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弟子入りの妙味


クセノポンという人物をご存じでしょうか。私の親戚ではありません。クセノポンは、古代ギリシャの哲学者です。あのソクラテスの弟子としても知られています。「俺は知らなかったよ・・・」という人もいるかもしれませんが、落ち込む必要はありません。無知の知(自分が無知であることを知っていること)こそが大事なのです。むち打ちになったらすぐに医療機関を受診することぐらい大事です。

クセノポンがソクラテスの弟子になった経緯は以下の通りです。ある日、クセノポンが街をプラプラと歩いていたら、目の前にソクラテスが現れました(ポケモンの世界だったら、迷わずにモンスターボールを投げつける状況です)。ソクラテスはクセノポンに対して「どこに行けば食べ物を買えますか?」と尋ねたそうです。クセノポンは「あそこに行けば食べ物を買えますよ」と答えました。ソクラテスは得心がいったように頷いてから「では、どこに行けば優れた人間になれますか?」と尋ねました。

ソクラテスが発した予想外の質問に対して、クセノポンは適切な返答をすることができませんでした。そりゃそうです。何の脈絡もなく荒唐無稽な質問をぶつけられたら、誰でも口ごもってしまいます。普通の人であれば「何を言っているんだこのオッサンは・・・こんな危ない奴と関わるのは危険だ・・・えんがちょ・・・」と判断して、その場を足早に去ることでしょう。私もそうします。

しかしながら、クセノポンはそうしませんでした。「なんかわけわからんけど、このオッサンは只者ではないな・・・」と感じて、ソクラテスに弟子入りしたのです。ソクラテスから多くのことを学び取ったクセノポンは、偉大な人物としてその名を残しました。偉大な人物というのは、行動によって形作られるのです。

巷間では「知らない人に付いて行っちゃいけません」という文言が流布しています。ですが、ソクラテスという「知らないことを知っている人」に付いて行ったおかげで、クセノポンの人生は向上したのです。「好奇心は猫を殺す」ということわざになぞらえるならば「好奇心は人を生かす」といったところでしょうか。でしょうかと得意気に言われてもねぇ。

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