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最初の国土


イザナギは、日本神話に登場する神です。イザナギとイザナミが国作りを頼まれました。「そんなことより小作りに専念して赤ちゃんを生むべきだ!早く親御さんに孫の顔を見せてやらなきゃな!」という人は放置しておきましょう。俗に言う「赤ちゃん放置プレイ」ですね。


ちなみに、神を数える単位は「柱(はしら)」です。なので、貝柱に神が宿ったらややこしいことになります。神性を帯びた瞬間に、なんの変哲もないボンクラ貝柱が神々しい存在に思えてきます。持つべきものは神の威光です。「虎の威を借る狐」の生存戦略は、極めてまっとうなものであると言わざるをえません。


イザナギとイザナミは、授かった矛を使って、海水を「こおろこおろ」とかき混ぜました。「こおろこおろ」が攪拌する際に発せされる音なのか、それともただの掛け声(どっこいしょ等)なのかは不明です。神のみぞ知るということですね。人間であることの悔しさを晴らすために、手近な人類の壁にぶつかり稽古しましょう。どすこい人間。さよなら人類。


しっかりとかき混ぜた後に、ゆっくりと矛を引き上げました。すると、矛の先から滴り落ちた塩(湖)が堆積して島ができました。「おのごろ島」の誕生です。ちなみに、おのごろ島と密接な関係を築いている島は「ねんごろ島」と言われているらしいです。あくまでも噂に過ぎません。島同士の交流なんざ知ったこっちゃねぇ!


ここで一つ疑問があります。おのごろ島は「こおろこおろ」という言葉と共に作られました。現代風に表現するならば「withコオロ」ですね。それでは「こおろ」以外の言葉ではどうなるのでしょうか。この世の中には「こおろ」に類する言葉がたくさんあります。たとえば「こおろぎ」だったら何が作られるのでしょうか。


答えは単純明快。「こおろぎ島」ができるに決まっています。「こおろこおろ」で普通の島ができるのです。それならば「こおろぎこおろぎ」でこおろぎ島ができるのは当然の帰結であり、自然の摂理であり、宇宙の真理です。『銀の龍の背に乗って』ならぬ『昆虫の背の島に乗って』ですね。「龍と昆虫とでは、どちらの背に乗りたいですか?」というアンケートを取ったら、99対1で龍に軍配が上がると思います。昆虫サイドは「奇特な1人」を大事にしなければなりません。


こおろぎ島に定住するにあたっては、いくつか注意事項があります。こおろぎ島は、無法地帯ではありません(がっかり)。なので、秩序を維持するために、いくつかルールを制定する必要があります。最重要事項は「こおろぎは産卵したら死ぬ」ということです。とても大事なことなので、回覧板に油性ペンで殴り書きしておきましょう。

こおろぎ島の住人はこおろぎの上で生活しているので、こおろぎが死んだら運命を共にします。海の藻屑になりたい人には最適な環境ですね。ただ、こおろぎ島の住人も一枚岩ではありません。「オイラはこおろぎと心中なんてごめんだね!」という人もいるでしょう。私も同感です。そんな常識的な感覚を持つ人に対しては「こおろぎが産卵の準備に入ったら、荷物をまとめて島を脱出しましょう」とアドバイスしておきましょう。

朽ちゆく島(こおろぎの残骸)への同情心は禁物です。我々には我々の道があり、こおろぎにはこおろぎの道があるのです。「子供しかるな 来た道だもの  年寄り笑うな ゆく道だもの」という言葉を持ち出すまでもなく、それぞれの境遇には、それぞれに適した道があります。我々が行く道は、果たしてどこへ繋がっているのでしょうか。こおろぎに繋がっていないことを祈るばかりです。


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