入院中使ったもの

2週間という短い期間だったし、「食べない」「飲まない」「話さない」以外には行動の制限もなく、病名のわりに比較的楽な入院だったのではないかと思う。手術のあとは微熱があったり、頭痛が頻繁にあったりで、やはり本調子ではなかったけれど。

初めての入院で、これは使った、というものはこれ。

・スマホ
LINEやMessengerでオンタイムでやりとりできたのはおもしろかった。
夫とは連日大喜利みたいな感じになっていて、術後の傷のひきつりがあって痛いので、笑うのをこらえていた。

ラジオアプリ「radiko」でラジオをよく聞いていた。
平日の昼間はTBSラジオ「たまむすび」をほぼ毎日聞いていたと思う。ばかばかしくてにやにやしながら聞いていた。
幼い頃、実家の母の仕事場で流れていた「大沢悠里のゆうゆうワイド」で、大沢悠里が必ず病気療養中の人にも呼びかけていた。それは何十年も経った私の入院中も変わらなくて、自分がこんなに早く患者の立場でこの呼びかけを聞くことになるとは、と感慨深かった。

Twitterやfacebokは基本的に使わなかった。SNS上では病気のことも入院のことも明かしていなかったし、人とやりとりして疲れたくなかったのもある。たまにのぞいていたくらい。

ネットにつながっていると、なんでも調べられる。
その恩恵はとても大きいけれど、ネガティブな情報に触れてしまったときに、延々それを調べてしまうという面もある。アマ棋士の訃報に触れたときがそれで、寝つけなかった。

・本
口から食べられない期間が続いたにも関わらず、雑誌『暮しの手帖』の料理のページを何度も眺めていた。秋の野菜を使った料理の写真が並び、とても豊かな気分になった。食べられなくても料理のページって楽しいんだなと思いながら眺めていたのを覚えているけれど、楽しいと思えたのは、いずれ食べられるとわかっているからだったのかもしれない。

体力が回復しないうちは、こみいった文章を読む気にならず、雑誌か漫画しか読めなかった。
だんだん元気になってきて、小説やエッセイを楽しめるようになってきた。
向田邦子の随筆がすばらしかった。なにも読みたいものがなくなったら読もうと思い、保険のようにしてもっていったのだけれど、感嘆しながら読んだ。
ずいぶん前に買ったままになっていた『STORNER』は静かで悲しくて美しい物語だった。

・テレビカード
入院前と同じように朝ドラとEテレ「0655」は欠かさず見ていた。それ以外は見る気がしなかった。見る気力と体力がなかった。
洗濯をするのにも使うので、テレビカードは必要。残った分は専用の精算機で返金される。

・小銭、小額の現金
栄養パック以外のものをチューブから入れてよくなって以降は、自分で野菜ジュースや牛乳を買いにいった。小銭程度の小額の現金があれば十分。入院中は現金を使う機会がとても少なかった。
コンビニは目の保養になった。買えなくても楽しい。

・ノート、裏紙、筆記用具
入院中は、体を安静にして回復するのが一番の目的なので、基本的にはベッドにいる。なので、その日のできごととか、考えたこととか、書き留めるものがあってよかった。気がまぎれる。
電子機器の画面を見るのはけっこう疲れるので、手書きの方が楽だった。

筆談には裏紙を使った。どんどん書いていくので、すぐに真っ黒になる。夫から「筆談でもよくしゃべるんだな」と言われた。

・カーディガン
秋の終わりという季節柄、コンビニに買い物に行くとか、ちょっと外の空気に触れるときに便利だった。

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