仮面ライダーのディレンマ

仮面ライダーは、その名の通りライダーである。ライダーとは、バイク乗りのことだ。まあライダーだけでは広い意味では乗り物全般に使えるのだろうが、仮面という枕詞が付くとバイクに限定される。


さて、前置きはここまでにして、本題に入ろう。



バイクに乗るには、免許がいる。


初代仮面ライダーである、仮面ライダー1号を例にとって考えてみよう。彼の愛車はサイクロン号とよばれ、元となっているバイクはスズキGT380である(諸説あり)。大型自動二輪免許が必要だ。



変身前である本郷猛(藤岡弘、)は大型自動二輪免許を保持しているので、変身後も運転が可能だろう。

ところが、彼は仮面ライダー名義の免許を所持していない。顔写真のところにあのバッタをモチーフにした顔がでかでかと載り、眼鏡アリ(複眼はこれを含む)などと書いた身分を証明するものを携帯していないのだ。


つまり、本郷猛は変身した瞬間に、仮面ライダー1号は無免許運転となり、ヒーローと同時に容疑者となってしまう。



では、なぜ本郷猛は仮面ライダー1号となり、無免許運転という前科を増やすという愚行を繰り返すのか。変身前で運転し現場に向かい、そこで変身すればよいのではないだろうか、と君たちは言うだろう。

ここで一つ確認しておきたい。



サイクロン号の最高速度は400㎞/時である。つまりおもくそ吹かすと、本郷猛の状態でもがっつり犯罪なのである。



変身しようがしまいが、前科がついてしまう仮面ライダーという存在。人間を守っているにもかかわらず人間のルールに縛られ、罪を着せられるその姿は、どこか悲しそうに見える。

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