縮反応のひとつです。

通常このシステムは受容器としての筋と脊髄の関係性をみていることになりますが、もうひとつ重要なのは、それらの反射機構を脳が制御しているこということになります。

特に今回お伝えした網様体は下行する神経繊維の作用によって反射を抑制・促通することに関与します2)。

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【反射促通】
・橋(内側)網様体脊髄路
・前庭脊髄路

【反射抑制】
・皮質脊髄路
・延髄(外側)網様体脊髄路

本来は脊髄内の反射機構は抑制されていますが、脳卒中で生じる運動麻痺(上記図のM1の障害)によって反射抑制機構の作用が減少し、結果痙縮などの反射亢進が生じます。

その際に、残存している脳の運動前野・補足運動野からの下行性の皮質網様体脊髄路によって、場合によっては反射促通され、それによって筋緊張亢進がさらに増悪ケースも生じます(これはセミナーの中での非麻痺側の過活動や不適切なアライメントの中での姿勢制御による残存脳の過活動としてお伝えしました)。

重要なことは、これら脊髄への抑制機構がどのような状態にあるのかを把握する上でも、腱反射を評価として用いることは非常に有益な情報収集につながります。

上記質問に対する臨床解釈としては、可能性として

腱反射の消失:網様体・前庭経路の不活性
腱反射の亢進:皮質脊髄路・延髄網様体脊髄路の障害

などを臨床的には仮説をたて、実際の損傷部位としてみることができる脳画像などと照らし合わせて臨床解釈していくことが重要となります。

Q:痙性など網様体脊髄路が過剰に働いている場合は荷重をかけない方が良いのか?

A:時と場合によるため、どの筋の痙性かを考えアプローチすることが重要

ここは一言で痙性に対しては荷重をかけるないしはかけないということが判断できません。

実際に臨床場面でもよく経験するのが、上肢の屈筋筋緊張が上がっているケースがしっかりと荷重をかけることで、自然と上肢の緊張が緩和されるといったケースをみることがあります。

つまり、そもそもがなぜ痙性が高まっているのかを判断する必要があります。

痙性とは一般的に伸張反射ループの亢進と定義されることがあるように(現在では様々な要因によって痙性が生じることが報告されていますが)、筋が伸張されることで生じることもあります。

ではどういったシチュエーションで筋が伸張されるのかというと、前述した姿勢が崩れたり、姿勢保持の際に必要な筋活動が生じた場合にそれが生じることがあります。

つまり、姿勢アライメントが崩れることは伸張反射に関わる筋の伸張性を引き出し、結果痙性のように筋緊張を無意識的に高めてしまう可能性があります。

こういったケースにおいては実は荷重を正しくコントロールすることがかえって痙性筋に対するγ運動ニューロン(皮質網様体脊髄路の興奮性)を抑制させることにも繋がるため、治療場面においては、正しいアライメントで荷重を加えるということが効果的な治療介入になります。

重要なことはなぜその筋の痙性が上がっているのか、それは網様体脊髄路の過剰興奮が原因なのか、もしくは運動麻痺等による皮質脊髄路からのシナプス抑制などが原因なのか、を的確に評価しつつ、荷重を加えた際にどう痙性筋の筋緊張が変化をするのかをみる必要性があります。

ですので、臨床場面での正しい姿勢アライメントを作る治療、荷重を正しく加えるための床反力の考え方、そしてそれらが関節にどういった力として作用するのかといったモーメントのバイオメカニクス的な要素で考えることも、是非臨床的視点としては考慮してみてください。

バイオメカニクス的視点に関する動画はこちら!

まとめ

まずは歩行ないし立位などの重心コントロールにおいては、姿勢制御という観点からも網様体脊髄路や脊髄機能、骨格筋の受容器などの関係性を理解することは非常に重要になります。

そして、これらは姿勢制御としての支持性に関与するのみならず、実は歩行における随意的な要素(遊脚相)にもCPGへの情報出力としても理解しておく必要があります。

後日動画配信も実施していきますので、是非ご覧ください。

引用・参考文献

1)高草木薫:脚橋被蓋核・網様体脊髄路と姿勢筋制御.Clinical Neuroscience 25:401-404,2007

2)Li S, et al.A Unifying Pathophysiological Account for Post-stroke Spasticity and Disordered Motor Control. Front Hum Neurosci. 2019 May 10;10:468




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