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後輩が住む集落が被災 移住を勧めた私は(流域治水②) 

 先月5日、大雨の影響で氾濫した長浜市を流れる高時川。私と同じ元朝日記者の船崎桜さんが移住先に選んだ木之本町大見地区も水に浸かりました。

 水害発生から5日後、船崎さんの案内で大見地区を訪ねました。村では、床上浸水2戸、床下浸水3戸の被害がありました。

 歩いてみると、自動車立ち入り禁止のバリケードが建てられた石橋は欄干が損失し、根が付いたまま運ばれた立派な杉の木が流れに棹を差していました。ひび割れた道路の先では、ガードレールが道路の一部もろとも土手側に落下しています。

 付近の地先で、被災された方が家財をホースで洗っていました。私の背丈以上ある石垣の上の植木にも泥草が溜まっていました。

軒先に干された、家人の靴

 発災後、船崎さんは夫と一緒に、被災した村人の敷地内に溜まった泥の搔きだしを手伝ったそうです。水を含んだ泥は重く、若い2人でも2時間でへとへとになったと話していました。

 日ごろから彼女がお世話になっている80代のご夫妻がお話を聞かせてくれました。ご自宅は無事でしたが、ガレージが床下浸水し、冬用タイヤなどが流されました。

 ガレージに堆積した泥や、床下に入り込んだ泥を、村外に暮らす子どもたちが帰省して片づけてくれたそうです。この日も、床板をめくって開放した床下に向けて、扇風機が回っていました。お二人とも「こんなに水が来たのは初めて」と驚かれていました。

床下浸水した住民の方と船崎さん。橋には根のついた木が引っかかっていた。

 県は2014年に制定した『滋賀県流域治水の推進に関する条例』に基づいて、200年に一度の大雨で3メートル以上の浸水が予測される区域を「浸水警戒区域」として指定を進めてきました。

 指定区域内で新築や、増改築をする際、2階が浸水しないようにするための土地の嵩上げ費用のうち、400万円上限で2分の1を県が助成するなどの施策も設けています。

 大見地域は今年3月、浸水警戒区域に指定を受けたばかりでした。お二人とも助成についてはご存知でしたが、「400万円ばかりではどうにもならない」と話していました。

 実際、地域に現存する民家の多くは平屋の茅葺屋根の古民家。昨年、同じ茅葺屋根の古民家を購入し移住した船崎さんも「経済的にも、構造的にも現実的ではない」と言います。

 私の勧めもあって、この地域に移住を決めてくれた船崎さん。私は過疎地域への移住促進に積極的な立場ですが、結果的に危険地域への移住を勧めてしまったことに責任を感じていました。

 それに対し、船崎さんは「日本中どこにいても被災するときはする。移住前にリスクは調べたうえで、特に躊躇はしなかった。ただ、小さい子どもがいたり、自力の移動にハードルがあれば大見は選ばなかったかもしれない。東日本大震災で被災した宮城県も今は人気の移住先になっている。みんなで防災減災対策をしつつ、魅力をつくっていけるといい」と話してくれました。

 長浜市では、り災証明書の発行、市民税や固定資産税の減免などの措置がされています。市社会福祉課によると、今回の見舞金の支給対象者は床上浸水した6軒で一律2万円。現在、他の生活支援策も検討しているそうです。
(朝日新聞滋賀県版2022年9月5日掲載)

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https://note.com/noubisya/n/nc4f81a7da4c2


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