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市民の市民による市民のためのジャーナリズムへの挑戦。

自己紹介 琵琶湖の最北端の村で暮らしています。

はじめまして。私は、滋賀県在住の堀江昌史(ほりえまさみ)と申します。琵琶湖の最北端にある賤ケ岳という山のふもとの集落で、ギター職人の夫と、2歳の男の子と、黒猫と一緒に暮らしています。

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私の前職は、朝日新聞の記者でした。婦人病を患ったのを機に仕事を辞め、地に足のついた暮らしをしてみようと思いました。その後、夫と結婚することにしたとき、「せっかく一緒に生きていくことにしたのだから、なるべく一緒にいたいなあ」とか、「でもお互い好きなこともしたいよね」などと話し合いました。
そこで、夫とともに長浜市木之本町大音という集落に移住し、「丘峰喫茶店」を開業。春夏秋は、喫茶店の営業と農作業に励み、冬は夫はギター制作、私は「能美舎」という出版社を立ち上げて、小さく本を作ることにしました。

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(写真は、井上靖の小説「星と祭」。2018年地元の住民と復刊しました。)

「地域のニュース」と「都会のニュース」
そして「全国のニュース」

移住して、5年が経ちました。子宝に恵まれ、私の中にたくさんの変化がありました。私は元新聞記者です。ニュースに触れたときの、自分の視点の変化についてここでは書きたいと思います。

私は東京生まれ、埼玉の新興住宅地(都心まで電車で20分)で育ったどちらかといえば「都会人」です。実家で購読するのは全国紙。雑誌に掲載される都内のおいしいお店特集や、渋谷のスクランブル交差点から中継されるテレビの全国ニュースを見ていても、特に違和感を感じることもありませんでした。

そこに、違和感を持ったのは琉球大の学生時代。同級生に「沖縄の小学校では今も校庭から不発弾が見つかる。米軍基地の中にお墓があって、祖先の墓参りさえできない人もいる。ナイチャー(本州の人)はそれを知っているのか」と言われたことがありました。そのとき、私は恥ずかしながら知らなかった。知らないことは問題だと思いました。また、沖縄の地元紙「沖縄タイムス」と「琉球新報」を交互に購読する中で、都会で報道されるニュースと、沖縄のニュースは違うこと、沖縄の問題とされていることも、本質的には全国で考えなければならないニュースがたくさんあることを知りました。

朝日新聞の入社試験を受けるとき、私はエントリーシートに「都会のニュースが全国のニュースではない。各地方の抱える課題を全国に問題提起することが、全国紙の役割ではないか」と書きました。今もその気持ちは変わりません。

今、求めているのは「地域」のニュース

ですが、ここ最近、私にとって「全国紙のニュース」が大きな関心事にならなくなってきたのです。決して都会ではない滋賀県の、県庁所在地からはだいぶ離れた人口12万人弱の長浜市の、郊外地域である木之本町の、さらに古い集落に移り住んだ私にとって、興味を引くのは「地元で何が起きているのか」。「東京でコロナ感染者が何人出ているか」「首都圏のどこの飲食店でクラスターが発生したか」よりも、長浜市の状況が知りたい。

それなのに、私が購読している朝日新聞の地域面には情報の詳細が載っていないことが続いていました。調べてみると、長浜市に朝日(2020年に撤退)は支局を置いていなかった。だから、私の町のニュースはあまり紙面に載らないのか。

市民の市民による市民のためのジャーナリズムへの挑戦

やる気を出すきっかけになったのは、1月9日、朝日新聞滋賀版に載った「分娩受け入れ 4月から休止 市立長浜病院」の小さな記事。2020年には隣町の彦根市立病院と守山市の坂井産婦人科が分娩休止を発表し、その前年には大津市民病院、長浜市の佐藤クリニックも止めていたのを知っていました。県内の産婦人科が次々と分娩中止を発表している。それなのに、掲載されたのは、たった23行。私の町に、一体何が起きているんだろう。大切な命を生み出す場所に、何か重大な異変が起きているのでは、という危機感が胸の内に迫ってきました。

詳細が知りたくて、私は地元の図書館に行き、そのニュースが掲載された新聞記事を集めました。すると、長浜市と彦根市にしか配られていない超ローカルな新聞「滋賀夕刊」には、朝日新聞より1日早い1月8日付で同じ記事が大きく掲載され、内容も詳しく書かれていました(他紙も朝日よりすべて1日早い掲載だった)。それでも、1回の記事だけでは、問題の全体像はつかめません。

私が取材したい。
モヤモヤを抱えながら、個人のFacebookにそのニュースを投稿しました。
すると、現役の医療関係者や自治体職員、政治家などから、コメントが36件も集まりました。長浜市以外の人もいました。
これだけみんなが関心を持っている。
突き動かされるものがありました。

私は、ありがたいことに今も朝日新聞滋賀県版に週1回「丘峰喫茶店へようこそ」という田舎暮らしの日常をつづるコラムを書かせていただいています。棚ぼた的に始まり、1年で終わる予定だった連載ですが、なんだかんだと今年で3年目になります。
産婦人科問題は、その枠組みの中ではちょっと無理のあるテーマかも。
でも、載せてもらえる媒体がなければ、読んでもらえない。問題提起もできない。ダメもとで、朝日新聞大津総局の総局長へ電話をかけ、「産婦人科問題をテーマに記事を書かせてもらいたい」と売り込みました。

第一声は「外部筆者の記事を一般記事として扱うのは難しい」という回答でした。
……そりゃそうだよね。私は退職しているし、一般人が紙面で一般記事を書かせてもらうことなんて、無理だよね。
「わかりました」と答えて電話を切りました。ちょっと落ち込んでいると、電話が鳴りました。相手は、さきほど電話を切った総局長。

「さっきの話だけど、『丘峰喫茶店へようこそ』の中でなら、書いてもみてもいいよ。コラム風に書いてみて」

……コラム風!?
コラム風に社会記事を書けるのか、よくわからないものの、とりあえず「わかりました!」と答えて電話を切りました。載せてくれる媒体が見つかりホッとしたものの、朝日新聞の長浜市民の読者は多くありません。超地元紙である「滋賀夕刊」さんにも「記事を掲載してほしい」と頼み込み、掲載の約束を取り付けました。

その掲載一回目がこちらの記事です。

各地で相次ぐ産婦人科の分娩休止 一体何が起きているの?
|堀江昌史 出版社「能美舎」代表/「丘峰喫茶店」店主 @noubisya #note https://note.com/noubisya/n/nc9368c93bc5e

目指すのは、市民の市民による市民のためのジャーナリズム。
(※これは、私が学生時代にお世話になったインターネット新聞「JANJAN」が掲げていたポリシーでした。「JANJAN」のことも、いつか書きたいと思います。)
ひとりひとりが考え、自分たちの町を住みやすくしようと動く、そんなきっかけに、少しでも貢献していきたいと思っています。

みなさまからのご指導、ご鞭撻、よろしくお願いいたします。

投げ銭歓迎!「能美舎」の本もよろしくお願いいたします😇 ぜひ「丘峰喫茶店」にも遊びにいらしてください!