2015年10月 お金のことを調べる

10/7(水)、午前中にHクリニックのK医師からの電話を終えると、口からは「がんかよー」「どうしよう」「お母さんより先に死ぬわけにはいかないんだけどな・・・」「えー。死ぬんかな」ということばが繰り返しもれる。

18歳のとき、おさななじみががんで亡くなった。
彼女の両親の悲しみがあまりに深く、ずっと家族ぐるみの付き合いをしていたのにかけることばがなかった。毎年、お盆や命日に連絡をとるけれど、いまだにその悲しみは薄れていない印象を受ける。
あんな思いを、自分の両親、特に母親にはさせたくないと思った。この先どうにもならないことはあるかもしれないけど、とにかく「母より先に死なない」という線はなんとかふんばって守りたい。

一方で、まさかの電話連絡だったので、「これもいわゆる告知ってやつにあたるのか・・・」と思いつつ、頭が一気に臨戦態勢に切り替わり、ノートパソコンで調べ物を始めた。何かしないではいられない気持ちもあった。

真っ先に調べたのはお金に関することだった。そのあと、自分の病気に関する大まかな情報を調べた。経済的にもう少し余裕があったら、逆だったのかもしれない。

まずは健康保険について。
病気で大きな出費があったときに「高額療養費制度」が使えることは一応知っていたけど、具体的な手続きを知らなかったので、加入している健康保険組合のHPを見て、電話で聞いてみた。

1.限度額適用認定証
病院の窓口で提示すると、自己負担の限度額以上は請求されない。
1ヶ月に1カ所の病院でかかる医療費ごとに判断される。
限度額の金額は、標準月額報酬による。私は81,000円+αだった。
認定証は郵送で申請すれば、3営業日くらいで発送してくれるとのこと。認定証を受け取る前に病院に行くときには、窓口で言えば考慮してもらえる場合もあると言われた。(後日、大学病院で聞いてみたけど、「認定証を受け取ってから申し出てください」と言われた)
(注意点)
・月をまたいで入院すると、2ヶ月にわけて算定される
・1カ所の病院で、月に21,000円以上かかる分に限る

2.高額療養費制度
いったん病院で支払ったあとの申請で、自己負担限度額以上の分が払い戻される制度。
(注意点)
・1つの病院で21,000円以上かかる分に限られる
・入院時の食事代、差額ベッド代は自己負担なので対象外
・通院と入院は別扱
・処方箋調剤は、処方箋を出した病院に合算される

限度額適用認定証と高額療養費制度は併用できるとのこと。
キャッシュフローが楽なのはありがたいので、この日のうちに限度額適用認定証発行の申請を郵送した。

次に生命保険について。
以前は、知人のおつきあいで夫婦で入っていたのだけれど、子どもはいないしまだ若いから、とやめて以来、二人とも入っていなかった。
ただ、私については母が昔から払ってくれていたのがあった。年末調整用に保険会社から届いた書類がとってあったので、それを見て保険会社に連絡をして、契約内容と手続きについて確認した。母に知らせずに問い合わせできたことはありがたかった。

入院5日目から1日あたり数千円支給される入院特約がついていたので、手続きに必要な書式の郵送を依頼した。
退院後にまとめて請求した方が、病院発行の証明書(有料)が1通で済むので、退院後にまとめて手続きすることをすすめられた。
保障の限度も説明され、同じ病気で再度入院した場合や、違う病気で入院した場合には、どの程度保障されるのかもわかった。

健康保険組合も、生命保険会社も、電話対応の人の感じのよさがありがたかった。生命保険会社の人に、電話の切り際に「どうぞお体大切に」みたいなことを言われた。被保険者が「がんが見つかった」と言っているのだから、職務上そう伝えるのはあたりまえだと十分わかっているのに泣きかけてしまい、やっぱりショックなんだなぁと思う。こういうちょっとした瞬間に涙が出てくるので、これからもこういうことがいっぱいあるんだろう。

子どもの頃から、母の店で過ごすことが多かったせいか、大人がいろんな病気(がんが多かった)で亡くなっていくことを見聞きしてきたので、死ぬことについて考えてきた時間がわりと長い方だと思う。
ここ何年かは、「人は必ず死ぬし、病気で死ぬ人はとても多いのに、なんで”がん”というと他の病気と違うかのような扱い(同情的だったり、絶望的だったり)をされるのだろう。他の病気で死ぬのと何が違うんだろう」と考えるようになっていた。
実際に自分ががんだとわかったら、自分もまたショックを受けているのを、ちょっとした場面で実感して、そういうものなんだなと思った。考えるのと体験するのとでは大きな差があった。自分が死ぬことを想像せざるをえず、その怖さを今までになく身近に感じていた。
「治療の仕方がわからない難病とか、一生つきあっていかないといけない病気だったら、どう受け止めたんだろう」とも考えたけど、想像がおよばなかった。

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