オンキヨーの思い出

オンキヨーが債務超過で、上場廃止の見込みとニュースに出ていました。

オーディオ界隈の反応は「ああやっぱり」「むしろよくここまで保ったな」という感じで、私も概ねそんな感想です。
もちろん債務超過・上場廃止で即倒産と言うわけではありませんが、慢性的な赤字が解消される見込みも無い以上、遅かれ早かれ何かしらアクションがあるでしょう。

さて本題はオンキヨーの思い出です。
とはいえ別に永年のオンキヨーファンでもなく、オーディオ的にはこれと言った思い入れはありません。
しかし本格的にオーディオ沼にはまる前、自作PCをやっていた頃には少しお世話になりました。
その頃の話から。

PCオーディオの開拓者

今から10年と少し前くらいでしょうか。
パソコンいじりを覚えてハード・ソフト色々とカスタマイズをしていた私は、オーディオ関係に手を出し始めます。
ところがこの頃はコンシューマー向けのUSB DACがまだまだ少なかったんですね。
今やUSB DACは入門機から高級機まで選り取り見取りですが、当時はPCI接続のサウンドカードが生き残っているわ、USB接続のインターフェースはDTM向けくらいしか無いわ、そもそもPCがHi-Fiオーディオのソースとして認められているかも怪しいような状況だったと記憶しています。
そんな中、大手音響機器メーカーからいち早くPCオーディオに目をつけて、商品展開していたのがオンキヨーでした。

今からするとやや垢抜けないデザインにも見えますが、買った時はなかなか嬉しかったものです。
この製品の前には内蔵型のサウンドカードも発売していたのですが、接続が手軽でノイズ対策にも有利な外付けのUSB DACとして製品化したのは、時流を捉えていたと評価してもいいでしょう。

オーディオ向けPCの失敗

ちょうどこの前後にオンキヨーはパソコン製造メーカーのソーテックを吸収し、オーディオ向けPCの販売を始めました。
秋葉原のPCショップにブースが設けられていた記憶があります。
ただデザイン的に洗練されていなかったり、PCオーディオの周辺環境が未だ整っていなかったこともあり、長続きせずに収束しました。
なんとなくこの辺りから、オンキヨーの業績にも怪しい雰囲気が漂っていたように感じます。
それを裏付けるように、PCオーディオ向けの新製品もあまり投入されず、PCオーディオ隆盛期にはすっかり影が薄くなってしまいました。

パイオニア家庭向け部門の買収

パイオニアは内蔵DVDドライブメーカーとして自作PC界隈でも有名で、また業績がよろしくない事も小耳に挟んでいました。
そんなパイオニアが事業整理のためにホームオーディオ部門とDJ向け部門を切り離して売却したのは、仕方がない時代の流れとはいえ悲しいものでした。
このパイオニアのホームオーディオ部門の受け皿になったのは、これまた雲行きの怪しいオンキヨーだったのです。
ニュースを目にした時は「オンキヨーはなんで見えてる地雷に手を出すんだろう」と思いましたが、どうやらその予想通りだったようです。

オンキヨーの落日を振り返って

オンキヨーの危機については正直予見できていましたし、特に不思議なことではないです。
ただ、やはり歯痒いところもあります。
というのもオンキヨーの製品は意外と時代を捉えているものがあったからです。
他社に先駆けて発売したUSB DACは言わずもがな、今やPCオーディオの花形コンポーネントです。
オーディオ向けパソコンも、ハード・ソフトに少し手を加えればネットワークプレーヤーになります。スマートスピーカーにもノウハウは活かせたでしょう。
いま国内最大手のハイレゾ配信サイトはe-onkyoなのを鑑みると、こうしたハード面からオンキヨーブランドを育てられなかったのは大きな痛手でした。
もちろん後出しジャンケンですから言いたい放題ですが、オンキヨーブランドとしてどんな市場を開拓していくのか、そういう展望を共有できていなかったのでしょう。

今後も一時代を築いたオーディオメーカーの受難の時代は続くと思いますが、オンキヨーの失敗を横目に見ながら、面白い製品を出していってくれることを期待しています。

追伸 SE-U55SXについて

先ほどUSB DAC「SE-U55SX」に触れましたが、今から考えるとこの製品も結構微妙な物でした。

まず外身ですが、ぶっちゃけかなりチープです。
プラスチックの外装はあまり重量感もなく、まだ「PCの周辺機器」という意識を感じます。
ボリュームはノブがペラペラで、しばらく使っていたらガリが入り始めた気がします。
それにやたら図体が大きくて配置が難しかった記憶もあります。

機能面もまだまだ洗練されていたとは言えません。
特にマイク入力端子が用意されていたのは、サウンドカード、オーディオインターフェースとしての名残でしょう。
USB DACとして出力する音に拘るならば、マイク端子は省くべきでした。
ここら辺にも「PCの周辺機器」感があり、PCオーディオで天下を取る、というような気概は感じられません。

もちろんこうした欠点はPCオーディオの過渡期ゆえのものですから、後々に改善されればよかったのです。
しかし結局のところUSB DACの隆盛とは裏腹に、オンキヨー製DACは大々的な商品展開をすることもなく市場から姿を消したのでした。

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